ジョジョ、透明、IGZO、ひと目惚れ――差別化が難しい中で“スゴ味”を感じたスマホたち:ITmediaスタッフが選ぶ、2012年の“注目ケータイ&トピック”(編集部田中編)(1/2 ページ)

» 2012年12月29日 11時00分 公開
[田中聡,ITmedia]

 2012年はスマートフォン(以下、スマホ)の普及が加速した1年だった。各社が発表する新機種の大半はスマホとなり、販売店でもスマホの展示が売場の多くを占めるようになった。Androidスマホが登場し始めた2009年〜2011年は、「あのメーカーがスマホを出した」「スマホでおサイフケータイを使えるようになった」「全部入りのスマホがついに登場した」など、スマホの新機種が発表されるたびに注目を集めてきた。ソニーモバイル(当時はソニー・エリクソン)の「Xperia SO-01B」、シャープの「IS01」「IS03」、NECカシオの「MEDIAS N-04C」、富士通の初代ARROWS(XとZ)などが良い例だろう。

 しかし2012年はおサイフ、ワンセグ、防水など日本で支持される機能を多くのモデルが備え、ディスプレイやCPUなどのスペックも横一線になりつつある。各メーカーが2号機、3号機を開発するにつれてスマホの性能もこなれてきた一方で、機種ごとの新鮮味が薄れつつあるようにも感じる。フルタッチ型のスマホはフィーチャーフォンに比べてギミックがシンプルなので、デザインや形状も似たり寄ったりになりがちだ。仕事柄、多くのスマホに触れる筆者でさえ、正面から見るとどれがどの機種か分からないことはよくある。これだけスマホが増えた今、キャリアやメーカーにとっても、それぞれの機種でどのように差別化を図っていくかは悩ましい問題だろう。そんな中で、2012年に筆者が特に注目したモデルをピックアップした。

開発者の愛情が尋常じゃなかった「L-06D JOJO」

 何はともあれ挙げたいのが“ジョジョスマホ”こと「L-06D JOJO」(LGエレクトロニクス製)だ。2012年はジョジョスマホなしで語ることはできないィィィィィ! と思えるほど印象に残った1台だった。なぜ「ニューススマートフォン・オブ・ザ・イヤー2012」のノミネート機に選ばれなかったのか不思議でならない。ジョジョファンの筆者が単純に「ドコモがジョジョスマホを出すとはよぉ〜っ『まさか』って感じだがグッときたぜ!!」と感動したのももちろんあるが、開発陣の熱意と愛情をここまで感じられた携帯電話を今まで見たことがなかったからだ。それもそのはず、ジョジョスマホは生粋のジョジョラーや、ジョジョ好きが高じて他部署からプロジェクトに参加した人たちが開発に携わっていたのだ。

photophoto 筆者にとって2012年の主役は「L-06D JOJO」だ

 まず、コンテンツへのこだわりが尋常ではない。背面に描き下ろされた徐倫やオリジナルの壁紙はもちろん、アプリのアイコン変更、ウィジェット、名台詞の予測変換、ジョジョ絵文字、JOJOカメラ、F-MEGA、JOJOプレイヤー、細かいところではピクトアイコン、通知バーの背景、文字入力の決定キー……など、隅から隅までジョジョの世界で埋め尽くされている。コラボスマホというと、デザインが特徴的なイメージがあるが、ジョジョスマホはあえてデザインはシンプルにまとめ、コンテンツで勝負した。しかも、ちょっと使っただけでは発見できないような細かい設定もある。例えば、ジョジョスマホではアプリのアイコンもジョジョの好きな画像に変更でき、アイコン画像はジョジョのきせかえテーマごとに用意されているが、きせかえテーマを替えなくても、異なるテーマのアイコンを選べる。また、これは最近まで知らなかったのだが、ロック解除画面のテーマも変更できる。さらに……とこれ以上書き出すとキリがないのでやめておくが、とにかくほかのスマホにはない「スゴ味」がある! のだ。

photophotophotophoto ジョジョスマホの小技その1。きせかえテーマを変えず、アイコンのテーマだけを変えることもできる。重ちーのスタンド「ハーヴェスト」のイラストが、テーマによって異なるなど芸が細かい
photophotophotophoto ジョジョスマホの小技その2。ロック解除画面の壁紙も変更できる。設定はホーム画面のメニュー→「ロック画面設定」→「壁紙」→「壁紙」から。計6種類から選べる。右端の額縁にすると、額縁の中にホーム画面の壁紙が表示されて面白い

 個人的に一番気に入った機能が、スタンドのイラストや擬音などを写真に合成できる「ジョジョカメラ」。ジョジョスマホ自体を飲み会などで周りに見せると驚かれるが、このジョジョカメラを披露するとさらに面白がられる。ジョジョスマホはちょっとした盛り上げツールとしても活躍した。

photophotophoto 擬音、セリフ、スタンドなどを合成して遊べる「ジョジョカメラ」。ここであの擬音? といった意外な組み合わせがハマることもある

 開発者たちの自己満足に終わらず、荒木飛呂彦先生のエッセンスがしっかり注入されているのもファンには嬉しいポイントだ。荒木先生の意向により、ボディカラーが急きょブラックからホワイトに変更されたり、背面の徐倫イラストの向きは当初真っ直ぐだったが斜めに直したりと、開発者の想定を超えた部分もあったようだが、出来上がった製品を見ると「『納得』は全てに優先するぜッ!!」となるのだ。

 1万5000台限定という数も物議を醸した。ジョジョスマホの予約開始前日や深夜から並ぶ人たちが続出し、即日完売状態となるなど、携帯業界に瞬間風速的なブームを巻き起こした(と勝手に思っている)。予約開始日の8月16日は、ジョジョスマホを求めて多くの人たちが街中をさまよった。かく言う筆者もその1人で、某ドコモショップで8人中8人の枠に滑り込めたときの安堵感は今でも忘れられない。5万台限定のワンピーススマホがやや静かな船出になったことを考えると、ジョジョスマホの台数は少なすぎたのではないかと思うが、逆に考えるんだ……少ないからこそ価値があるんだ……とも思える。

 惜しむらくは、機能・サービスが全部入りでありながら、スマホとしての性能がやや貧弱貧弱ゥ!だったこと。まず、画面サイズが大きいこともあってか、バッテリーの持ちが悪く、バッテリー残量に応じて絵柄が変わる「レッド・ホット・チリ・ペッパー」のウィジェットでは、チリ・ペッパーが瀕死になっていることが多かった。チップセットが当時最新だった「Snapdragon S4 MSM8960」ではなく、1世代前の「APQ8060」だったのも惜しい。ジョジョカメラで写真を加工する際に「世界(ザ・ワールド)」の攻撃に遭ったかのごとく動きが数秒止まる、ホーム画面に戻ったときの動作がややもたつくなど、「MSM8960だったら、あるいはOptimus Gがベース機だったらどうだったかなぁ」と思うことはしばしばあった。

 ともあれ、コラボスマホとしての完成度は非常に高く満足している。ジョジョスマホの取材も当初の時間をオーバーするなど(スイませェん…)話が尽きることはなく、インタビュー記事は「まだやるのか」と周りに言われつつも全5部の長編になった(できれば8部までやりたかったのだが……)。開発に否定的だった役員を説得して企画にこぎ着けた開発陣、限られたスケジュールで満足いくモデルに仕上げたLGエレクトロニクスには敬意を表したい。

 ビジネス的な視点で見ると、ジョジョはスマートフォンとコラボする素材として最適だったのではないかと思う。単行本の部数は「ONE PIECE」などの国民的作品に比べると少ないが、ジョジョは関連グッズを買うためなら出費を惜しまないディープなファンが多い。「ジョジョ展」のチケットが早々に完売したことからもうかがえる。ジョジョをリアルタイムで読んできた30代にスマホユーザーが多いことも追い風になったはずだ。ジョジョスマホは、コラボモデルの成功事例と言って間違いないだろうし、開発に否定的だったドコモの上層部が今どう思っているのかは気になる。

photo ジョジョスマホの小技その3。ホーム画面上でピンチアウトすると、アプリアイコンやウィジェットが消え、壁紙のみになる。筆者はよく画面を常時点灯にしてフォトフレームのように活用している

 そして、L-06D JOJOがあれだけヒットしたのだから、ヱヴァスマホのように第2弾も……と期待せずにはいられない。個人的に、次があるなら「ジョジョタブレット」の登場を望みたい。5インチ、4:3の画面比率であるOptimus VuをL-06D JOJOのベース機にしたのは正解だと思っている。画面が大きいので壁紙を堪能できるし、コミックも読みやすい。これがさらに大画面のタブレットになったら……と考えただけで「ハッピーうれピーよろピくねー」となるわけだ。筆者の場合、ジョジョスマホをデスクに置いて、画面を常時点灯させてフォトフレームのように壁紙を表示させていたので、次期モデルのディスプレイにはぜひIGZOを……だったら開発メーカーは!?……と、妄想が留まりそうにないのでこのへんにしておきます。

 ジョジョのスタンド(各人が持つ守護霊のようなもの。それぞれで能力が異なる)のパワーは、スタンド使いの精神力に左右されると言われているが、コラボモデルも、開発者の精神力=愛情が具現化されるのだと感じた。安易なコラボモデルは失敗する可能性が高いが、ジョジョスマホのような愛情の詰まった、そしてヒットする土壌の整ったコラボモデルは今後も歓迎したい。

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