ソニーモバイルの新型スマートフォン「Xperia Z1」を語る上で外せないのがカメラ機能だ。ソニーの高性能デジタルカメラに搭載している「Gレンズ」をスマートフォンで初めて採用し、ハードウェア性能が大きく向上した。F値は2.0と明るく、広角27ミリ相当(35ミリ換算)、そしてレンズは薄型非球面となり、センサーサイズはXperia Zなど従来機の1/3.0型から、サイバーショット「DSC-HX50V」と同等の1/2.3型に大きくなった。画素数が2070万にまでアップしたのも特筆すべき点だ。
ソニーが掲げるカメラの使い方は「作品」「思い出」「ライフログ」の3種類であり、「作品」は一眼レフなどの本格カメラ、「思い出」はデジタルカメラ、そして「ライフログ」はスマートフォンのカメラが担ってきた。その中でXperia Z1が目指すのは、思い出とライフログの両方。「いつでも手軽に“思い出”画質を記録する」というのが、Z1のカメラのテーマだ。このテーマを実現するのが、明るくて広角の「Gレンズ」、大型の裏面照射型CMOSセンサー「Exmor RS for mobile」、手ブレ補正やノイズ低減処理を施す信号処理エンジン「BIONZ for mobile」という3つの技術だ。
では、具体的にXperia Z1のカメラ機能はどこが向上したのか。それは大きく分けて「全画素超解像3倍ズーム」「ブレない静止画と動画」「高感度な写真」の3点。「IFA 2013」でのドイツ滞在中に撮影した作例も交えて、1つずつ見ていこう。
Xperia Z1のメインカメラは2070万という高い画素数を実現しているが、「スマートフォンにそこまでの画素数が必要なのか?」という意見もあるだろう。しかしXperia Z1では、20MPの写真を8MPに凝縮することで、よりクオリティの高い一枚を撮影できる。それを体現した機能の1つが、劣化を抑えてズームできる「全画素超解像3倍ズーム」だ。Xperia Z1は光学ズームには対応しないが、解像感を保ったまま3倍のズーム(焦点距離27〜81ミリ相当)ができる。その仕組みは、20MPサイズから1.5倍ズームで8MP分を切り出した後に、2倍の全画素超解像ズームで画素を復元するというもの。切り出しはExmor RS for mobileが、復元はBIONZ for mobileが処理している。
全画素超解像3倍ズームはプレミアムおまかせオートとマニュアルモードで利用できる。プレミアムおまかせオートで同ズームで撮影した写真の解像度は8MP(16:9)に固定される。ちなみに、ズームをしなくても撮影サイズは8MP(16:9)に固定されるが、その理由は後述する。
マニュアルモードでは、撮影サイズを20MP、8MP(4:3)、8MP(16:9)、3MP、2MPに変更でき、いずれのサイズでも全画素超解像3倍ズームは利用可能。3MPまたは2MPで同ズームを利用した場合、20MPから3MPまたは2MP分を切り出して処理をする形になるので、8MPで切り出しものよりも遠くを表示できる。もちろん解像度は下がるが、解像感は8MPと変わらないので、より遠くのものを撮りたいときは、3MPや2MPがいいかもしれない。


プレミアムおまかせオート設定時に3倍ズームで撮ったもの(写真=左)。マニュアル+3MPサイズにすると、20MPから3MP分を切り取る形になるので、超解像ズームが可能な範囲が狭くなる。この写真のズーム倍率は4.59倍(写真=中)。マニュアル+20MPだと2倍ほどしか超解像ズームができない(写真=右)ベルリンのシンボルでもあるブランデンブルク門に立っている像を、Xperia Z1とZの2機種でズームして撮影。時刻は20時過ぎで、まだ少し明るかったが、撮影環境はなかなか厳しめ。撮影サイズはZ1は8MP(16:9)、Zが9MP(16:9)(Zには8MPサイズがない)。ズーム倍率は2機種でやや異なるが、見比べると、Zはノイズ(特に空の部分)が目立つのに対し、Z1はノイズがよく抑えられている。ISO感度はZが640、Z1が800なので、Z1のノイズ低減処理がうまく働いていることが分かる。さすがに像の部分を拡大すると粗さが目立つが、この撮影環境でここまで鮮明にズームできるのは、なかなかのクオリティだろう。

左がXperia Z1、右がXperia Zでズームしてブランデングルク門の像を撮ったもの。ズーム倍率はZ1が3.03、Zが2.82。Zの写真の方が大きくズームしたように見えるが、これはZ1の方が画角が広いため。空、象、門、背景のビルはZ1の方が鮮明に描写している
左が3.03倍、右が2.83倍ズームして撮影したもの。いずれもプレミアムおまかせオートに設定した。左の写真では、さすがに窓際に見える植物や花はつぶれてしまっているが、建物自体はきれいに写せている。右の写真では、文字がくっきりと見える続いてブレない静止画と動画について。子どもやペットなど動きの多い被写体を撮ると、どうしてもブレやすくなるが、Xperia Z1では被写体とカメラの動きを検知することで、ブレを抑えられる。その仕組みは、プレミアムおまかせオートで被写体とカメラの動きを検出→自動でシャッタースピードを上げることでブレの少ない写真を撮影→その際にISO感度が上がっても、ソニー独自のノイズ除去技術でノイスを低減する、というもの。
動画撮影時には、フルHD+α(補正マージン)を持つデータを出力→カメラの位置から切り出し位置とCMOS特有のひずみを検出し、+αの部分を切り出す→フレームごとに補正処理をする。これにより、中心が安定していて画面周辺の歪みの少ない、滑らかな動画を記録できる。
最後が高感度な写真。従来の裏面照射型CMOSセンサーでも暗い場所での撮影が得意とされているが、Xperia Z1では、20MPのCMOSセンサーとBIONZ for mobileを組み合わせることで、さらにノイズを抑えることができる。
Xperia Z1のカメラは、暗い場所ではISO感度が最大で6400に上がる。これだけ上がるとノイズが発生しやすくなるが、ノイズ低減技術によって明るくきれいな写真を撮れる。それはなぜか? まず、撮影する際に「20MP/ISO6400」の画像を、画素加算技術によって「2MP/ISO2000相当」にまでサイズとISO感度を落とす。その後はBIONZ for mobileによって、最大6枚の写真を重ね合わせて処理し、ここでノイズ量がISO1000相当にまで減る。最後に全画素超解像ズームによって、解像感を保ちながら8MPに復元される。
この“8MPの高感度撮影”はプレミアムおまかせオート利用時にのみ有効になるので、ズームをしなくても、プレミアムおまかせオートの撮影サイズは8MPに固定される。ここでも2070万画素が生きてくるのだ。一方、撮影時にこれだけの処理をすると、けっこうな時間がかかりそうだが、実際にシャッターを切ると、裏で処理をしながら、すぐさま次の撮影画面に移るので、ストレスは感じない。Qualcommの最新プロセッサー「Snapdragon 800」がその性能を発揮しているのだろう。

IFAのソニーブースでは、暗い箱の中にある写真を、箱の穴から撮影するデモを実施。後処理でノイズを低減するので、撮影中の画面は暗いままだが(写真=左)、撮影後の写真をみると、このとおり明るく撮れている(写真=右)
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