インタビュー
» 2017年01月25日 06時00分 UPDATE

端末購入補助とSIMロック解除のルールが変わる――総務省に聞く“新ガイドライン”の狙い (1/3)

端末購入補助とSIMロック解除のガイドラインが1月10日に改正された。新ガイドラインはどのような目的で策定され、また今回の改正にはどのような意図があるのか。総務省の担当者を直撃した。

[石野純也,ITmedia]

 スマートフォンの「実質0円販売」を禁止したガイドラインと、SIMロック解除のガイドラインが統合され、「モバイルサービスの提供条件・端末に関するガイドライン」が1月10日に策定された。これによって、最新端末の価格設定に対し「おおむね2年前に販売が開始された同一製造事業者の先行同型機種」の下取り価格を参考にする基準が示されたほか、SIMロック解除が可能になる期間が100日程度に短縮される。端末代を一括で支払っている場合は、即時SIMロック解除が可能になるよう、キャリアに対しても対応を求めている。

総務省の新ガイドライン 端末販売補助とSIMロック解除に関する新しいガイドライン

 この新ガイドラインは、2016年10月、11月に総務省で開催された「フォローアップ会合」を経て策定されたものだ。目的はキャリア間だけでなく、MVNOまで含めた競争の促進や、通信サービスと端末の自由な選択を可能にするところにある。一方で、一部の端末価格がさらに上がる恐れがあるといった報道もあり、消費者からは批判の声も聞こえてくる。通信費が大きく変わらなければ、トータルでの支出は上がってしまうからだ。

 このガイドラインはどのような趣旨に基づき、作成されたのか。本当に端末価格は上がってしまうのか。こうした疑問を、ガイドラインの策定に携わった総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部 料金サービス課の内藤新一氏にぶつけた。

新ガイドラインの目的

―― まずは、新ガイドラインの趣旨や目的を、あらためて教えてください。

内藤氏 経緯をお話すると、2015年から料金、サービスに関するタスクフォースがあり、ガイドラインを策定しました。また、SIMロック解除のガイドラインも施行しており、2015年5月以降に発売された端末から、運用が始まっています。そのフォローアップを行ったのが、2016年10月以降になります。そこではいろいろな議論がありました。「料金、サービスの競争をさらに促進しよう」「端末、サービスを自由に選択できる環境を作ろう」「それをすることで競争が進み、料金の低廉化も進む」という考えの元、いくつかの提言をいただきました。

総務省の新ガイドライン 2016年に開催された「モバイルサービスの提供条件・端末に関するフォローアップ会合」

 その結果、ガイドラインを1つに束ね、内容を改め、消費者保護ルールも見直し、利用者が適切な選択をできるようにしました。もう1つ、接続料の適正化ということで、ネットワークをMNOがMVNOに貸し出す際の接続料に関して、MVNO側の仕入れの値段を下げられる仕組みを入れ、競争が進むようにしました。接続料に関してはこれから審議会で審議を行いますが、現在の案だと、2017年度から速やかに適用することになります。

―― 新ガイドライン案に対するパブリックコメントの多さも、注目を集めました。

内藤氏 過去をひもとくと、万を超えるものもありましたが、総務省でいえば、最近2年間では100件を超えたものはなかったようです。端末購入補助ガイドラインへの関心が高かった一方で、SIMロック解除についても、個人の方からご意見をいただいております。個人のユーザーからは、MVNOに対するSIMロックを見直してほしいという声もありましたし、SIMロック(の規制)自体をもっと厳しくしてほしいという声もありました。

総務省の新ガイドライン パブリックコメントでは131件の意見が集まった

 端末購入補助については、「負担が上がる」という声もありましたが、一方で端末を割引するビジネスモデルがいけないというご意見も存在します。両サイドからのご意見がありましたが、そもそもそういう取り組み(キャリアに対しての規制)自体がよくないという声があったのも事実です。ドラスティックであるように見えるかもしれませんし、過去に分離プランを導入した際に端末の売り上げに影響があったという批判もいただきましたが、われわれとしてはモデレートで中庸なやり方をしています。

なぜ「2年前の下取り価格」が目安に?

―― 端末に関して、2年前の機種の下取り価格を目安にする旨が書かれていますが、これはどのような意図があるのでしょうか。

内藤氏 考え方としては、新しい端末の実質負担額を合理的にするというのが大きな目的でした。実質0円を下回ると、端末を買わなかった人の負担が大きくなり、買わない人が損をしてしまいます。それに加えて、2年前の下取り価格を基準にしたのは、本来、一般論であれば買い取る側は下取り以上の価格で売ることができるからです。新しいものが2年前の商品よりも安いというのは、合理的な値付けとはいえません。ですから、これが新しいものを買う人を優遇している、1つの線引きになります。

総務省の新ガイドライン 各社とも、下取りをして格安で機種変更できる施策を展開しているが、新ガイドラインでは、新機種が2年前の同ブランド機種の下取り価格を下回ってはいけなくなる

―― なるほど。ただ、この場合、もしキャリアが実質1万円で売りたければ、買い取り価格を意図的に下げるということもできてしまいます。これは大丈夫なのでしょうか。

内藤氏 そこは許容されています。キャリアの下取りと実質価格の比較で、相互にバランスが取れているか。本来の意図は新規端末の負担の適正化にありますが、下取り価格を下げること自体を否定しているわけではありません。ただ、その場合、ユーザーサイドは(あまりにキャリアの下取りが安いと)中古の端末業者に行くこともあると思います。解約時にSIMロックを解除すれば、より利用しやすい形で中古端末が流通する効果も出てきて、買う人の選択肢も出てきます。

―― 割引に上限を設けることはできなかったのでしょうか。フォローアップ会合でも、ソフトバンクが韓国の例を出しながら、そのような主張をしていました。

内藤氏 政策論としてあるとは思いますが、その場合、法的根拠が必要になってきます。現行の枠組みで何ができるのかを検討している際に、メルクマール(指標)の1つに、実質0円を下回ると著しく不公平になってしまうということがありました。これは不公平だけでなく、(料金の)高止まりにつながるという観点でも見ることができます。ただ、いくらなら不公平なのかを特定するのは、今の電気通信事業法の枠組みでは難しいですね。そこを、法律改正をしてまでやるのかどうかです。

 韓国の場合、小売店の値引き額を統制していますが、やはり値引き額に規制を設けるのはドラスティックなことで、韓国の法律も一種の議員立法でできたと聞いています。(日本で同様の政策を実施する際に)法律としてうまく構成できるかの検討には至っていません。

―― 基準にしたのが、1年前の機種や全体の平均ではなく、2年前の同等機種というのはなぜでしょうか。

内藤氏 実際市場で売買されている端末のボリュームを見ることはできませんが、推測からすると、多くの方が月々の割引を受けているため、通常は2年間同じ端末を使います。ユーザーが下取りや中古に出すのは、それ以降が多くなります。月々の割引のメリットが残っているなら、その時点で手放すためのプレミアムがないと出しませんからね。2年ぐらいたった端末の方が、下取り価格が自然なものになります。もう1つは、2年前の端末と今の端末を比較すると、性能差があり、経年劣化も出てきます。それを比べて、さすがに新しい端末の方が負担が少ないというのは、合理性がありません。

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