先週、多機能なBluetoothイヤフォンの話で、「スマートスピーカーは過渡期的な製品カテゴリーなのかも」と書きました。無線イヤフォンを違和感なく着けっぱなしにできれば、家中にスマートスピーカーを置かなくても、いつでもどこでも音声アシスタントにお願いができるので、その方が便利かもしれません。それに、返事が部屋中に聞こえるより、自分の耳にだけ返ってくる方が同居人がいる場合は迷惑がかからないし。
でも、ディスプレイ付きスマートスピーカー、Googleが定義するところの「スマートディスプレイ」は、しばらく生き残ると思います。
スマートディスプレイには、何といっても無線イヤフォンにはできない「情報を画像(映像)で表示する」という強みがあるからです。例えばタイマーだって、画面であと何秒かが分かるのは、使ってみると意外と便利です。かけっぱなしにできるARメガネが普及するまでは、これは便利です。
というわけで、2019年振り返りの第2弾は「スマートディスプレイ」についてです。
Googleがスマートディスプレイを発表したのは、2018年1月のCESでのことでした。Amazonは一足先に円形ディスプレイ付きのスマートスピーカー「Echo Spot」を販売していましたが、本格的なのは日本で2018年12月に発売した10.1型ディスプレイの「Echo Show」からと言えます。Amazonはその後、2019年6月に5.5型ディスプレイの「Echo Show 5」も発売しました。
Googleは2019年6月に7型ディスプレイの「Google Nest Hub」を、11月に10型ディスプレイの「Google Nest Hub Max」を発売しました。2019年は日本のスマートディスプレイ元年と言っていいでしょう。
一番安いEcho Show 5でも9980円、Nest Hubは1万5400円、Nest Hub Maxは2万8050円と、気軽に買える値段ではありませんが、今後価格はダウンして性能や機能はアップしていくでしょう。
Echo Show 5、Google Nest Hub、Google Nest Hub Maxを使ってみて、便利だと思ったことをご紹介します。
タイマーが便利なことは既に書きましたが、天気予報や電話番号、単位換算、レシピなどは耳で聞くより目で見たいものです。スマートフォンでもいいのですが、スマートディスプレイはハンズフリーで表示できるのが便利。スマートフォンより大きく表示できるし。使っていない間、時計にしておけるのも意外と役に立っています。実際うちのEcho Spotはデジタル時計としてのみ動いています。
うちはスマートランプしか使っていませんが、いろんなスマート家電の操作を画面でもできます。もちろんスマートスピーカーでも、スマートフォンでも操作できますが、例えばNest Hubを使ったスマートランプ「Philips Hue」の明るさ調節は気に入ってます。
昔、どこかの通信キャリアと契約したら無料でくれたデジタルフォトフレーム。つい最近まで夫の実家の食卓にありましたが、誰も写真を追加しないので20枚くらいの写真がずっと回転していましたっけ。
Nest Hubのフォトフレーム機能は、Googleフォト直結なので、設定によってはさっき撮影した写真がすぐに表示されることもあります。Googleが得意な顔認証で、「この人の写真は表示してね」と設定することも可能。実家に1台置いて、スマートフォンで撮影した孫の写真を自動的に見せるのにもいいと思います。
画面サイズが5.5型とか10型とかで小さいですが、動画を見ることができます。EchoシリーズならAmazonプライム・ビデオを、Nest HubシリーズならYouTubeを楽しめます。Nest Hubシリーズならキャストに対応するサービスをPCやスマートフォンなどから飛ばして見ることもできます。
Echo ShowもNest Hub Maxも、ディスプレイとカメラとマイクが付いているのでビデオ通話ができます。
Nest Hub Maxのカメラはなかなか優れもので、ビデオ通話中の人が移動するとそちらにズームするし、他の人がカメラの方を向くとその人も写るようにフォーカスを変えるんです(オートフレーミング)。マイクもちゃんと音を拾ってくれるし。
でも残念なお知らせが1つ。お互いに「Google Duo」のアカウントを持っていないと使えません。Google Duoのアカウントを持っている人、いますか? 私のまわりにはいません。iPhoneユーザーが多いこともあると思いますが。私はiPadも持ってるので、ビデオ通話はもっぱらAppleのFaceTimeになります。
Google Duoだっていいアプリなんですけど、SNSと同じで、自分がつながりたい人が同じアプリを使っていないと宝の持ち腐れです。GoogleがGoogle DuoにこだわらずにApple IDでも通話できるようにしてくれたらすてきなんですが。
カメラ付きのスマートディスプレイなら見守り(監視)カメラとしても使えます。Nest Hub Maxには「Nest Cam」(日本では未発売)で培った技術が入っています。Nest Camのように動画の録画とかはできませんが、リアルタイムでカメラに映った室内を見られます。カメラが127度と広角なので、うまく配置すると部屋全体が見えます。
外出先からスマートフォンのHomeアプリで家の中をチェック。ペットや子ども部屋の様子、離れて暮らす一人暮らしの親の見守りなどに使えます。子どもの場合は多分すぐ背面のカメラオフスイッチに気付いて勝手にオフにしちゃいそうですが。
わが家では一時的に、在宅勤務中の夫のデスクに置いてもらって、外出先から様子を見て、話しかけてみました。誰かがカメラの映像を見始めると、見られている方は画面上の緑のLEDが点滅するので、すぐ分かります。
まだスマートディスプレイ元年なので、まだこれからかな、というところもいろいろあります。どうやらもうすぐできるようになりそうなことや、できればいいのにと思ったことをご紹介します。
フォトフレームでGoogleフォトの「最近のハイライト」を表示していると、ときにはフォトフレーム向きではない写真が表示されることもあります。でも、将来的にはその写真が表示されている間に画面を長押しすると、右下に表示されるアイコンをタップすることで、非表示にできるようになりそうです(今はタップすると「すみません、よく分かりません」と言われます)。
Amazon製品なら「Ring」、Nest Hub Maxなら「Nest Hello」や「Nest Cam Outdoor」とネットで接続することで、ドアフォンとしても使えます。日本でも使えるようになってほしいものです。
Nest Hubシリーズにはレシピを検索して表示する機能がありますが、提携サイトが限られてます。そこが、いまひとつ私の好みと違うのです。普通にGoogleで検索して、検索結果のWebページを表示できると、好きなレシピサイトのレシピを表示して料理ができるのになぁと思います。
レシピは今のところ、同じWi-Fiネットワーク内のPCで表示したものをキッチンカウンターに置いたNest Hubにキャストしていますが、それだと直接スクロールできないので不便なのです。
Googleマップを表示できないのも意外です。
これは実は、Nest Hub Maxではできるのですが、コツが必要なのか、いまひとつうまくいきません。できるようになると、手を振るだけでストリーミング中の音楽やYouTubeの動画を一時停止したり再開したりできます。うまくいくと、何だか魔法使いになった気分で楽しいです。
スマートディスプレイはスマートホームハブとして便利、と書きましたが、今のところスマートホーム家電があまりそろっていません。エアコンは各社対応させてきているので、次に買い換えるときは対応製品にしたいと思っています。テレビは「Chromecast」をつなげればオン・オフはできますが、チャンネルは変えられません。録画を見ているときに「20秒飛ばして」とか音声で操作できるレコーダーは、まだない(と思います)。
家電製品が音声アシスタントに対応してくれないと、使えません。そして、対応させるのは家電メーカーにとってはかなりの手間です。しかもAlexaとSiriとGoogleアシスタントに対応させると、それぞれがアップデートする度に対応しなくちゃならなくて大変。ユーザーも、自分が使っている音声アシスタントに対応しているかが家電を買う際のチェックポイントの1つになります。
2020年後半には、これが解消されるかもしれません。Amazon、Apple、Googleがシームレスに接続するためのプロトコル開発に乗り出したのです。このプロトコルを採用するスマートホームは、3つのアシスタントのどれでも操作できるようになる、はず。「Project Connected Home over IP」というワーキンググループ名が示すように、IP(インターネットプロトコル)を使います。インターネットに直接接続するようになるわけではないのですが、こういう既存のプロトコルを使うことで、メッセージ送信のプロセスをシンプルにするのだそうです。
今のところ、公式サイトを読んでも、どこまでシームレスになるのかはよく分かりませんが、少なくとも家電メーカーはこれまでのように3つのアシスタントに個別に対応する必要はなくなるので、スマート家電を作りやすくなるでしょう。
一家に1台(以上)スマートディスプレイを常備する時代が来るでしょうか? 2020年にさらなる動きがあることに期待します。
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