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» 2015年05月11日 23時11分 UPDATE

ソフトバンク 2.0:孫氏、ニケシュ氏を後継者に指名――社名も変更して「世界のソフトバンクになる」

「ソフトバンクグループ」へと社名を変更することを発表したソフトバンク。その裏には、グローバル戦略を加速させ、「世界のソフトバンクになる」という思いが込められている。

[田中聡,ITmedia]

 ソフトバンクが5月11日、2015年3月期の決算説明会を開催。2014年度の売上高は前期比30%増の8.7兆円、償却前の営業利益(EBITDA)は前期比20%増の2.1兆円、純利益は前期比29%増の6684億円となった。営業利益は前期比9%減の9827億円だが、13年度のガンホーとウィルコム子会社化に伴う一次益を除くと19%増となる。

 ソフトバンクは、グローバル展開を加速させ、純粋持ち株会社としての位置付けを明確にすべく、7月1日から社名を「ソフトバンクグループ」に変更する。あわせて、4月1日にソフトバンク、ソフトバンクテレコム、ワイモバイルを吸収合併したソフトバンクモバイルも7月1日に「ソフトバンク」に変更する。これはソフトバンクモバイルの事業領域が、モバイル通信サービスから固定通信、インターネット接続サービスまで拡大したため。

国内の通信事業は安定期に Sprint事業も好転

 ソフトバンクは現在、「通信」「インターネット」という2つの事業を展開しているが、ソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏は「この10年間は時間と頭の90数%を通信事業に費やしてきた」と振り返り、「国内の通信事業は、十分にその事業を継続して成長させていける体制が整った」と評価する。

photo ソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏

 新ソフトバンクでは宮内謙氏が代表取締役社長 兼 CEOを務め、「成長戦略の強化」と「経営の効率化」の両立に注力する。モバイル通信の設備投資額はピーク時の13年度には7000億円以上だったが、15〜16年度は3000億円台にまで下がる見込み。「償却前の営業利益から設備投資を差し引いたフリーキャッシュフローで、十分に経営を行っていける」と孫氏は話し、国内の通信事業は安定期に入ったことを示した。

photophoto 14年度のモバイル事業での営業利益は6953億円。ボーダフォンを買収してから約9倍にまで増加した(写真=左)。Y!mobileの新規獲得数も伸びている(写真=右)
photophoto スマートフォンの周辺機器を扱うSoftBank SELECTIONの売上高は2009年から約7倍に(写真=左)。全国で計測したというスマートフォンの通信速度も高水準を維持している(写真=右)
photo 15年度以降は設備投資額が減り、フリーキャッシュフローが増える算段だ

 なお、5月1日から義務化されたSIMロックの解除については、「各社(NTTドコモとKDDI)が総務省の方針通りに行っているとおり、我々もガイドラインに従う予定でいる」(孫氏)とした。

 米Sprintの携帯事業は、マルセロ・クラウレ(Marcelo Claure)氏がCEOとなって手腕を発揮したことで、契約数は純減から純増に転じ、ネットワークの品質も改善された。「Sprintの経営は、特にこの1カ月半、私自身がSprintの次世代ネットワークの設計に関わっていて、だいぶ自信が出てきた。Sprintは明るい兆しが見えてきた」と孫氏は手応えを話す。

photophoto Sprintは純増に転じ、解約率も低下した
photo ネットワーク品質も他事業者と見劣りしないレベルに達した

IT企業の“30年ライフサイクル問題”を解決するには

 通信事業は1つの区切りがついたことから、今後はインターネット事業に再び注力していく。「通信インフラを始める前にもう一度戻し、本格的に世界のソフトバンクになる。インターネットのソフトバンクになる展開をもう一度加速させたい」と孫氏は話し、アリババを中心としたアジアでの展開、Yahoo!Japanのさらなる成長、スマホのゲームアプリ、インドのEコマースなどを注力分野に挙げた。

 一方で孫氏は、IT企業の成長が30年で止まってしまう「30年ライフサイクル問題」を感じているという。その理由は「テクノロジーが古くなる」「創業者が年をとる」「ビジネスモデルが古くなる」の3つ。そんな中で孫氏は「30年たっても決して大企業に成り下がりたくない」と豪語する。

 30年で成長を止めないための解決策は「我々自身が革新的な起業家集団であること」と孫氏は述べる。「筆頭株主、パートナーとして経営を拡大、ビジネスモデルを革新させ、お互いにシナジーを出していく。日本で作ったものを世界に持っていくのではなく、世界の起業家の仲間とともに成長したい」と熱く語った。一方、Sprintのように他国の通信事業者と提携する可能性については、「素晴らしいビジネス機会があれば、まったく目を閉じるわけではない」と述べるにとどめた。

photo ソフトバンクは革新的な起業家集団を目指す

ニケシュ・アローラ氏が孫氏の後継者へ

 孫氏は新生ソフトバンクグループを「第2のソフトバンク」と位置づけ、「世界のソフトバンクになりたい」と意気込む。その鍵を握る存在が、6月19日に代表取締役副社長へ就任予定のニケシュ・アローラ氏だ。1968年生まれのニケシュ氏は、T-Mobile EuropeやGoogleなどを経て、2014年9月にソフトバンクのバイスチェアマンとSB Group USに就任し、グループの成長戦略の策定と実行に深く携わってきた。

photo 孫氏がほれ込んだニケシュ・アローラ氏。ニケシュ氏も「世界のソフトバンクになる」という孫氏の考えに賛同し、「情熱のある起業家を見つけ、これまで孫社長が『趣味』と言ってきた部分(インターネット事業)を維持して伸ばしていきたい」とコメントした

 ニケシュ氏について孫氏は「世界中のインターネット企業のほとんどのビジネスモデルやテクノロジーを知っており、主要なインターネットネット企業CEOとの交流を持っている」とその才覚と経験を高く評価。「私以上にニケシュが素晴らしい人脈を持っているので、アメリカとヨーロッパを中心に、ネット業界の優れた人材をスカウトし始めている。2〜3年の間に、グローバル戦略の経営幹部を増やしていきたい」(孫氏)。また「人格が尊敬に値する」「会えない日は朝と夜に必ず電話をする」と人柄にもほれ込んでいる様子で、2人が親密な関係であることが伝わってきた。

 そして孫氏はニケシュ氏を「実質的な後継者」に考えていることも明かした。「創業以来初めて、英語で言うPresidentの役職を譲った(ニケシュ氏の英語での役職名は“COO&President”)。これはそれなりに重要な意味を持っている。私もまだ引退するつもりはないが、(ニケシュ氏は)最も重要な後継者候補。(継承する)時期については、正式に申し上げるつもりはない」(孫氏)

 ソフトバンクは、ソフトバンクグループへの社名変更、ニケシュ氏の副社長就任など、グローバル企業への変革を目指した取り組みを「ソフトバンク 2.0」と名付け、推進していく。

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