iPhoneは絶好調――孫社長は通信品質の改善を約束

» 2010年02月03日 09時30分 公開
[園部修,ITmedia]
Photo ソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏

 ソフトバンクは2月2日、2010年3月期第3四半期の決算を発表した。2009年4月から12月の累計売上高は前年同期比3.2%増の2兆453億円、営業利益は前年同期比33.4%増の3663億円を記録し、増収増益だった。決算説明会に登壇した代表取締役社長の孫正義氏は、同じ携帯電話事業を営むNTTドコモやKDDIが同じ第3四半期に減収減益決算と比較し、好調ぶりをアピールした。

 今回の決算では、9つの「過去最高」を達成した。経常利益、当期純利益、フリーキャッシュフロー、移動体通信事業の営業利益が、いずれも1995年3月期以降で初めて過去最高を達成。またEBITDAやヤフー等営業利益が6期連続で、連結営業利益が5期連続で、固定事業の営業利益が4期連続で、そして営業キャッシュフローが2期連続で過去最高を更新した。これにともない、純有利子負債は2008年12月末から約3700億円減少。ソフトバンクモバイルの借入残高は2010年1月末の時点で9867億円にまで減り、1兆円を切った。

 2011年3月期の営業利益は5000億円を予想。営業利益5000億円という金額は、ブルームバーグが予想した東京証券取引所に上場している2423社の営業利益予想に当てはめると、NTT、NTTドコモ、トヨタ自動車、国際石油開発帝石、KDDIに次ぐ第6位に相当する金額で、その勢いの強さを印象づけた。

PhotoPhotoPhoto 過去最高が9つも飛び出した好調な決算を発表

iPhoneの販売は対前年比数百パーセントの伸び

 ソフトバンクモバイルが中心となる移動体通信事業は、2009年1月から12月までの純増契約数が167万件と、2年連続で1位を獲得するなど、ソフトバンクの業績を牽引する。ARPU(ユーザー毎の平均月額収入)は4200円で、ドコモやKDDIの5470円よりも低いが、その前年同四半期比での増減額やデータARPUの増加額は3キャリア中でトップだった。

PhotoPhotoPhoto 純増契約数やARPUの増減額はKDDIやNTTドコモを上回った
Photo ARPUは底打ちして上昇傾向にある

 データARPUの向上に大きな役割を果たしているのが「iPhone 3GS」だ。調査会社のデータを元にソフトバンクが推計した、家電量販店における携帯電話販売台数ランキングでは、iPhone 3G(8Gバイト/16Gバイト)とiPhone 3GS(16Gバイト/32Gバイト)の4モデルの合計が圧倒的なまでの1位だったという。2位の低価格端末「830P」もかなりの台数が売れたようだが、iPhoneはその倍以上の数字を記録した。

Photo iPhoneはこの1年で最も売れたケータイだとアピール。ただしこの数字はiPhone 3GとiPhone 3GSの台数が加算されている

 「iPhoneは、ソフトバンクが国内販売を始めた当初、日本のユーザーになじまないと断定したり、日本では売れないとするメディアやアナリストの声があった。しかし、2009年に日本で1番売れたのはiPhoneだった。iPhoneはダントツに売れており、今も販売台数は右肩上がりで伸びている。もしかしたら、日本はiPhoneの売り上げの伸びが対前年比で世界一になっているかもしれない。対前年比で数百パーセントの伸びだ」(孫氏)

 1月から6月までのiPhone 3Gの販売台数と、それ以降のiPhone 3GSの販売台数を足して「国内でダントツ」とした点には違和感もあるが、いずれにせよiPhone 3GSの販売が好調であることは間違いない。

 また孫氏は、この日18億円の出資を発表したリアルタイムの映像配信サービスなどを提供する「Ustream」や、2009年末からツイートを始めた「Twitter」に触れ、「Web 2.0における新聞がTwitterだとすればTV局がUstream」とそれらが持つ可能性を高く評価し、その利用に最も適している端末がiPhoneであると胸を張った。

 「TwitterやUstreamなどが出てくると、ますますiPhoneでないといけない、iPhoneだからこそサクサク使える、ということを多くの人が感じるのではないか」(孫氏)

 一方、解約率は1.16%と他キャリアに比べて依然高い状態が続く。前年同四半期の0.91%から0.25ポイントも上昇した理由は、2年間の割賦販売を利用してケータイを購入したユーザーのうち、支払いが完了した契約の一部で解約が発生しているため。第2四半期からは0.08ポイント下がっており、世界的に見れば極めて低い数字ではあるものの、気になるところだ。この数字は、機種変更するよりも、解約して新規契約した方が契約時の特典が多い、“新規優遇”の契約形態の影響もあると考えられる。

旧来の端末は本当にガラパゴス化するのでは、と危惧

 説明会の質疑応答で、Androidについての見解を訪ねられた孫氏は、「Androidは優れたOSで、着実に勢力を拡大していくものと考えている。それに対しては高く評価している」と発言。ただ「リソースを360度に展開するのは戦略ではない。まずはiPhoneの1点に集中し、それからノウハウをほかの端末に広げていきたい」と話すように、今はiPhoneの拡販に努める考えだ。この春発表予定とされるAndroid端末への言及はなかった。

 孫氏のスマートフォン重視の姿勢は、質疑応答のやりとりの中でも明確に示された。「スマートフォンとしてのインテリジェンスを持ち得ない一般的な端末は、徐々に苦しい状況になっていくと思う。本当に“ガラパゴス化する”と危惧している」と話すように、ケータイの“スマートフォン化”は非常に重要視している。

 「iPhoneが時代の大きなトレンドの中軸に育ってきていることは間違いない。また、とにかくシンプルで安い端末が欲しいというニーズもしっかりある。一方、それらの中間に位置する端末は、“ガラパゴス化”して多品種少量生産という状況に陥り始めている。もちろんソフトバンクとしてはこうしたモデルも積極的に開発し、品ぞろえは継続して充実させていくが、お客様の嗜好が両極端になっている」(孫氏)

 ミッドレンジのケータイに代表される、中途半端なスペックしか持たないモデルは、ユーザーが選ばなくなっていると孫氏は指摘する。選ぶのはあくまでもユーザーだという言い方をしたが、「ユーザーが選ばない端末」=「売れない端末」であり、費用対効果が悪くなるこのセグメントのコストが削られていく可能性がある。ミッドレンジケータイは発注のロットが少なくなり、採算が合わなくなれば、結果的にメーカーがこのクラスの端末を作らなくなっていくことも考えられる。ソフトバンクモバイルの端末販売台数のかなりの部分をすでにiPhoneが占めているともいわれており、端末ラインアップの構成がどう変化していくのかは注視していく必要があるだろう。

Twitterで叱咤激励され、通信品質改善を決定

 このほか、多くのユーザーが依然として不満を感じているソフトバンクモバイルの通信品質については、改善すべく設備投資を増額することが明らかになった。

 孫氏はTwitter上で多くのユーザーから「電波をもっとつながるようにしてほしい」と要望されたことを受け、「こうした意見を真正面から受け止め、言い訳しないで頑張ろう、もっとしっかりとやらねばいけないと決意した。役員会でも経営会議でも真剣に議論している。最優先課題として、私自身陣頭指揮を執りながらこれからやっていく」と発言。2011年3月期には、3000億円規模で設備投資を積み増しする。

 最終的な設備投資額はまだ確定していないそうだが、新しいテクノロジー、新しい手法も含めて真剣に議論しているという。「必ずやり遂げたいと思っているので、我々の成果をぜひこれから見ていただきたい」(孫氏)

iPad、ウィルコム問題に関してはノーコメント

 1月27日に米Appleが発表したタブレット型端末「iPad」に関しては、端末の良さは評価したものの、3G版の提供可能性などについては一切「ノーコメント」で通した。否定や積極的にやりたいという発言がなかったということは、ソフトバンクモバイルが提供へ向けて着々と準備を進めている可能性が高い。

 また一部報道機関で報じられているウィルコム支援の可能性についても、「コメントする立場にはない」とした。

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