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» 2014年02月07日 23時21分 UPDATE

和食を世界に発信:ドコモとABCクッキングスタジオが目指す「新しい料理の学び方」とは?――丸の内スタジオで共同発表会

ドコモとABCクッキングスタジオは2月7日、ABCの丸の内スタジオで共同発表会を行った。両社は2014年1月に資本提携を結んでおり、それを踏まえて今後の事業展開について改めて発表した。

[村上万純,ITmedia]

 NTTドコモとABCクッキングスタジオ(以下、ABC)は2月7日、リニューアルしたABCの丸の内スタジオで共同記者会見を行った。記者向け説明会ではドコモの常務執行役員スマートライフ推進本部長 阿佐美弘恭氏、同社執行役員ライフサポートビジネス推進部長兼ABC Cooking Studio代表取締役副社長 中山俊樹氏、ABC Cooking Studio代表取締役社長 櫻井稚子氏が登壇し、今後の事業展開について説明した。また、スタジオではタブレット端末を使って香港のスタジオに通う生徒たちと料理作りを介して交流するイベントも開催された。

photo 左から、NTTドコモ執行役員ライフサポートビジネス推進部長兼ABC Cooking Studio代表取締役副社長 中山俊樹氏、ABC Cooking Studio代表取締役社長 櫻井 稚子氏、ドコモ常務執行役員スマートライフ推進本部長 阿佐美弘恭氏

「健康+学び」を通して、スマートライフのパートナーへ

photo ドコモ代表取締役社長加藤薫氏のビデオメッセージ。「和食のポイントはダシかな」と一言

 ドコモの阿佐美氏は今回の資本提携の狙いについて、「ドコモは、ユーザーのスマートライフのパートナーとなることを目指しており、ABCとは日々の生活の基本となる健康や学びといった分野で協力できると思っている」と話す。

 ビデオメッセージで登場したドコモの加藤薫社長は、「ユネスコの世界無形文化遺産に登録された和食の素晴らしさや料理を作る楽しさを世界に、世界の素晴らしい食文化を国内に広げたい。そのためにリアルとモバイルICT(情報通信技術)を融合させ、健康+学びの連携を進めていく」と意気込みを語った。


photo ユネスコの世界無形文化遺産に登録された和食文化を世界に配信する

 ABCの櫻井氏によると、現在ABCのスタジオに通うアクティブな会員数は海外含め約28万人で、仕事や育児、地理的な問題などでスタジオに通えない人も含めた会員数は90万人を超えるという。「ABCはこれまでスタジオでのリアルなコミュニケーションの場を大切にしていたが、今の時代はリアルな場だけではなかなかつながりが持てなくなってきた。人とのつながりをさらに加速させ、今以上の価値を生むために、リアルとモバイル、オンラインとオフラインをつなげることが重要だと思っている」と櫻井氏は説明する。ABCの強みであるリアルなコミュニケーションと、ドコモの強みであるモバイル通信を融合させることで、新たなビジネス領域を切り開く狙いがあるという。

 その試みの1つとしてABCは、スマートフォンやタブレット、PCを介して料理作りを動画で学べる「ABC Cooking Channel」を2月から提供している。2月7日時点で約600本の動画を配信しており、イベントやセミナーをライブ配信するほか、海外の有名シェフのレッスンを生中継で楽しむこともできる。

photophoto ドコモのクラウドサービスでABCクッキングスタジオのレッスンを自宅でも利用できるようになる(写真=左)。約600本の動画アーカイブのほか、毎月のライブレッスン配信もある「ABC Cooking Channel」(写真=右)

 ABCのスタジオは、国内で128店舗、海外ではアジアを中心に6店舗を展開している。ドコモの中山氏は、「地方のスタジオは若い女性に人気があり、ショッピングモールなどでは集客効果があるので出店要請が相次いでいる。しかし、質の高い講師やスタッフが必要になるし、出店にはコストもかかる。料理教室をクラウドで展開できれば、コストダウンを図ることができる」と説明する。

 また、海外店舗での人材確保や育成は日本以上に難しいという。「現在、北京、上海、香港などで店舗展開をしており、非常に人気も高いが、講師の確保が難しい。だが、今後もアジア展開や世界進出を進めていく」と語った。

photophoto 海外展開も積極的に行う(写真=左)。「グローバルレッスン」で、日本料理を海外に届ける(写真=右)

 ABCが展開するECサイト「ABC Cooking MARKET」との連携も検討中とのことで、「調理器具などのグッズはABCにとって大きな収益になっているので、協力できればと思う」と中山氏は話す。ドコモが子会社化した、生鮮食品販売会社のらでぃっしゅぼーやとの連携については「なかなか買い物に行けない人や料理ができない人などに向けて、レッスンやコミュニケーションの場をパッケージ化して提供していきたい」(櫻井氏)ということだ。

「グローバルレッスン」で香港スタジオと映像中継 日本の料理を海外に発信

 丸の内スタジオでは、海外スタジオと日本のスタジオを映像でつなぐ「グローバルレッスン」のデモンストレーションも行われた。日本のスタジオと香港のスタジオの様子をタブレットを使って相互に中継し、「太巻」の作り方を日本の講師が教えるという内容。作り方を現地のスタッフが通訳し、両スタジオにいる生徒たちがお互いの映像を見ながらレッスンを受けた。また、生徒同士が質問しあうなど、交流の機会も設けられた。

photophoto 日本の講師が映像を通して香港のスタジオに「太巻」の作り方を教えた(写真=左)。丸の内スタジオでも受講生たちが太巻作りに挑戦。タブレットを通して講師の手元を確認できる(写真=右)

 説明員によると、「食材は現地で調達しており、デモの通訳は料理の訓練を受けている者ではない」という。海外展開における人材確保の難しさがこうした点にも現れたようだ。またグローバルレッスンは日本の味をそのまま伝承するというよりは、日本の和食文化を現地のやり方で再現する試みのようで、交流が主な目的と言えそうだ。

タブレット活用で料理の学びを豊かに

 また、ABCはタブレットを通じて調理手順を解説するコンテンツも提供予定で、スタジオ内にデモ機が設置された。ぬれた手でも利用できるよう画面に直接触れずにページ送りができたり、カメラを使って調理の様子を撮影したりもできるという。説明員によると、「まだ詳細は決まっていないが、国内外に向けてこのサービスを無料で提供していきたいと思っている。今はスタジオで使用するものとして展示しているが、家庭向けに使えるようにもしていきたい」と話す。

photo タブレットを活用して料理を学べるようにする

 生徒同士が交流する機会の創出については「スタジオの場だけでなく、今後はオンラインを通じて生徒同士がつながる機会を増やしていきたいと思っている。具体的な内容は決まっていないが、それは国内外関係なく展開していきたい」という。

エンターテインメントとしての価値を高めていく

 発表会後の囲み取材に応じた櫻井氏は、「学びだけでなく、『その場にいることが楽しい』と思えるようなエンターテインメントとしての価値を高めていきたい。現在、料理作りのノウハウを海外に提供するようなライバル企業はないが、生活に関わる全てのコンテンツがライバルだと思っている。料理を学ぶという文化は日本の強みでもある。今のサービスを安売りするつもりはなく、質の高いものを今後も提供していく」と話す。

 中山氏は、今回の資本提携の狙いについて改めて説明した。「(ABCとは)1年前から業務提携という形は取っていたが、継続的に連携を行う上ですり合わせが必要なことも多く、業務提携の限界を感じて資本提携を結ぶことを選んだ。資本提携の話は両社から出たもので、いろんな生活産業と連携していくドコモの試みの1つと捉えている。まずはABCの店舗数を増やし、いかに成長させるかを考えていく。現在、今後の事業戦略を急ピッチで検討している最中だ」(中山氏)という。


 目標売上高や会員数、拡大予定の店舗数などの具体的な数字は明らかにされなかったが、今後も積極的に連携を強化していくことを発表したドコモとABC。海外店舗での人材育成や実店舗展開のコストなど課題も多いが、ユーザーに新しい価値・学び方を提供する試みを今後も継続していくという。

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