さて、Microsoftに話を戻そう。同社は2016年末にQualcommのSnapdragonプロセッサ上でフルバージョンのWindows 10が動作するデバイスを2017年中に投入する計画を発表しているが、今回も同様に、QualcommのQualcomm Centriq 2400プラットフォーム上でMicrosoftのサーバ向けソフトウェアを動作させる計画だ。
Qualcommの事業部門であるQualcomm Datacenter Technologies(QDT)は過去数年にわたってMicrosoftとARMサーバの可能性について研究開発を続けており、マザーボードの開発などでプロジェクトに参加しているCaviumとともに、マザーボードからファームウェア、OS、コンパイラ、各種ツール、CoreCLRなどを用意する。
動作するOSもWindows Serverを同プラットフォーム向けに最適化したもので、48コアの1UサーバのシステムはOCPならびにProject Olympusに準拠している。システムの詳細については、OCPがYouTube上にMicrosoftの基調講演の模様をアップロードしているので、興味のある方は確認していただきたい。
なおQualcommの説明によれば、このProject Olympusで動作するWindows Server on ARMは次世代のクラウドサービスでの利用を想定しているものの、現状ではまだMicrosoftの社内データセンターでの内部利用にとどまるという。
またBloombergが本件を伝えた記事でも、米MicrosoftでAzureクラウド部門担当バイスプレジデントのJason Zander氏がインタビューの中で「まだ製品化には至っておらず、あくまで次の論理的なステップにすぎない」と念を押している。
つまり、Windows Server for ARMといったソフトウェアを販売したり、Azureで選択可能なインスタンスにARMサーバが出現するといった一般向けの提供は行わず、当面は研究開発フェーズが続くと考えられる。
とはいえ、長年にわたって水面下で研究開発していたものを、あえてこのタイミングで正式に発表したことには相応の意味があるはずだ。今後MicrosoftはこのシステムをWindows Serverのシステムとは直接リンクしないサービス、例えば検索やストレージ、一部アプリケーションサービスといった用途で活用していくだろう。
また、MicrosoftはOCPでの発表の一部として、米NVIDIAとの提携による「AI分野でのProject OlympusにおけるNVIDIA GPUの活用」も明らかにしている。恐らくは機械学習やデータマイニング分野での活用も視野に入れているはずだ。
一方で、Windows Serverプラットフォームで動作するアプリケーション群の多くは既存のx86アーキテクチャの延長線上にある。今後企業システムのクラウドへのシフトや利用するアプリケーションの傾向が変化することで、アーキテクチャに対するニーズも変化してくる可能性がある。
IDCの調査報告にもあるように、2017年はちょうどその端境期になろうとしている。Microsoftはユーザーのサービス利用動向を見極めつつ、今後数年で変化していくトレンドを見据え、このタイミングでの発表を決めたのではないだろうか。
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