“業界最安”を仕掛ける「DMM mobile」――強みは1000万会員とコンテンツ連携MVNOに聞く(2/2 ページ)

» 2015年02月06日 12時58分 公開
[石野純也ITmedia]
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1Gバイトのプランが一番人気だが、目指すのは「1台目」

―― 全12種類と多彩なプランがある中で、ユーザーの選択傾向を教えてください。

野村氏 今、一番多いのは1Gバイトのプランです。本当は、5Gバイトや7Gバイトのプランがボリュームゾーンになると思っていましたが、まだそこまでは行っていないですね。今だと、キャリアさん(MNO)には2Gバイト、5Gバイト、8Gバイトなどのプランがあって、真ん中を選ばれる方が多いと聞いています。5Gバイトぐらいあれば十分だろうと用意していたのですが、1Gバイトの最安価格が効いているのか、現状では1Gバイトが多いですね。

 また、みんな(MVNO)が1Gバイトを増量して2Gバイトにしてしまったため、1Gバイトの安いプランがないというのもあります。そこがスポットとしてポコッと空いています。ですから、今はまだプラスαとして持たれているのかなと思います。

―― ということは、目指しているのは1回線目ということですね。

野村氏 もちろんです。ターゲットは1台目です。

―― 端末を全面に打ち出しているのは、そういう理由があったんですね。

野村氏 あれは僕のこだりでもあります。参入するとき、各社を調べたのですが、端末が1台しかなかったり、カラーを選べなかったりというところも多い。そんな状況でケータイを持つかという疑問もあり、種類を選べるようにしたかったんです。カラーのラインアップも多くしたいというのがあり、今回のラインアップになりました。

 例えば、「ZenFone 5」は4色展開ですし、「Ascend Mate 7」も2色あります。それに、マニア受けしそうな「Nexus 7」もそろえています。

photo DMM mobileでは現在、6機種を扱っている

―― 「Nexus 7(2013年モデル)」は在庫がないところが多いので、そろえてきたのはビックリしました。

野村氏 市場流通がほぼないので、かき集めてきた最後の残りです(笑)。端末も、今はSIMとセットでしか買えませんが、将来的には単体でも販売していきたいですね。

 また、端末については、交換サービス(トラブル時にリフレッシュ品や同等品と交換できる端末交換オプション)をやっているのも、こだわりです。他社がやっていないサービスなので、保険会社と話しながら、とりあえず契約して、リリース後に実際のスキームを作りました。

 「格安スマホ」と呼ばれることもありますが、通信費は安くても、安いスマホを使いたくないという方は多いと思いますし、実際の端末もミッドレンジ以上のものが増えています。「Ascend Mate 7」も5万円ですからね。5万円もするなら、やはり保険はあった方がいいと思います。

流通網を強化してMNPのタイムラグをなくす

―― DMM.comというと、流通にも強いイメージがありますが、端末もその流通網を使っているのでしょうか。

野村氏 今は、そこは別になっています。SIMの書き込みを行う機械が、弊社の物流倉庫には置けないからです。そこは、今後変えていきたいところです。自社物流を使い、その日に注文があったものはその日に発送できるぐらいまで、スピードを上げていきたいですね。

 今は無店舗型でやっているため、SIMの発行までにタイムラグがあります。その問題を解決するのは店舗型しかありませんが、物流のスピードを極限まで上げれば、だいぶ改善はされます。即日配達までいけば、(MNPしている間にSIMカードが)使えない時間は6時間ぐらいといったことになります。それは、自社物流を使わないとできません。

―― ハードウェアという点では、「DMM.make」をやられていることもあり、そことの連携も図れそうですね。

野村氏 DMM.makeで作れる機械やデバイスに、SIMが入ればいいと思います。実際、そこで使えるようなものも、今考えているところです。常時細い通信をずっと流すというものになりそうですが、どういう容量にするのか、どういう価格帯にするのかを今確認しているところです。

 そういったものを、DMM.makeというサービスを使って、お試しになることができます。大きいメーカーさんが作るのを待つのではなく、実際に自分で作ることも可能なのです。

24時間365日のサポート体制を目指す

photo

―― 今後どのような端末を扱っていきたいかなど、何かお考えはありますか。また、通信サービス部分についても、今後の方向性を教えてください。

野村氏 技適の問題もあるので何ともいえませんが、海外で売っているミッドレンジの端末や、キャリアさん(MNO)が扱っていない端末を入れていきたいと思っています。

 サービスについては、使い放題は考えていませんが、もっと大容量のものは追加したいですね。真ん中が抜けて、下が残るというイメージでしょうか。状況を見ながら、フレキシブルにやっていきたいと思います。あとは、先ほど申し上げた、サービスとのひも付けですね。そこは強化していきたいと思います。

 あとはサポートの強化ですね。

―― というと?

野村氏 クレームではなく、サービスへの問い合わせが非常に多いからです。そもそもMVNOが何かを分からない方が多く、「格安SIMは今までのケータイのように使えるのか」から、「ブログができるのか」「アプリが使えるのか」といった質問まで来ます。そのサポート体制は、拡充させたいと思っています。しかも早急にです。

―― なるほど。まだMVNOという概念が、一般にきちんと認知されていないということですね。

野村氏 そもそも、SIMカードとケータイが分離するというイメージも持たれていないのだと思います。そういったところを丁寧にケアしながら、ハードルを下げて1台目需要を増やしていきたいですね。最終的には、24時間365日のサポート体制にしたいと考えています。

 DMM.com本体のアダルトでも、安心を売るためにそれをやっています。より安心して使ってもらえるよう、いつ連絡してもつながるようにしたい。そこには我々のノウハウがあります。業種は違いますが、不安を持つユーザーが非常に多いのは同じですからね。そこをいかに払しょくできるのかが、ポイントになると思います。

取材を終えて:回線+付加価値がカギを握る

 MVNOの市場は広がっているが、まだ欧米のような規模には及んでいない。全ユーザーの10%以上まで広がると仮定すれば、まだアーリーアダプターに受け入れられている段階だ。MVNOの事業者も、ISPが中心となっている。

 一方で、基地局などの設備がないだけで、ISPもMNOと同じ通信事業者だ。MNOが持っていないサービスもあるが、回線に付加価値をつけるという点では少々弱く、だからこそ今のMVNOは価格競争に陥ってしまっている。MVNOが次のステージに移るには、回線と何かを組み合わせた付加価値が必要なのだ。

 こうした状況の中、DMM.comのような企業がMVNOに参入してきたのは、ある意味必然的だったといえるのかもしれない。とはいえ、サービスはまだ始まったばかり。野村氏の述べていたような、今後の展開には期待したい。

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