インタビュー
» 2015年02月06日 12時58分 UPDATE

MVNOに聞く:“業界最安”を仕掛ける「DMM mobile」――強みは1000万会員とコンテンツ連携 (1/2)

2014年12月からMVNO事業に参入して、ドコモ回線を用いた通信サービスを提供しているDMM.com。このタイミングで参入した理由とは? そして同社の強みを生かす戦略とは? 取締役の野村太郎氏に聞いた。

[石野純也,ITmedia]

 ITmediaの主要読者層には周知の事実だと思うが、DMM.comは映像配信サービスを軸に成長を続けている会社だ。このDMM.comが、ドコモから回線を借りたMVNO事業に参入。「DMM mobile」を新たに立ち上げた。特徴はその価格。1Gバイトで660円と、新規参入ながら150Mbpsの通信サービスでは業界最安値を打ち出した。利用金額の10%を「DMMギフト券」としてキャッシュバックするなど、コンテンツとの連動も行っている。

 新規参入ながら、当初からサービスは充実している。速度制限時でも快適に通信できる「バースト機能」や、余ったデータの翌月繰り越しといったサービスも実現。高速通信のオン・オフも自由に切り替えられる。MVNOに詳しい人は、これらの機能やサービスをどこかで見たことがあるかもしれない。実は、バースト機能や繰り越しは、IIJ(インターネットイニシアティブ)の協力によって実現したもの。MVNOとMNOの仲立ちになる、事業を支援するMVNEとしてIIJが参画しており、品質にも期待が持てる。

 とはいえ、2014年12月の参入は、MVNOとしてはやはり後発だ。このタイミングで参入できたのは、DMM.comが膨大なコンテンツやサービスを抱えた企業だからにほかならない。すでに1000万を超えるアカウントを持つDMM.comなら、潜在的なユーザー数は大きい。会員という母体があるので認知度を上げやすく、うまく誘導できれば、ほかのMVNO以上にユーザーを獲得しやすいというわけだ。

 一方で、そのコンテンツとの連携はまだ十分でない印象も受ける。ギフト券での10%キャッシュバックはあるが、それはあくまで表面的な取り組みにも見える。また、同社が強い成人向けコンテンツとの連動を、ほとんど打ち出していないのは気になるポイントだ。今後は、どのようにサービスを方向づけ、ほかのMVNOと差別化していくのか。こうした点を、DMM.comの取締役 野村太郎氏に聞いた。

photo データ通信のみと、音声通話にも対応したSIMカードを提供している

会員数が1000万を超えたタイミングでMVNOに参入

photo DMM.com 取締役 野村太郎氏

―― 最初に、なぜDMM.comがMVNO事業に参入したのかを教えてください。

野村氏 DMMのサービスは、ご存じのようになんでもやるというスタンスです。常に新たなビジネスを模索していましたが、2015年にSIMロックの解除が義務化される方針が出た中で、このタイミングでMVNOに参入しようと決めました。

 もう1つ、ITmediaの読者は30代、40代の男性が多いと思いますが、弊社の会員も同じで、MVNOのユーザーと親和性が高い。にも関わらず2、3年前に参入しなかったのは、会員数です。今は会員数が1000万を超え、基盤があります。2、3年前でも数百万人はいましたが、1000万人といえば、日本の人口の10%程度ですからね。

―― 主なユーザーは会員向けということでしょうか。

野村氏 そこは両輪です。会員にプラスして新規をオンにしていく感じですね。

―― そうすると、逆にDMM.comの会員数を増やすためのモバイルという意味合いもありそうですね。

野村氏 はい。今だと、新規の割合も高く、50〜60%程度がDMM.comの会員です。逆にいえば、まだDMM.comの課金の流入が少ないんです。

―― 会員獲得状況を、もう少し詳しく教えてください。

野村氏 今は、外からの流入に頼っているところがあり、まだまだ内部の目標には達していない状況です。DMM.comの会員を飛躍的に伸ばすことができれば、目標は超えられます。目標は1年で、固く見て20万ぐらい。今後、どういう広告展開をするのかにもよりますが、認知度次第で50万はいくと思いっています。すでにクレジットカードを登録している人も多いので、そういったところの相乗効果も見込めます。

アダルトコンテンツとの連携はひっそりと?

―― コンテンツとの連携は、今後どうしていくご予定でしょうか。いきなり直球を投げますが、現状では御社が強いアダルトコンテンツとの連携も弱いと思います。

野村氏 例えばレンタルサービスを無料にしたり、動画コンテンツや電子書籍をつけたりなど、そういうものとはどんどんコラボしていきたいと考えています。

 とはいえ、先ほど申し上げたように、まだ会員の割合が少ない。ここは、アダルトコンテンツといかにひも付けるかで、グンと上がると思っています。なかなか対外的にアピールするのが難しいところなのですが……。ただ、内部施策として、ひっそりやることは考えています。

―― 会員からモバイルへの誘導には、効きそうですね。

野村氏 それは期待されているところだと思います。特にアダルトのユーザーは、フリーのアカウントではなく、クレジットカードを登録している人も多く、購買意欲が高いユーザーです。つまり、最初から毎月お金を払っているということですね。そこにモバイルを絡めて、よりお得になるというのはあると思います。モバイルは、クレジットカードの明細に「DMM」と入っていたときのカモフラージュにもなりますから(笑)。アダルトのひも付けは、他社にはできない、我々の優位性だと思っています。

―― 現状だと、通信料の10%をギフト券で還元するという施策が行われていますが、例えば、DMM.comのコンテンツを再生したときは通信量のカウントから外すといった、深い連携はできないのでしょうか。

野村氏 そこは、鋭意確認中です。実際やろうとすると、トラフィックが発生してしまう現状があり、実現は非常に難しい。割引サービスの方が、現実的なのです。そのコストをこちらで飲むという考え方もありますが、動画配信だと非常に大きな帯域を使ってしまいます。一方で、ゲームであれば帯域もそこまで使わないので、ゲームを遊ぶ分には通信料を加算しないなどの形を、今確認しているところです。

―― 確かに、MVNOだとMNOから帯域を買っているので、動画だとビジネスモデル的に難しいかもしれないですね。

野村氏 MVNOの通信料は、日々使うとかさんでいくものですが、特にアダルトユーザーなどは移動中に見ません。むしろ、家でWi-Fiを使って見ているため、動画を再生することで(その間使っていないモバイルの)通信量が減ります。そういったものを含めながら、相乗効果を見込んでいきたいですね。

MVNEにIIJを選んだ理由

―― 次に、回線面でお話を伺いたいのですが、MVNEにIIJが入っていますよね。MVNEを公表している会社も、珍しいと思います。IIJをMVNEとして起用した経緯を教えてください。

野村氏 積極的に公表しているわけではないのですが、あえて隠しているわけでもありません。聞かれたら言うというスタンスです。まぁ、APN設定を見たらバレてしまいますが(笑)。

 どことパートナーを組もうかと考えたとき、一番気にしたのが評判です。IIJさんの品質が非常に高く、通信が安定しているということでコンタクトを取りました。もちろん、ほかのMVNEともお話はしましたが、最終的に決定したのがIIJさんです。我々は通信業界に関しては素人ですが、いろいろなご指南を受けながらサービスを構築していきました。サービス開始から1カ月半ぐらい経ちましたが、品質の評判はやはりいいですね。そこに関するクレームは、ほぼありません。

―― 通信用の帯域はIIJのIIJmioと共有しているのでしょうか。

野村氏 はい。IIJさんと一緒の帯域を使っています。ですから、IIJさんにとってはほかのMVNOと帯域をシェアできるのがメリットですし、私たちは専用帯域を確保しなくていいので、その分コストを落とせます。

―― 1Gバイトで660円という価格も、そこから生まれたのですね。

野村氏 DMM.comのスタンスとして、最安を狙うというのがありました。コストの試算を繰り返しながら、最安を狙いつつ収益を取る。全12プランある中で、半分ちょっとは業界最安を実現できました。オーナーからは全部最安にできないのかという話もありましたが、他社でスポット的に(特定の容量だけ)安くしているところもあったので、そこはあきらめつつも最安は狙っています。価格競争が今後起きてもいいような値付けにはなっていると思います。

 ただ、思ったよりは価格競争になっていないですね。ある程度、このへんが下限かなという印象です。その中で、ユーザーさんが喜ぶ、さらに品質のいいサービスをできればと考えています。安さと品質は両輪です。どちらが下がってもダメで、そのバランスを取るのが非常に難しい。そのため、最終的には、ドコモさんと直接やることも視野に入れています。

DMM mobileの料金プラン(税別)
1Gバイト 3Gバイト 5Gバイト 7Gバイト 8Gバイト 10Gバイト
データSIMプラン 660円 1280円 1780円 2280円 2780円 3680円
通話SIMプラン 1460円 1980円 2380円 2880円 3580円 4480円

―― つまり、ドコモと相互接続する可能性もあるということでしょうか。

野村氏 費用対効果が合えばですね。最終的に、エンドユーザーさんに安い価格を提供できればというのが、ポイントになります。それらも踏まえて、コストダウンと品質の安定化を図っていきます。

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