RSS

連載

神尾寿のMobile+Views:国内100万台突破も視野に――存在感を増すiPhoneのエコシステム(中編)

iPhone 3Gのエコシステムを考える上でAppStoreと並んで重要なのが、「Dockコネクタ」の存在だ。グローバルでの普及を重視してインタフェースの形状や仕様を変えなかったことが奏功し、カーオーディオやホームオーディオ分野で巨大なエコシステムを構築。今夏に登場するiPhone OS 3.0が、エコシステムの広がりを加速させ、幅広い分野でのリアル連携が実現すると予想される。

 グローバル市場での急成長を背景に、日本市場でも存在感を増すiPhone 3G。わずか9カ月間でアプリケーションのダウンロード数が10億の大台を突破し、日本市場でも着実にiPhone OSのプラットフォーム規模が拡大している(記事の前編参照)。

 iPhoneのエコシステムはなぜ多くの人々の心をとらえ、急速に成長しているのか。また、日本のモバイルICT産業は、iPhoneエコシステムとどう向き合うべきか。前編に引き続き、それらの点について考えていきたい。

iPodで培った巨大なエコシステム

Photo iPhone 3Gの本体下部にあるDockコネクタ

 iPhone/iPod touchのエコシステムを考える上で、AppStoreと並んで重要なのが、周辺機器とのインタフェースである「30ピン Dockコネクタ」の存在だ。これは本体下部に設けられており、2003年の第3世代iPodから採用された外部接続/充電用のインタフェースである。

 その後、AppleはiPod shuffle以外のiPodシリーズにDockコネクタを採用し続けており、iPhone 3GでもPCとの接続や外部スピーカーなど周辺機器との接続用に用意されている。

 現在、Appleが公式に発表している数字では、iPod/iPhone用のDockアクセサリーは全世界で5000種類以上が発売されている。

 特にカーオーディオやホームオーディオ分野での、iPod用Dockのエコシステムは巨大だ。例えば、北米で販売されるクルマのうち、35ブランドがiPodに対応。2008年に発売された新車に限れば約90%がDockによるオーディオ接続が可能になっていた。また日本市場に目を転じても、トヨタ自動車本田技研工業日産自動車など国内9メーカー、輸入車を含めれば20ブランドがDockコネクタによるiPod接続に対応済み。自動車やカーオーディオ業界では「新車のiPod(Dock)対応は必須装備」(自動車メーカー関係者)というところまで浸透している。

 ほかにも、ユニークな例として航空機でのDock対応がある。ユナイテッド航空やシンガポール航空では、Dockインタフェースを介して機内エンターテインメントシステムとiPhone 3G/iPodを接続するインテグレーション機能が用意されている。これを利用すると、座席のモニターでiPhone/iPod内の音楽や映像コンテンツを楽しめるのだ。

 こうしたiPod時代から築き上げた“Dockのエコシステム”は、一部の例外はあるものの、Appleがその互換性や単一性の維持に腐心し、着実に育ててきたものだ。日本の携帯電話やポータブルオーディオのように、キャリアやメーカー、世代ごとにインタフェースの形状や仕様をコロコロと変えるということをせず、グローバルでの普及を重視してきた結果、多くのパートナー企業の信頼を得た。それは歴史が古く、装備品の採用に保守的な自動車メーカーや航空会社にも採用されたことからも分かるだろう。彼らはDockの普遍性と継続性を認めて、Appleのエコシステムに加わったのだ。

Photo オーディオ分野ではスピーカーを始めとする多彩な製品がラインアップされる。写真はロジクールの「PF-300BK」(左)と「PF-450」(右)

iPhone OS 3.0で「Dockが開花」

Photo

 このように“Dockのエコシステム”はAppleにとって重要な資産になっているが、一方で、そもそものスタートがiPod用であったため、iPhone 3G向けのものとして見ると、「音楽と充電」に偏りすぎているのも確かだ。またiPod対応のDock接続周辺機器すべてが、iPhone 3Gに対応しているわけではない。AppStoreと比べれば、iPhoneにおけるDockの価値や影響力は今のところ大きくない。

 しかし、この状況は今夏投入される「iPhone OS 3.0」で一変するだろう。周知のとおり、iPhone OS 3.0で追加される約1000のAPIのうち、重要な機能強化ポイントになっているのが「Dockによる周辺機器との通信/制御」だからだ。しかも、このアップデートは全世界で約3700万台、国内でも100万台超となるiPhone/iPod touchに対して行われるため、すでに発売済みの端末で新たなDock接続機能が利用可能になる。一夜にして、iPhone/iPod touch向けの“周辺機器のエコシステム”の基礎が構築されるのだ。

 Appleのデモンストレーションでは、血圧計などヘルスケア機器との連携が紹介されていたが、ほかにも各種入出力デバイスやデジタル家電、カーナビゲーション連携など、Dockを通じてiPhoneと連携するデジタル機器や周辺機器が登場するだろう。

 筆者は、iPhone OS 3.0投入を契機に、iPhone/iPod touchの周辺機器市場が一気に拡大・急成長すると予測している。これは国外のみならず、国内市場でもだ。

 これまで携帯電話の周辺機器市場では世代間の互換性が乏しく、ユーザーの信頼も得られていなかったため、高額なアクセサリーや周辺機器の市場は今ひとつ盛り上がらなかった。しかしAppleのDockは、iPod時代から培った継続性と普遍性があるため、ユーザーが安心して周辺機器を買いやすい。さらに国内市場だけでなく、海外のiPhone市場にも進出できる。日本国内だけ、それもキャリアやメーカーによって接続・連携のための規格や仕様がバラバラで市場が分断されていた、日本の携帯電話市場とは構造が全く違うのだ。

 iPhone向け周辺機器にとどまらず、デジタル家電やデジタルカメラ、ヘルスケア機器、カーナビなど、iPhone OS 3.0を機に日本メーカーがDockのエコシステムに参加することで得られるチャンスとメリットは大きい。将来的にはMicrosoftやGoogleも、AppleのDockのような“ハードウェア連携のエコシステム”を構築するだろう。その時代に向けた準備としても、iPhone OS 3.0のDockに参加する意義はある。

著者プロフィール:神尾 寿(かみお・ひさし)

IT専門誌の契約記者、大手携帯電話会社での新ビジネスの企画やマーケティング業務を経て、1999年にジャーナリストとして独立。ICT技術の進歩にフォーカスしながら、それがもたらすビジネスやサービス、社会への影響を多角的に取材している。得意分野はモバイルICT(携帯ビジネス)、自動車/交通ビジネス、非接触ICと電子マネー。現在はジャーナリストのほか、IRIコマース&テクノロジー社の客員研究員。2008年から日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)選考委員、モバイル・プロジェクト・アワード選考委員などを勤めている。


Copyright© 2012 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

Special

FEATURES


仕事に役立つAndroidアプリはここでチェック!「仕事アプリナビ」
日々の仕事をサポートするAndroidアプリをカテゴリー別に紹介するサイト「仕事アプリナビ」がオープン。


特集:“位置情報連携”で進化する、モバイルサービスの今とこれから
ケータイへの搭載が本格化し始めたGPS機能が、モバイルサービスを新たなフェーズへと向かわせている。ユーザーが肌身離さず持っているケータイに位置情報が連携することでどんな新サービスが生まれ、それが人々の生活をどう変えていくのか。

Special

スマートフォン

「Android」「Windows Mobile」「iPhone」の
最新記事をピックアップ


Apple、iPad 3を3月第1週に披露か
Appleは最新のiPadを3月第1週のイベントで披露する計画という。(ロイター)

契約者数

現在の携帯契約数(1月末)
NTTドコモ 5971万0200
(2in1:30万8000)
au 3447万9000
ソフトバンク 2806万1900
(DN:2万4700)
イー・アクセス 380万0000
(12月末)
携帯累計 1億2605万1100
(イー・アクセス含む)
ウィルコムPHS 435万9200
携帯・PHS累計 1億3041万0300
(イー・アクセス含む)
UQコミュニケーションズ 188万3900

Web閲覧端末数/MNP利用状況

Web閲覧端末数
iモード/spモード 5168万0400
EZweb/ISNET 2816万8100
Yahoo!ケータイ 2152万9000
EMnet 非公開
累計 1億0137万7500
MNP利用状況(差し引き 1月末)
NTTドコモ −9万9300
au 5万3300
ソフトバンクモバイル 4万6000
イー・アクセス 非公開

Pick Up! ホワイトペーパー

  • ビデオ会議はパーソナル・タブレットと相互接続の時代へ
     従来のビデオ会議は、会議と名のつく通り会議室同士だけのために存在していました。 近年、ビデオのマーケットはビジュアルコミュニケーションという大きな括りとなり、パーソナル型やスマートフォン、タブレット端末でも活用されるようになりつつあります。 シスコシ...
  • スマートフォンのセキュリティ対策は本当に必要なのか
     スマートフォンやタブレットといったスマートデバイスの急速な普及に呼応するように、スマートデバイスを標的にしたマルウェアが多数発見されるようになった。だがこうしたマルウェアは脅威ではないと考えるセキュリティ専門家は少なくない。 ユーザー企業は、スマート...
  • “使いやすさ”が大幅に向上! 多様なIT資産を一元管理できる最新クライアント運用管理ツール
     ハードウェア/ソフトウェアのIT資産管理(Mac OSやLinux OSにも対応)、操作ログ管理、セキュリティポリシーの運用、クライアントのリモートメンテナンスなどを支援し、USBデバイスやネットワーク機器なども一元管理できる「SKYSEA Client View」。 同製品に搭載する各...
  • 技術者が見せる。Google Appsでの開発・実装例
     これまでにGBSに寄せられたグループウェア選択の際のお客様の注目点、ご要望から浮かびあがる2つのポイント「ワークフロー」「データ連携」。 Googles Apps(TM)は、これらにどのように応え、改善を実現したのか? 外部サービスの利用を最小限に絞り、Google Apps機能...
  • スマートフォン/タブレットの業務利用の新提案。簡単な設定で外出先から社内データベース照会が可能に。
     スマートフォンの業務活用方法としては、メールやグループウェアなどが一般的だが、販売・生産・経理などの社内の各システムの既存データベースを自由に社外から活用できる仕組みは多くはない。 Business4Mobileは、ツールの簡単な設定だけで、iPhone、iPad、Androidな...
  • イグアスが提供する災害・障害対策&スマートフォンソリューション
     「災害対策、『きちんと』ご対応済みですか?」◇IBMiの二重化によりダウンタイムを最小限に抑えるHAソリューション◇IBMiの遠隔へのバックアップを低コストで実現する災害対策ソリューション◇Windowsの二重化でダウンタイムを最小限に抑えるHAソリューション  「昨今...
  • クラウド時代におけるエンドユーザ目線によるWebサイトのパフォーマンス管理の必要性
    今日、顧客やビジネスパートナーとのやり取りをWebベースのアプリケーションインフラに実装している企業は増加している。これまで以上にインフラの階層やコンポーネントが増えるだけでなく、クラウドやCDNなど、データセンター外部のインフラとの連携も考慮すべき対象とな...
  • 自社に最適なグループウェアの選定ポイント
    市場には数多くのグループウェアが存在する。スケジュール管理やWebメール、ワークフローなどさまざまな機能が搭載され、現在ではASP形式で提供されたり、携帯電話/iPhoneなどのスマートフォンからもアクセス可能になるなど、その提供形態や利用シーンも多岐にわたる。企...
  • 安否確認、スマートフォン対応、変化し続けるユーザーニーズを解決する情報基盤とは?
     TechTargetジャパンの読者調査によると、企業における情報共有ツール利用の条件として、「エンドユーザーが使いやすい」「運用コストが安い」などが多く挙がった。前者の解決には、豊富が機能なのことはもちろんのこと、それらがユーザーにとって分かりやすい画面構成で...
  • 今すぐできる認証強化
     オンラインサービスの提供や、事業継続およびビジネス推進を目的としたリモートアクセスの提供が増加するなか、不正アクセスによる情報や金銭詐取が相次いで発生しており、認証強化が重要な課題となっている。 しかし、常に課題になるのは、セキュリティ強化と利便性の...