「メモはすべてEvernote」「校正やコピー案で複数の辞書を駆使」――小説編集者の場合プロに学ぶアプリ活用術

» 2015年03月25日 12時48分 公開
[村上万純ITmedia]

 スマートフォンやタブレットを活用してもっと効率的に仕事ができないかと思うことはないだろうか。そんな悩める社会人や、これから社会に飛び立つ学生に向けて、現場の最前線で働くビジネスパーソンに仕事でアプリを活用する方法を聞いてみる本企画。今回は、出版社で小説を手がける30代男性編集者Aさんに話を聞いてきた。使用端末は「iPhone 6」。

photo 小説を手がける30代男性編集者が仕事で使うアプリ一覧

「何か思い付いたら全部Evernoteに保存」

 Aさんが仕事上よく使うアプリは「Evernote」。「ちょっとしたメモや、ネットで気になる情報も全部Evernoteに保存します。タグ付けはせず、時間があるときに後からノートの仕分けをして整理するくらいです」という使い方だ。

 さらに、Evernoteが提供するiOS向けのスキャンアプリ「Scannable」もヘビーに使っている。Scannableは、アプリを起動してカメラを撮影するように紙の書類をスキャンできるアプリで、原稿の種類の判別や画像補正など、ほとんどの工程を自動で行ってくれる。雑誌、新聞記事、はがき、レシート、名刺など、あらゆる文書を簡単にデジタル化できるだけでなく、画像内の文字を検索できるのも魅力だ。

photophoto スキャンアプリ「Scannable」

 「いちいち後からスキャンした画像をリサイズしたり、傾きを補正したりする必要がないのが便利です。スキャンした画像もすべてEvernoteにガンガン保存します」とAさん。デジタル化が進んだ今でも、会社や学校で紙の資料を配布される場面はまだまだ多い。自分のメモ用だけでなく、他人と手軽に共有できるのはかなり便利だといえる。

 Evernoteはあくまで記録用のアプリ。情報収集で使うのは、iOS向けアプリ「tmbrtext for tumblr」。画像やテキスト、動画などを投稿、共有できるサービス「Tumblr」からテキストだけを抽出して表示するものだ。Twitterのように、フォローした相手が投稿したりシェアしたりした内容がタイムライン上に流れてくる。

 「Tumblrは、まとめサイトよりも思わぬものに出会える楽しさがあると感じています。気に入った文章があれば、リブログ(シェア)してEvernoteに自動的に保存されるように設定しています」(Aさん)

 AさんはTwitter、Facebookなど各種SNSを利用しているが、現在はTumblrが最も相性がいいと感じているようで、ちょっとした隙間時間にTumblrを見ているという。

photophoto 「tmbrtext for tumblr」

校正やキャッチコピーで使う多様な辞書アプリ

 編集者は、執筆してもらった原稿に目を通し、正しい言葉が使われているか、より分かりやすく的確な言い回しがないかなどを細かくチェックしていく。ニュース記事を扱うITmedia編集部では共同通信の「記者ハンドブック」を使って記事中の語句や言い回しをチェックしているが、小説を扱うAさんは複数の辞書を駆使するという。重い辞書をいくつも持ち歩かなくてよいのは、アプリを使う大きなメリットといえる。

 特によく使う辞書アプリは26万語以上の語句を収録した「大辞林」(iOS/物書堂/2600円税込、以下同)、類語を探せる「日本語大シソーラス」(iOS/ロゴヴィスタ/4900円)、言葉同士のつながりを探せる「日本語表現活用辞典」(iOS/ロゴヴィスタ/3600円)、漢和辞典の「新漢語林MX」(iOS/Keisokugiken/1200円)、2653語の四字熟語を収録した「大修館 四字熟語辞典」(iOS/Overcyc/1500円)、ジーニアスブランドの最新辞書を1つにまとめた「ジーニアス英和(第4版)・和英)第3版)辞典」(iOS/ロゴヴィスタ/4900円)など。基本的に仕事での利用に耐えうる有料アプリを使っている。

 「原稿チェックの際には、まず大辞林を使います」と話すAさんは、メモをすべてEvernoteに保存しているため、アプリ内のブックマーク機能はほとんど使わない。大辞林用のTwitterアカウントを取得し、アプリ内のシェア機能でTwitterに投稿、そのツイートを自動的にEvernoteに転送するように設定するというやや特殊な使い方をしている。「あとから保存した単語を見直したり、整理したりしながら語彙(ごい)を増やしています」と話す。

photophotophoto 大辞林

 キャッチコピーを考えたり、原稿を手直ししたりするときは日本語大シソーラスが重宝しているそうだが、「アプリにシェア機能がないため、Evernoteに自動で転送することができなくて残念です」とコメント。また、おちゃめなキャッチコピーを考えるときは「踏韻事典」(iOS/Tachikogi Rider/200円)で韻を踏めないか調べるという。

photophoto 「日本語大シソーラス」

 紙の書籍の場合はWebと異なり、編集者が表紙のデザインや装丁など本が完成するまでの過程をすべて監修する必要がある。表紙や帯で使う色を確認するときは色見本帳「DIC COLOR GUIDE」(iOS/Android/DIC/無料)を使う。「ブックマークで色を保存でき、あとから比較できるのが便利です」と語る一方で、「iPhoneの画面と実際に印刷された色はやや異なるので、あくまで参考にする程度ですが」と付け加えた。

photophotophoto 「DIC COLOR GUIDE」

広告を見るためにあえて紙の本を購入

 Aさんが働く編集部では、紙の本だけでなく、電子書籍も積極的に展開している。そのため、ほかの編集部メンバーも含めて「Kindle」「マンガボックス」「BOOK WALKER」(いずれもiOS/Android/無料)など、文芸、ノンフィクション、漫画、ライトノベルと幅広い分野の電子書籍アプリをチェックしている。

 読者として面白い作品を探す意味もあるが、主に仕事上の情報収集に活用しているようだ。ほかには「少年ジャンプ」の電子版(有料)やジャンプの歴代人気マンガや新作マンガ(無料)が読める「ジャンプ+」アプリ(iOS/Android)を使っている一方で、ジャンプ発売日の月曜日には必ず紙のジャンプも購入するのだという。

 理由を聞いてみると、「電子版には広告や記事ページが入っていないから」と回答。電子版には広告がないので、各漫画に関する最新情報や新刊告知などを確認できない。読者としてはストレスなく読むためになるべく広告がない方がうれしいと思いがちだが、実は好きなキャラクターのマル秘情報や、読みたい新刊の情報などを取りこぼしている可能性があるわけだ。これも情報収集を重んじる作り手ならではの視点といえる。

photophoto 「ジャンプ+」(C)集英社

 紙の出版社というと、一般的にはどこかアナログなイメージも残るが、今回取り上げた編集部のようにスマホアプリを使いこなして仕事を円滑に進めているケースもある。EvernoteやScannableは、異業種の人だけでなく学生でも幅広く活用できるアプリだ。「これは使えそうだ」というアプリがあれば、早速試してみてほしい。

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