インタビュー
» 2015年04月02日 22時23分 UPDATE

ターゲットを絞り、利用シーンを提案する――――ウェアラブル普及に向けたソニーの秘策 (1/2)

ソニー/ソニーモバイルコミュニケーションズは、積極的にウェアラブル端末を投入しているほか、外部パートナーとの取り組みも推進している。まだ普及しているとは言い難いウェアラブル市場で、ソニーはどのような戦略で攻めていくのだろうか?

[田中聡,ITmedia]

 ここ最近、にわかに製品が増えているウェアラブル端末。Bluetooth接続することでスマートフォンと連動するのが大きな特徴で、SNSやメールなどをチェックする、スマホにかかってきた通話をする、活動量を記録する、といった機能を持つ。スマートフォンメーカーや通信キャリアもこの分野には注目しており、さまざまな製品が登場している。

 中でも積極的にウェアラブル端末を投入しているのが、ソニー/ソニーモバイルコミュニケーションズだ。ウォッチ型の「SmartWatch」やリストバンド型の「SmartBand/SmartBand Talk」に加え、テニスショットの分析結果をスマホに表示する「Smart Tennis Sensor」、ヘッドフォン一体型のランナー向けデバイス「Smart B-Trainer」も発売。グラス型の「SmartEyglass」や、自前のアイウェアに取り付けたアタッチメントに映像を投影する「SmartEyeglass Attach!」の投入も予定している。

 また、行動履歴を記録する独自アプリ「Lifelog」アプリのAPIを公開、SmartWatch 3と連動したアプリ開発を支援するなど、異業種との連携も強めている。サードパーティからは、SmartWatch 3やSmartBand/SmartBand Talk用のバンドも多数発売されている。

 ソニーは今後、どのような戦略でウェアラブル事業を展開していくのか。ソニーモバイルコミュニケーションズ シニアバイスプレジデント、ソニー UX・商品戦略本部 企画運営部門 部門長の田嶋知一氏に聞いた。

photo ソニーモバイル/ソニーの田嶋氏

ターゲットを絞り、ユーザー層は広げる

―― ソニーのウェアラブル端末は、ターゲットを絞った製品が多いように思えます。その考えは今後も変わらないのでしょうか。

田嶋氏 ターゲットは絞っていきます。今はテニスやランニングに絞っていますね。メガネ(SmartEyglass)が典型的で、AR(拡張現実)という一番広いところをやってみましたけど、装着するだけの製品をアスリート向けに出したらどうか、と考えました。

photophoto テニスショットを即時分析してくれ「Smart Tennis Sensor」(写真=左)。ランナー向けデバイス「Smart B-Trainer」(写真=右)

 SmartBandを出してから、いろいろな方々から、僕らが思いもよらなかった使い方やアプリのお話をいただいています。そういう方々の活動を支援することも、僕たちの取り組みの1つです。このアタッチ(SmartEyeglass Attach!)もそうで、モジュール型にすることで、幅が広がります。

photo 「SmartEyeglass Attach!」

―― 思いもよらなかった使い方やアプリとは?

田嶋氏 地方自治体の健康促進や介護施設の応用などですね。SmartBandにGPSが入っていれば、例えばシニアの方をトラッキングなどもきます。

―― ウェアラブル端末が出た当初は、ガジェット好きな人が買うイメージがありましたけど、セグメントを広げることも重要ですね。

田嶋氏 ガジェット好きな人が買って、3カ月使って終わるというのが初期のころ。今は「ガジェットで何をするか」に行かないといけません。最初は買うけど長続きをしないというのがあるので、継続的に使っていただくユースケースやアプリをちゃんとご用意する必要があります。エンドユーザーの使い方は1つではありません。明確に用途を示さないといけませんが、我々が示すというよりは、我々とパートナーさんが示すということです。

アプリ開発の支援も積極的に行う

―― その(用途を示す)ために、どういう取り組みをしているのでしょうか。

田嶋氏 それが一番の課題だと思います。最初はSmartBandとLifelogアプリを作り、(アプリでは)タイルを並べて、(行動履歴を取るデータの種類を)足せるようにしました。歩行を追いたい人は歩数計として使ってくれますし、聴いた音楽を振り返ることもできます。フィードバックをいただいている中で、ユースケースを開発しないといけないと感じているので、開発者さんの開拓を始めています。メガネ(SmartEyeglass)はSDKを公開してハッカソンをやっています。

 Lifelogアプリも、お客様のデータをお渡しして、それでアプリを作ってもらっています。僕らがカバーできないようなユースケースのアプリがサードパーティから出てくれば、何かしら刺さるのではないかと思います。

photo 「SmartBand」と「Lifelog」アプリ

―― ソニーだけでアプリやデバイスを作るのは限界だと。

田嶋氏 すべては押さえられないですね。もちろん僕らが得意な「音楽や走った情報の組み合わせで新しいエクスペリエンスを作る」といったことは頑張りますし、得意でないところはどんどん(他社に)やってもらいたい。これは幅が本当に広いんですよね。人間の生活を全部サポートできるので、本当にいろいろなプレーヤーがユースケースやアプリを提供できる。より広くアプリを出してもらうために、ウォッチ(SmartWatch 3)はAndroid Wearを採用しました。

―― 一方、SmartBand/SmartBand Talkは独自OSを採用しています。

田嶋氏 バンドは(ウォッチとウェアの)間なんですよね。UIが独特なので。ウェアだと汎用(はんよう)性が上がりますが、バンドは機能が特定されています。その真ん中をどうするかは迷っているところです。

顔回りの感覚器官に対してソリューションを提案したい

―― ウェアラブルといえばウォッチ型が多いですけど、デバイスの形状は広げていきたいと。

田嶋氏 ウェアする場所は体中いろいろあって、すでにウェアしているところに載っていくのがいいと思っています。腕輪もあるし、ベルト(腰回り)や胸の名札をつけるところもあります。あと、人間の感覚は顔回りに集中しているんですね。視覚、聴覚、味覚…。感覚器官に近いソリューションは直感的に提案できます。そのうち、味覚にも行くとは思います。

 腕に付ければ、デバイスを取り出さなくて済むので、スマートフォンよりややインタラクション(操作)が楽になります。例えば、昔は時刻を確認するのに、ポケットから懐中時計を取り出して見ていましたけど、それが今のスマートフォンの状況なんですよね(時刻を確認するのにスマホを取り出している)。そのうち腕をかざす必要がなくなって、耳や目から入るところを狙っています。

―― ソニーとしては、ウェアラブルで「上を向くUI」を実現することを公言していますが、具体的な方法は?

田嶋氏 顔周りのソリューションですね。(ウォッチで)腕に装着したものを見るのも、やや下を向いてしまう。感覚器官に近づけていくと、上を向いたまま行けるのかなと。

―― 歩きスマホが社会問題になっているように、下を向いたまま歩くのは危ないという面もあります。

田嶋氏 そうですね。もちろん、(顔に)かぶせるだけでも違和感があったり、(耳に装着する場合は)外の音が聞こえないとか、いろいろな課題はあります。あとは電車の中で、全員が下を向いていて並んでいる風景がいやなんですよね。あれが楽しい社会には見えません。

―― まだウェアラブルが普及していないから、グラスを装着するのが恥ずかしい、時計に向かって話しかけるのが恥ずかしい……という文化的な面もあります。

田嶋氏 時間はかかると思うんですよね。いくつかスタイルは模索しないといけないと思っています。

ウェアラブルを「スマホのサポート」とは言いたくない

―― ウェアラブルの抵抗感や距離感は国によって変わってくるのでしょうか。

田嶋氏 どうなんですかね。大都市での新しいカルチャーはわりと均一化しているかなと。例えばセルフィーは違和感があると思うじゃないですか。でも新興国からああいうカルチャーが出て、観光地に行くと、カップルが棒を出して撮っている。デジタル機器を使いこなす新しいトレンドリーダーが出てきているので、(ウェアラブルも)少しずつ社会に受け入れられていくんじゃないかと思います。

―― トレンドリーダーといえば若者だと思いますが、キッズやシニアなど、特定層に絞った製品も出すのでしょうか。

田嶋氏 考えたいと思っています。今のキッズ提案では、(ターゲット層を)キッズと扱っているので、響かないのでは。シニアも同様で、「おれはシニアじゃない!」と。我々は「ニューキッズ」「ニューシニア」と呼んでいます。彼らは新しいスタイルに対して準備万端だと思うんですよね。新しいライフスタイルに対して貪欲な層は多いと思うので、そこを狙った商品は作りたいと思います。

―― 今のウェアラブルユーザーは、どちらかというと、30〜40代が多い。

田嶋氏 ガジェット好きな方が試してみるという段階では、広がりが出ないですよね。その先の幅広いユーザーが、こういう風に使いたいというのを決めれば、より特化したアプリや使い方を提案できるチャンスがあると思っています。

―― 現時点ではウェアラブルはスマホのサポート的な役割に終わっています。

田嶋氏 サポートとは言いたくないんですけどね。「エンハンス」という言葉がいいかなと。「これを足すともっと良くなる」「強化する」という意味です。「スマホでも同じことができるけど、ウェアラブルの方が体験が良くなる」という状態を目指しています。

―― 最近は単体で通信機能を内蔵したウェアラブル端末も増えていますが、そうした端末へはどのようにアプローチしていきますか。

田嶋氏 もちろん準備はしています。でも、通信して汎用的に利用するものはスマホがおすすめですね。スマホからウェアラブルに置き換わるには、インタフェース、コネクティビティ、バッテリーの持ちなど、いくつかイノベーションが必要です。ですから、過渡期には専用デバイスをどんどん出していき、汎用と専用で補間関係を作るということです。

―― スマートフォンの中心には、当然Xperiaがある。

田嶋氏 Xperiaが呼び水になるということですね。僕らはスマホ(Xperia)を持っているので、これに一番適したアプリケーションを作れます。スマホがなかったら、ウェアラブルの展開も、違うアプローチになっていたと思います。

―― iOS対応についてはどうお考えですか?

田嶋氏 議論中です。一般的なソニーのヘッドフォンはiOS端末ともつながりますし、iOSとAndroid版の両方に対応したアプリもリリースしています。

photo 通話も可能な「SmartBand Talk」。Android Wearは採用していないが、iOSとは接続できない
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