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» 2009年09月17日 11時00分 UPDATE

山谷剛史の「アジアン・アイティー」:“通話料前払いで”PCを買う中国のおじさん (1/2)

定額プランを契約して100円PCを買いましょー、とは2008年の日本。なんと、2009年の中国に行くと同じ風景に遭遇するという。で、でじゃぶっ。

[山谷剛史,ITmedia]

「安いが一番!」は中国のおじさんも同じだった

 2009年の中国電脳街はどことなく活気がない。中国でも電脳街があるような大きな都市に住む人たちには、すでにPCが行き渡り、一度購入したPCは修理屋に持ち込んで末永く愛用するのが中国流なので、買い換えサイクルはインテルが推奨する3年間よりずっとずっと長い(このあたりの事情は「壊れたら買う、じゃなくて、直す!」な中国の“デジモノ修理屋”稼業を参照のこと)。

 また、この連載でも、「神舟」が導く中国“激安”PC市場で中国のPC市場で起こっている激安事情を紹介したが、PCメーカーの値下げ競争も2009にはほぼ終息し、いま、中国のPCメーカーは一体型PCなどでデザインで競うようになっている。

kn_yamaya3g_01.jpg 3Gをアピールする中国移動キャリアショップ

 このように、価格からPCの魅力で競い始めた中国のPC市場で、携帯電話事業者による「ノートPCやNetbookと3Gデータカードを組み合わせた安売り商法」が本格化している。日本では、“100円PC”というキャッチコピーでNetbookの普及に貢献した手法が、中国でも広がり始めたようだ。日本では定額プランを一定期間契約することでノートPCやNetbookが安価で入手できたが、中国では、携帯電話料金は前払いが基本なので、この商法でも日本円にして数万円分を前払いすれば、USBデータアダプタや3Gカードを内蔵したNetbookが高い値引率で購入できたり、場合によっては無料でもらえたりする。

 例えば、中国の携帯電話事業者の大手で最も積極的にTD-SCDMA方式を推進している「中国移動」(China Mobile)が行っているキャンペーンでは、2100元(約3万円)の携帯電話代とデータ通信代を前払いすることで、デルの「Inspiron Mini 10」など対象となる6機種を2100元引きの価格で販売するほか、3800元で通話料とデータ通信料を前払いすると、レノボの「M10W」(IdeaPad S10シリーズ相当)を無料でもらえる。3G対応USBデータアダプタも、720〜1200元(1万円〜1万7000円弱)のデータ通信料を前払いすれば無料だ。中国移動のUSBデータアダプタはTD-SCDMA方式だけでなく、中国の奥地を含めた世界のほとんどで使えるGSM方式もサポートしている。

 ただし、このキャンペーンでは割り引かれた分がキャッシュバックで戻ってくることに注意しなければならない。購入した製品によるが、6〜20カ月に渡ってキャッシュバックされる(最短でも6〜20カ月契約しないと恩恵がフルに受けられない仕組みになっている)。旅行で中国に渡る場合は特に注意が必要だ。

 W-CDMA方式を採用する「中国聯通」(China Unicom)やCDMA 2000方式を採用する「中国電信」(China Telecom)も似たようなキャンペーンを行っている。中国電信では、電話代を前払いすることで、その額とほぼ同額の携帯電話やNetbookが購入できる商品券がもらえる(ただし、購入できるのは中国電信が指定するモデルに限る)。

kn_yamaya3g_07.jpgkn_yamaya3g_08.jpg 中国移動の3Gキャンペーンで購入できるNetbookと価格のリスト(写真=左)。中国電信では「Lenovo」ならぬ「lenvoo」という謎のメーカーのNetbookを提供する

kn_yamaya3g_09.jpgkn_yamaya3g_10.jpg 中国電信で扱う万利達のNetbook(写真=左)とデータアダプタ(写真=右)。中国電信でサポートするのはCDMA 2000を利用したデータ通信になる

 このように、中国の携帯電話事業企業が進めているキャンペーンでは、NetbookやノートPCを購入したいユーザーに対する価格的な訴求力がかなり強い。ただ、中国の個人向けPCは娯楽用途で使われることがほとんどで、DVD再生は必須になる。ビジネスのためにPCを持っているユーザーの比率が高い空港であっても、搭乗を待つPCユーザーは、ビジネスマンといえどDVD-Videoばかり見ている。

 このような事情もあって、1スピンドルのNetbookでは中国のPCユーザーに訴求できない。知り合いの(中国では)古株のノートPCユーザーも「3Gのデータ通信は利用したいけど、Netbookじゃ持っているノートPCよりスペックが低いからいらない。お金がたまってからUSBデータアダプタを買うよ」とキャンペーンには否定的な意見を述べていた。

 インターネットを利用するならNetbookで十分では?と思うのだが、中国では若者向けのオンラインゲームやポータルサイト“だけ”が充実しているため、都市部だ地方だろうとインターネットを利用するのは若い世代に極端なほど偏っている。電脳街を訪れるのも若者ばかりだ。

kn_yamaya3g_02.jpg Netbookの調子がおかしいと中国移動のキャリアショップで相談するおじさん

 ただ、3Gキャンペーンに参加しているのは電脳街のPCショップでもPCコーナーのある家電量販店でもなく、携帯電話のキャリアショップということもあって、意外な効果が出ているという。3Gキャンペーンそのものは中国の大都市や内陸の地方都市まで、それこそ中国全土にある膨大な数の販売店で行っている。そのおかげもあって、電脳街や電器屋のPCコーナーに足を踏み入れない中高年の消費者もPCに触れることになる。筆者もいくつかのキャリアショップで、3GとNetbookの説明を聞いているおじさんや、初歩的なWindowsのエラーがでるNetbookを持ち込んで「壊れて動かないんだよ」と修理をお願いするおじさんを目撃した。

 このように、携帯電話事業者が進める3Gキャンペーンは、既存のPCユーザーを自社のデータ通信に取り込むというより、今までPCに興味を持たなかった中高年層の発掘という意外な効果を発揮したといえる。

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