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» 2015年09月02日 06時00分 UPDATE

アプリから緊急医療まで、新たなイノベーションが誕生――「TECH LAB PAAK」成果発表会

リクルートホールディングスが、オープンイノベーション活動を支援する「TECH LAB PAAK」にて、第1期会員の成果発表会「OPEN PAAK DAY」を開催。スマートフォンを前提としたサービスやデバイスが多く、商用化も期待できる内容となった。

[島徹,ITmedia]

 リクルートホールディングスは8月30日、同社がIT関連を中心とした技術者や研究者のオープンイノベーション活動を支援するコミュニティ・スペース「TECH LAB PAAK(以下PAAK)」における、第1期会員の成果発表会「OPEN PAAK DAY」を開催した。

photo 「OPEN PAAK DAY」には登壇する第1期会員を中心に、多くの人が詰めかけた

 オープンイノベーションとは、企業が社外の技術者や研究者と協力して技術や新規事業を開発する取り組みだ。国内でもオープンスペースやハッカソン、勉強会など長期のものから短期のイベントまで、さまざまな形で実施する企業が増えつつある。

 PAAKは、2015年2月に渋谷に開設された、開発機材とコミュニケーション施設が用意されたスペースを活用して開発や研究に取り組める枠組み。審査を通過した40組100人の第1期メンバーは、2月から8月までの半年間、無料で活用できた。5月からは第2期の36組94人が利用するほか、近く第3期メンバーの募集も実施される予定だ。

photo PAAKメンバーは渋谷に設置された、通信や電源、ドリンクが完備されたフロアを活用できる。また、開発用機材や技術専門書、会議室などが用意されたフロアも用意されている

iモードは最初のオープンイノベーションだった

 成果発表会に先駆けて、リクルートホールディングス R&D本部 Media Technology Lab.室長の麻生要一氏、NTTドコモ・ベンチャーズ 大前浩司氏、朝日新聞社メディアラボの竹原大祐氏が、各社のオープンイノベーションに関するパネルディスカッションを実施した。

 麻生氏は、リクルートが2006年からWeb APIを公開してきた取り組みを紹介。近年ではWeb上に言語解析やソーシャルグラフなど高度なAPIも公開され、組み合わせによるイノベーションを生み出しやすくなったという。PAAKなどの取り組みは短期的なシナジーだけでなく、中長期的にメディアがデバイス化すると考えており、より組める領域が増えていくのではないかという。

photo リクルートホールディングス R&D本部 Media Technology Lab.室長 麻生要一氏

 NTTドコモ・ベンチャーズの大前浩司氏は、iモードを「最初のオープンイノベーション」と振り返り、「通信の経路に責任を持つ通信事業者が、インターネットにつないであとはお任せというのは、ドコモがNTTから独立した直後のベンチャー気質だからできたことだ」と解説。現在では『「競争」から「協創」へ』のキーワードで、大手だけでなくベンチャー企業とも「ドコモ・イノベーションビレッジ」としてテーマに基づいた協業促進やイベント開催を実施しているという。将来の5Gはサービスが重要として「5Gアイデアコンテスト」も開催している。

photo NTTドコモ・ベンチャーズ 大前浩司氏

 朝日新聞社メディアラボの竹原大祐氏は、メディアラボの渋谷オフィスを開設したことで、築地の東京本社よりもさらに人が集まりやすく、ビジネスインキュベーションなら組みたいという企業やベンチャーキャピタルともつながったという。強みは人財ネットワークや発信力にあり、業態変革してでも次に向けてやっていく、5年10年先を見据えて動いているという。

photo 朝日新聞社メディアラボ 竹原大祐氏

22組の中から受賞した作品

 成果発表会では22組が登壇し、TECH LAB PAAK賞は上野道彦氏の「cognitive science × computer science」が受賞した。共同研究やステークホルダーとの関係といった理由によりメディアへの掲載は非公開となったが、リクルートホールディングス R&D本部専門役員 岡本彰彦氏は「TECH LAB PAAKが求めている超長期を見据えた内容」と評価。投資対象であることを前提とせず、世界のあり方を変える取り組みを応援するPAAKの理念に沿った表彰となった。

photo TECH LAB PAAK賞は「cognitive science × computer science」の上野道彦氏が受賞した

 このほか、実際にビジネスとしての展開を始めている「Deploygate」や「filme」といったものから、将来的な事業化や社会貢献が見込まれるサービスやデバイス、純粋な研究まで、多岐にわたる発表がなされた。スマートフォンを前提としたサービスやデバイスが多く、将来的に一般のユーザーが手にしたり、間接的に利用したりするものも期待できる内容となった。

Media Technology Lab.賞「Deploygate」/藤崎友樹氏

 開発中のAndroid/iOSアプリの配布やログの収集、テストのフィードバックを効率化するサービス。PAAKを積極的に活用し、事業としての黒字化を達成した点も評価された。

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C Channel賞、Tuffle Capital賞「Chef's Hippocampus」/喜多唯氏

 公開されているレシピの食材を分析。結果から「エビとオレンジとチーズとカシューナッツ」など新しいうえに味も確かな食材の組み合わせを作り出せる。同じ分析手法はファッションにも応用できるという。

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Tech Crunch賞、オーディエンス賞「Coaido株式会社」/玄正慎氏

 突発的な心停止に対して蘇生率の向上に有効な、5分以内のAEDの利用を支援するファーストレスポンダーシステムを実現。現在は尾張旭市と京都大学と実証実験を実施している。119番通報があると現場付近の消防職員にスマホで通知し、街中のAEDを使った素早い初期対応を支援する。

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Microsoft賞「VISTouch」/安本匡佑氏

 タブレットの画面上に専用のケースを取り付けたスマートフォンを立てると、立てた位置や加速度センサーによってタブレットの画面に対して垂直方向に画像を表示して立体的な表現を実現する仕組み。Google マップの上にスマートフォンを立てるとその場所のストリートビューを表示するといった使いかたのほか、ゲームや医療現場への応用も考えられる。

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オーディエンス賞「情報を触覚するウェアラブルデバイス」/久田智之氏

 目と耳の両方に障害を持つ盲ろう者向けの、指点字を入出力可能なウェアラブルデバイスを開発中。視覚または聴覚のどちらかの障害についてはデジタル機器による生活サポートの恩恵を受けられるが、盲ろう者へのデジタル機器の対応はまだ少ないことから開発に至ったという。

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オーディエンス賞「filme」/門松信吾氏

 子供の動画をスマートフォンで撮影し、動画日記をアップロードすると自動で成長シネマを作成できるサービス。作成した成長シネマは共有するだけでなく、DVDとして購入することもできる。

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