連載
» 2017年05月29日 06時00分 UPDATE

MVNOの深イイ話:「技適」の話をあらためて整理する (1/3)

SIMロックフリー端末を選ぶ際に、必ずチェックしていただきたい項目として「技適マーク」があります。そもそも技適マークとは何を示しているのでしょうか。法令の話を交えて説明します。

[佐々木太志,ITmedia]

SIMロックフリースマホにも必要な「技適マーク」

 SIMロックフリー端末を選ぶ際に、必ずチェックしていただきたい項目として「技適マーク」があります。技適マークとは何かご存じない方であっても、記号を見れば「あれ、どこかで見たことが…?」と思っていただけるかもしれません。今回は、SIMロックフリースマートフォンを選ぶ際に避けて通ることができない技適マークについて、ご説明しようと思います。

技適 現在の技適マーク。総務省のWebサイトから

実は2種類ある「技適」

 技適マークとは、「技適」という略称で呼ばれる、よく似た名前の2つ制度によって公的な認証を受けたことを示すために、端末へのシール貼付、もしくは画面表示にて示されているマークです。

  1. 電気通信事業法に基づく「技術基準適合認定
  2. 電波法に基づく「技術基準適合証明

 スマートフォンの技適マークをよく見ると、2つの数字列が確認できると思います。このうち、頭に「T」が付くのが電気通信事業法に基づく技術基準適合認定を示し、頭に「R」が付くものが電波法に基づく技術基準適合証明を示します。

技適 iPhone 7 Plusに記載されている技適マーク。マークの右に、頭がTの認証番号(技術基準適合認定)と、頭がRの認証番号(技術基準適合証明)が記載されている

 このうち、電気通信事業法に基づく技術基準適合認定(頭がTの認証番号)は、電気通信事業者の設備に接続して良い端末であると技術的に認証された電気通信機器であることを示すもので、携帯電話の他、例えばアナログ電話機やファクスなどさまざまな通信機器が対象となります。

 この技術基準適合認定を取得していない端末は、電気通信事業者の通信設備や通信サービスに、混信や通信不能などの影響を与えてしまう恐れがあります。このような機器を日本国内で使うことは、法令で禁止はされていないのですが、各電気通信事業者の約款(契約)において特別の義務が課せられている場合があります。

 例えばNTT東日本の電話サービス契約約款では、海外で購入した電話機など、技術基準適合認定の認証を受けていない機器を利用する場合には「当社所定の書面により接続の請求を」しなければならないことになっています。

 もう1つの、電波法に基づく技術基準適合証明(頭がRの認証番号)は、電波を発する比較的小規模な無線機器に対し適用されるものとなり、例えば携帯電話の他、タクシー無線や船舶無線、アマチュア無線などが対象となっています。

 電気通信事業法に基づく「技術基準適合認定」の方が、必ずしも未認証の端末を日本国内で使うことまでは禁止してはいないのに対し、電波法に基づく技術基準適合証明は、未認証の無線機器を日本国内で使うことが法令で禁止されるという、より厳しい制度となっています。

 日本で販売されているSIMロックフリースマートフォンを含む携帯電話は、これら2つの認証をどちらも取得していることが多いため、技適マークには、頭がTのもの、頭がRのものの2つの認証番号が記載されていることが当然となっています。

「技術基準適合証明」とは

 今回は、より厳しい制度である、電波法に基づく「技術基準適合証明」を詳しく見ていきましょう。

 技術基準適合証明を取得していない無線機器を使用することが禁止されているのは、どういう理由からなのでしょうか? 

 電線の中に電気信号が閉じ込められている有線通信や、光ファイバーの中にレーザー光が閉じ込められている光通信と異なり、四方に拡散していく無線の特性として、許可されていない周波数の電波をみだりに発信すると、他の電波と混信してしまい、その影響が広範囲に及び、かつ被害が甚大になる恐れがあります。

 そのため、無線機器(無線局)は、許可されている周波数や出力以外の電波を出すことがないよう、検査に合格し無線局免許を受ける必要があると厳しく電波法で定められています。この無線局免許は携帯電話でも例外ではありません。

 しかし、既に国内に1億6千万台を超える携帯電話が存在する中、1台1台の携帯電話を検査し無線局免許を交付するというのはちょっと非現実的です。

 そのため、技術基準適合証明を取得している携帯電話(=特定無線局)に限り、キャリアが包括的に無線局免許を取得できる規定が設けられています(電波法第27条の2)。つまり、技術基準適合証明を取得していない携帯電話端末をもし国内で利用すると、無線局免許を受けていない無線設備により電波を発することになってしまうため、利用してはダメということになります。

 携帯電話の包括免許が適用されうるのは、通信相手となる基地局を運用しているキャリア(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク等)で、MVNOは含まれません。ただ、もしMVNOのSIMカードをスマートフォンに挿して利用している場合は、そのMVNOにSIMカードを提供しているキャリア(厳密には、そのSIMカードで接続可能な基地局を運用しているキャリア)の包括免許によりカバーされるため、電波を出しても良いということになります。

 また、無線局をみだりに操作して社会を混乱させることがないよう、電波法では無線局を操作できる人に対する免許制度も定義しています。最近ではあまり流行していないかもしれませんが、筆者が子供の頃にはアマチュア無線を趣味にしている友人が何人もいました。このアマチュア無線を使うためには、電話級、電信級(※)などの「アマチュア無線技士」の国家試験に合格する必要がありました(※現在は第4級、第3級に改称)。これが無線局を操作できる人に対する免許(無線従事者免許)となります(電波法第40条、第41条)。

 では携帯電話ではどうかというと、携帯電話を使うため試験を受けさせるというのはちょっと非現実的ですから、包括免許の対象となっている端末(特定無線局)については、無線従事者の免許がなくとも誰でも操作することが法令で許されています(電波法第39条、電波法施行規則第33条第2項)。つまり携帯電話の利用に試験や免許は要らない、ということになっているのですが、これも技術基準適合証明を取得した携帯電話であることが条件となります。

 このように、携帯電話には利用者利便性のために電波法の中での、いわば特例的な扱いが設けられているのですが、その「特例」を受けられる端末を定義し、電波環境の安心を技術的に担保している仕組みこそが技術基準適合証明、ということになります。

技適
       1|2|3 次のページへ

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

この記事が気に入ったら
ITmedia Mobile に「いいね!」しよう