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» 2014年06月20日 19時41分 UPDATE

「情報革命の分野で世界を変える」――34年目のソフトバンクで孫氏が吹く「新しい大ぼら」

6月20日に開催された株主総会で、ソフトバンクグループの孫正義代表は、これからの目標は「世界を変える」ことであると話した。文字通りの「世界」では米国に進出し、人型ロボットも発表。孫氏は、34年目を迎えるソフトバンクの野望を株主たちに熱く語った。

[田中聡,ITmedia]
photo ソフトバンクグループの孫正義代表

 「世界を変える」――ソフトバンクグループの代表 孫正義氏は、6月20日の株主総会でそう宣言した。

 孫氏は冒頭で「33」という数字を紹介する。これは自身が尊敬する坂本龍馬が亡くなったときの年齢だ。ソフトバンクも2014年で創業から33年を迎え、「坂本龍馬さんが成し遂げたことに比べると足元にも及ばない小さなものだが……」と話し、孫氏はソフトバンクの歩みを振り返った。

 10年前(2003年)の株主総会で、孫氏は「営業利益で1兆円を突破したい」と豪語したが、当時は創業以来最大の赤字を出していたこともあり、「大ぼらを吹かせていただいた」と苦笑いする。その10年後の2014年に、ソフトバンクの営業利益は1兆円を超えた。「営業利益の1兆円突破は、日本ではまだ3社しか成し遂げていない。NTTグループは118年かかり、トヨタは65年かかった。ソフトバンクは最短の期間だ」と孫氏は胸を張る。

photophoto 営業利益は1兆円を超えた

 2014年3月期の決算説明会のときと同様に、孫氏は(Sprint、ウィルコム、イー・モバイルの業績を含めた)売上高、営業利益、純利益でNTTドコモを超えたこと、スマートフォンのパケット接続率と通話接続率で1位になったことなどを、あらためてアピールした。3.11の東日本大震災で通信インフラの重要性を痛感したことも振り返り、基地局を急ピッチで増設したことも強調した。

 スマートフォンやタブレットのさらなる普及についても言及。リクルートライフスタイルが、ソフトバンクのiPadをメニューの注文取りやレジなどで使うために、2万店舗に導入した事例も紹介。「国内での携帯事業はこれ以上成長が見込めないのでは? という指摘を受けるが、私はまだ、スマートフォンやタブレットの利用は、ますます広がると考えている」と、法人需要への期待を語った。

photo リクルートライフスタイルがソフトバンクのiPadを導入して店舗の業務が改善された事例

携帯電話と電気のセット販売も視野に

photo bloomエナジーサーバーの1ユニットを手にする孫氏

 孫氏が「本業ではないけど」と言う発電事業も紹介。有害物質を(あまり)排出せずに発電ができる「クリーンエネルギー」の取り組みに触れ、米Bloom Energyの産業用燃料電池発電システム「bloomエナジーサーバー」を構成する1つのユニットを紹介。「このボックスで、日本の家2軒分の発電ができる。中はシリコンでできた板が入っていて、片方の面に都市ガスが流れ、裏側には酸素が流れる。通常は火力で発電をするが、これはガスを燃やして発電する。これはガスを燃やさず、音も臭いも煙も出さず、たいへんクリーンなエネルギーで発電する」と説明した。

 また、2016年から電力の小売が自由化されることを受け、「いずれは携帯電話のサービスと、クリーンエネルギーで起こした電気のセット販売のようなものができるといいと考えている」と話していた。

世界進出の第一歩に米国を選んだ理由

 孫氏はこれまでの活動を振り返り、「情報革命をする上で、少しはお役に立てたのではないかと思う」と振り返る。そしてソフトバンクの34年目からは「情報革命の分野で世界を変える」ことを目標とする。その第一歩として米国に参入し、Sprintを子会社化したことは周知の通り。最初に米国を選んだ理由について「アメリカが経済的にもさまざまな面でも最も注目に値する国だから。少なくとも2050年にはGDPは日本の5倍くらいに伸びるだろうと言われている。人口も伸び続けている。どうせやるのであれば、人口もGDPも伸びる世界1位の米国に挑戦してみたい」と語った。

 一方で米国の通信事業に目を向けると、LTEの通信速度は17カ国中16位と遅く、携帯電話の月額料金は日本よりも高い。孫氏はこうした現状を打破すべく「ノウハウと経験、情熱、技術を米国のスプリントに移植している最中」と話す。「これは1年や2年でできることではない。5〜10年かかるような長いプロセスの仕事だと思っている」と根気強く取り組む姿勢を示した。「最終的には日本とアメリカで争っているという状況にしたい。そういう覚悟で参入すると、他社にもいい刺激を与えられると思っている」

photophoto 米国のLTE速度は遅く、通信料金も日本より高い

Pepperは「新しい大ぼら」を具現化したもの

photo 人型ロボット「Pepper」。1億倍速の早口言葉も披露した(一瞬で言い終わり、何を言っているのかは分からなかったが)

 孫氏が「新しい大ぼら」と話すのが「人とコンピューターの関わり方を変える」こと。それを具現化したのが、先日発表した、人間の感情が分かる人型ロボットの「Pepper」。Pepperは孫氏の隣で軽快な会話を繰り広げ、新たな特技(?)である「早口言葉」も披露した。孫氏は「Pepperは世界で初めて感情を持ったロボット。感情を表す言葉のすべては理解できないが、喜怒哀楽は理解できる。人間が作り出したロボットとしては、初めての転換期を迎える」と強調した。

 このロボット事業も、孫氏は「世界を変える」ことにつながると考える。「今言うと大ぼらだが、少なくともビジョン、夢、覚悟がある。今日は私の覚悟のほどを直接、皆様にお伝えしたいと思った。どういう形であれ、道具であれ、人々の悲しみを減らし、喜びを少しでも大きくしたい。情報革命を通じて人の幸せを心から願っている」と話して締めくくった。

photo

質疑応答では株主から「世界を変える」提案も?

photo 質問に答える孫氏

 株主との質疑応答では、質問……というよりも要望や提案が多く挙がった。「外国人観光客が利用できる無料のWi-Fiスポットが少ない。2週間ほど無料で使えるサービスをお願いしたい」との要望には「やりましょう」と即答したが、「株主優待サービスで、iPadとPepperを優先的に購入したい」との要望には「検討しましょう」と苦笑い。「海外から送金できるソフトバンクマネーのようなものを作ってほしい」との要望には、「もともと金融と情報革命の相性はいいと思っていて、強い興味を持っている。グループ会社にも種があるので、近い将来に何らかの形で実現したい」と予告した。

 「電子書籍に関する新規事業のプランがあります。これで世界を変える自信があります。5年以内に世界ナンバー1の電子書籍会社を作ります。ぜひ、5分でよろしいので、お時間をよろしくお願いします!」と訴える人がいたのも、ソフトバンクの株主総会ならではの光景かもしれない。

 一方、「ソフトバンクのCMは、最近鼻について謙虚さに欠ける。CMを見るのがいやで、チャンネルを変えてしまう。もう少しお考えになられたら」と女性から厳しい(?)意見も。孫氏は「あまり『一番一番』と言ってはいけない。今、反省しました」と真摯(しんし)に受け止めていた。

 「経営者を辞めた後の、人生の最終目標は?」との質問には、「60代で現役は退きたい。その後も健康なら、ソフトバンクアカデミアの校長として、思想を語り続けられればいい。あとは、もともと画家になりたかったので、世界中を旅して絵を描きたい。でも、今はソフトバンクのことで頭がいっぱいなので、引退した後のことまでは考えが及んでいない」と話していた。

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