スマートフォンをモバイルWi-Fiルーター化して使う「テザリング」の対応機種が増加しており、手軽に使える環境が整ってきた。最近は高速通信に対応したスマートフォンも増えており、さらに利用シーンが広がりそうだ。ただし通信速度や料金体系は各社で大きく異なり、「実効速度はどの程度か」「バッテリーの持ちはどうか」などの疑問もある。そこで各社のテザリング対応スマートフォンの料金、通信速度、スタミナなどを比較していきたい。前編では基本スペックと料金について触れる。
日本で発売されているスマートフォンで現在テザリングを利用できるのは、NTTドコモのFOMAとXiスマートフォン、auのWiMAXスマートフォン、イー・モバイルのスマートフォンだ。今回はドコモの「GALAXY S II SC-02C」と「GALAXY S II LTE SC-03D」、auの「GALAXY S II WiMAX ISW11SC」(いずれもSamsung電子製)、イー・モバイルの「Dell Streak Pro(GS01)」(DELL製)の計4機種でテザリング機能を比較する。まず第1回でテザリング時の主な公式スペックと料金を比較し、以下に主な違いをまとめた。
キャリア | NTTドコモ(FOMA) | NTTドコモ(Xi) | au(+WiMAX) | イー・モバイル |
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機種 | GALAXY S II SC-02C | GALAXY S II LTE SC-03D | GALAXY S II WiMAX ISW11SC | Dell Streak Pro GS01 |
端末代(新規契約) | 2万160円(月々サポート適用) | 4200円(月々サポート適用 | 1万80円(毎月割適用) | 3万8500円(シンプルにねん アシスト1600適用) |
通信規格 | W-CDMA/HSPA | W-CDMA/HSPA/LTE | EV-DO Rev.A/WiMAX | W-CDMA/HSPA |
3G通信速度(最大) | 下り14Mbps/上り5.7Mbps | 下り14Mbps/上り5.7Mbps | 下り3.1Mbps/上り1.8Mbps | 下り14Mbps/上り5.8Mbps |
高速通信 通信速度(最大) | なし | 下り75(37.5)Mbps/上り25(12.5)Mbps | 下り40Mbps/上り15.4Mbps | なし |
ワンタッチで利用 | ×(設定から) | ×(設定から) | ○(通知バー、ウィジェットから) | ○(ウィジェットから) |
テザリング同時接続台数 | 5台 | 8台 | 8台 | 5台 |
ネット接続料(ISP代) | spモード月額315円 | spモード月額315円 | IS NET 月額315円 +WiMAX 月額525円 |
EMnet 月額315円 |
パケット定額料金上限(フラット型サービス) | パケ・ホーダイ フラット月額5460〜8190円 | Xiパケ・ホーダイ フラット月額5985円 | ISフラット 月額5460円 | スマートプラン シンプルにねん月額3480円 |
24か月のトータルコスト(フラット型サービス) | 15万8760〜22万4280円 | 15万150円 | 16万230円 | 12万9580円 |
パケット定額料金上限(2段階型サービス) | パケ・ホーダイ ダブル2 月額2100〜5985〜8190円 | Xiパケ・ホーダイ ダブル月額2100〜6510円 | ダブル定額 月額2100〜5985円 | スマートプランライト シンプルにねん 月額580〜4380円 |
24か月のトータルコスト(2段階型サービス) | 7万8120〜17万1360〜22万4280円 | 6万2160〜16万2750円 | 7万9590〜17万2830円 | 5万9980〜15万1180円 |
備考 | ・月額5985円までは1パケット0.0525円、以降は0.021円になる。 | ・2012年10月以降7GB超過後128kbpsになる。別途申込みで2GBごと2625円。 ・Xiスタートキャンペーン2(9月30日まで)により、上限1050円引き。 |
・+WiMAXの月額525円は,購入月と翌月は無料。 | ・最大25カ月の月額割を適用。 |
ドコモのFOMA(3G)スマートフォンのSC-02Cは、この中で発売が最も古い機種だ。テザリングの同時接続台数は5台で、SC-03Dの8台と比べると若干少ない。ただしFOMAのみに対応している他のスマートフォンでも、例えば「Xperia acro HD SO-03D」や「ARROWS μ F-07D」などの同時接続台数は8台なので、通信方式というよりは機種によって接続台数が異なるといえる。
Xiに対応しているSC-03DはSC-02Cと同じく3Gエリアはもちろん、最大で75Mbpsという高速通信のエリアで使えるのがウリとなる。ただし下り75Mbps/上り25Mbpsのエリアは一部の屋内のみなので、多くのXiのエリアは下り最大37.5Mbps/上り最大12.5Mbpsとなる。表にもあるように「高速通信のXiだがFOMAのテザリングよりも安い」ことがポイント。上限を見るとSC-03Dの方がテザリングは安く済む(詳しくは後述)。
WiMAX対応のISW11SCは下り最大40Mbpsの通信が可能。全国政令指定都市・特別区の実人口カバー率95%というエリアの広さもWiMAXの魅力だ。ただしISW11SCはWIN HIGH SPEED(下り最大9.2Mbps/上り最大5.5Mbps)には対応しておらず、WiMAX非対応エリア(3G)での通信は下り最大3.1Mbps/上り最大1.8Mbpsとなる。auのWiMAX搭載スマートフォンでは月額525円の「+WiMAX」を適用する形になるが、WiMAXに接続しなくてもよい。WiMAXに接続しなければ月額525円は発生しないので、高速通信を使わなければ安く済む。逆にWiMAXを使うときでも525円を追加するだけでよい(詳しくは後述)。また、+WiMAXの月額525円は、端末購入月と翌月の2カ月間は無料となる(WiMAXスマホからWiMAXスマホに機種変更した場合も同様)。ISW11SCでは通知バーやウィジェットのアイコンをタップするだけでWiMAXやテザリングをオンにできるので使い勝手もよい。
イー・モバイルのGS01は、高速通信の「EMOBILE LTE」や下り最大42Mbpsの「EMOBAILE G4」には対応しておらず、下り最大14Mbps/上り最大5.8Mbpsの通信となる。同時接続台数は5台で、SC-03DやISW11SCと比べると少なめだが、接続台数重視なら同時接続8台の「GS02」(Huawei製)を検討してみるといいだろう。イー・モバイルのスマートフォンではおなじみの「Pocket WiFi」ウィジェットをホーム画面に用意しているので、これをタップするだけでテザリングが有効になる。
続いて料金面を見ていこう。今回はパケット定額のテザリング使用時の料金を比較した。端末代は5月上旬の都内家電量販店の新規契約時の価格を表記している。各社には一定額のフラット型と2段階型のサービスがあるので、両方の主なサービスと、2012年5月から24カ月使用したと想定した場合の端末代、インターネット接続料を含んだ金額を比較している。なお、ドコモでは「月々サポート」の適用を想定しているため、適用条件となるパケ・ホーダイ フラットとパケ・ホーダイ ダブル2利用時の料金を掲載し、下限額の安い「パケ・ホーダイ ダブル」などは考慮していない。
3社を比較すると、イー・モバイルがフラット型と2段階型どちらのサービスを利用した場合でも安い。特にフラット型の「スマートプラン シンプルにねん」では、2位のSC-03Dよりも約2万円、一番高いSC-02Cと比べると約9万5000円も安い。なお、端末代は頭金の100円+アシスト代1600円×24か月分の合計とした。アシスト1600を使わずに一括でも購入できるが、その場合は4万4840円と高くなるので注意しよう。また、イー・モバイルでは「スマートプラン」または「スマートプランライト」に「シンプルにねん」+「EMnet」を契約していると、「月額割」が適用されるのもお得だ。フラット型のスマートプランでは月額最大1100円割引、2段階型のスマートプランライトでは月最大600円割引となる。
続いて安いのがドコモのXiだ。Xiの定額サービスはテザリング時に追加料金が発生しない。そのため通信速度の遅いFOMAの定額サービスより上限額が安くて済む。しかも現在は「Xiスタートキャンペーン2」が実施されているので、9月30日までのパケットの上限額は月1050円割引となる。そのため高速通信の方が安いという状況が生まれている。今回の計算でもパケット定額上限の5か月分(2012年5〜9月)は1050円引き×5としている。フラット型サービスでトータルコストを計算すると、イー・モバイルのGS01より2万円ほど高いが、2段階型で比較するとその差が1万1570円に縮まる。「高速通信を使える代わりにやや料金が高い」という位置付けだ。速度重視ならこちらの方がいいだろう。なお、2012年10月以降は、7Gバイト超過後の速度が128kbpsとなるか、2Gバイトごとに2625円の支払いとなる。
auのISW11SCはXiと比べるとフラット型と2段階型どちらのサービスも2年間で約1万円ほど高くなるが、1か月WiMAXを一切使わなければ+WiMAXの月額525円が発生しない(ただし1度でもWiMAXで通信をすると月額525円が発生する)。高速通信を使いたい月だけ料金が発生する仕組みなので、使い方によってはトータルコストは若干下がるはずだ(仮に24か月使わなければ1万2600円引かれる)。また、WiMAX/3Gでテザリングをする場合にも、Xiスマホと同じく追加料金が発生しないので、Xiよりもさらにヘビーユーザー向きともいえる。なお、毎月割の適用条件は「ISフラット」と「ダブル定額」への契約であるため、2段階型サービスでは「ダブル定額スーパーライト」などは考慮していない。
最後にドコモのFOMAの定額サービスについて。通常のスマートフォンのパケット定額では、フラット型の「パケ・ホーダイ フラット」は月5460円、2段階の「パケ・ホーダイ ダブル2」が月2100〜5985円だが、テザリング使用時は上限が月8190円となる。以前は1万395円だったのでこれでも安くはなっているが、Xiや他社サービスと比べると高いので、テザリングをコンスタントに使いたい人にはオススメできない。またこれはドコモの施策も関連しているだろうが、SC-02Cの端末代が2万160円でSC-03Dより高いのも残念な点(端末価格が同じでもコストはFOMAの方が高いが)。なお、月額8190円までの1パケットあたりの料金は0.021円だが、テザリングでは送受信するパケット量が多いことが予想されるのですぐに上限に達する可能性が高い。
このように「テザリング利用時」の料金を比較すると、イー・モバイル有利という結果となった。今回は基本料金と通話料金は考慮していないので、通話の頻度や使用スタイルによっては結果が変わる可能性がある。
後編では通信速度とテザリングの連続使用時間を比較する。
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