―― その端末ラインアップが豊富なのは楽天モバイルの強みだと思いますが、どういったポリシーでそろえているのでしょうか。
黒住氏 事業開始当初から、できるだけたくさんのニーズにお応えするというものはありました。とにかく安くなるよう、グローバル端末を安く調達して売るというわけではなく、国産も含め、バランスよくニーズに応えるラインアップを組みましょうという方針です。夏に関しても、MVNOの中では、他社に負けないような選択肢をそろえました。
比較対象は、MVNOだけではありません。MNOに対しても、商品の質で負けないようにしようというのがあります。ただ、それだけになってしまうと、どうしてもお客さまが求めているコストやニーズに応えられません。国産端末には国産端末が得意とする領域があり、グローバル端末にはグローバル端末の得意な領域があります。
1つの方向性は、やはりコストパフォーマンス重視で、たまたまなのか、意図的なのかは分かりませんが、海外メーカーはそのカテゴリーに入っています。逆に、日本市場に独特な防水やワンセグ、おサイフケータイがしっかり入っているものは、国内メーカーです。ZTEのBlade E01は、前者の延長線上にある商品ですね。
―― 昨年(2015年)出た「P8 lite」は売れ行きもよかったと聞きますが、P9 liteはいかがでしょうか。
黒住氏 実際触ってみると分かりますが、やっぱりバランスがいいですね。僕も端末を作っていたので分かりますが(※黒住氏はソニー・エリクソン在籍時にXperiaブランドを立ち上げ、Xperia Z3発表直前にソフトバンクに移籍、その後楽天に入社する)、このクオリティーでよくこの価格が出せるなと思います。もともと、日本市場は高い端末がほとんどで、後はとにかく安いものしかありませんでした。そのちょうど中間の領域、いいデザインで、いい機能が入っていても安いというものが、この1年から半年ぐらいできちんとそろい始めています。
―― 一方で、P9のようなハイエンド端末も入れているのは、楽天モバイルならではです。
黒住氏 ハイクオリティーでプレミアム感のある商品を求められているお客さまもいます。楽天はイノベーティブな会社でありたいし、しっかりそういうものを提供したい。デュアルカメラは他社もやっていますが、正直ここまで作りこめているのは、Huaweiさんならではです。仕組みも勉強しましたが、よく考えられていますね。
―― 反応はいかがですか。
大尾嘉氏 いいですね。P9 liteとP9で当然価格に差はありますが、僕らが想定していた以上に売れています。僕らのビジョンとして、「ちょっといいモバイル、もっと楽しい毎日」という言い方をしていますが、ボリュームゾーンだから売る、そうじゃないから売らないではなく、全てのお客さまに楽しく過ごしてほしい。もちろん、ある程度数も追わなければいけないのは事実ですが、同時に、少しでも違ったものを提供したい。例えばP9であれば面白い写真やプロ並みの写真を撮ることができますし、そういった楽しさは提供していきたいですね。
―― 傾向として、今までより高い端末が売れるようになってきたということはあるのでしょうか。
黒住氏 これから変わるかもしれません。高い方の端末が売れるようになるには、やはり時間がかかります。いくら日本の市場がハイセグメントに集中しているとはいっても、そこにわれわれが同じような価格帯の商品を用意するだけでは通用しません。これまで日本に流通していなかったブランドなり商品なりを認知してもらうためにも、時間が必要です。
ただ、兆しとして、当初より女性のユーザーが増えてきて、年齢層が40歳前後だったところから若い方、高い方にも徐々に広がっています。今後、そういったユーザーが(SIMフリー端末を)認知したとき、より大きくなってくるのだと思います。
―― そのときに、コミコミプランが威力を発揮しそうですね。
黒住氏 効いてくると思います。
―― まだ始まって数日ですが、利用状況はいかがですか。
大尾嘉氏 期待していた通りですね。
黒住氏 コミコミの方とそうじゃない方がいるという前提で作ったもので、やはりそういう形になっています。一極集中にはなっていませんね。
大尾嘉氏 ですが、これから徐々に上がっていくと見ています。今回は新しい端末との組み合わせにしていますが、ニーズのあるところでやっていこうと考えています。
―― 黒住さんがarrows M03を持っているのが、今までの経緯を考えると驚きというか、複雑というか、面白いというか……(笑)。ぶっちゃけ、Xperiaに似ていませんか?
黒住氏 僕も富士通さんには行きましたが、最初はどういう説明をするのか、楽しみにしていました(笑)。ただ、モチーフはどうされたのかを聞いたところ、答えとしては彫刻的なアプローチを取っていて、四隅に削りも入っています。ここは、一番の差別化です。ガラスの1枚板の商品の表情を作るのは、こういうところですからね。
しかも、テレビ用のアンテナまでちゃんと入っているのは、素直にすごい。このコストで、ここまでやれるのかと感心しました。背面はガラスではありませんが、MIL規格まで通してしまっている。ここまでやって大丈夫なのと聞きましたが、彼らは日本市場のことをよく分かっていて、「ここまでやらないと満足してもらえない」と言っていました。ミッドレンジだと手を抜いてしまうところがある中で、一切手を抜いていないのはすごいと思いました。
―― 今回であれば、Blade E01は他のMVNOにない端末ですが、こういった点での差別化も意識しているのでしょうか。
黒住氏 FREETELさんがやられているような自社開発という道もありますが、楽天には、マーチャントさんがいて、彼らが作ったものをしっかり流通させるというカルチャーがあります。honor6 Plusは独占でしたが、あれもHuaweiさんにああいった商品があって、それを独占的に提供した形です。honor6 Plusに関しては、ダブルレンズであの価格帯のものはなかったので、そこに踏み込んでいきましたが、そういうことは、今後もやっていきたいですね。特徴のある商品やブランドを、一緒にやっていくことで、目玉は作っていけると思います。
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