iPhoneやAndroid端末の登場で、KDDIのスマートフォンに対する取り組みが変わりつつある。ケータイ向けアプリについてキーパーソンがプレゼンテーションをする、Mobile World Congressの「App Planet」に、KDDI コンシューマ商品統括本部 オープンプラットフォーム部長の重野卓氏が登壇。「Growth of app market and new trend in Japan」と題し、auケータイでのアプリ市場のトレンドとスマートフォンの戦略を説明した。
重野氏によると、auケータイでの2009年時点のデータARPUは約2300円、1契約者あたりの有料コンテンツのダウンロード料は約590円となっており、これらは年々増加しているという。こうしたコンテンツ市場が成長し続けている背景には、安全性と柔軟性の高い「BREW」プラットフォームを採用していること、最新の技術を搭載した端末、最適なコンテンツを検索して勧めてもらえる仕組み、料金の回収代行サービスが寄与していると分析した。
BREWをベースにしたコンテンツとして同氏は、LISMO(Music)とLISMO(Book)、au Smart Sports、ナビゲーションアプリを挙げた。音楽コンテンツは「約90%のユーザーがケータイ経由でダウンロードし、PCからダウンロードするユーザーは少ない」という。電子書籍については「Kindle」の登場もあり、「市場が拡大している」と期待を寄せる。「電子書籍のダウンロード数はここ2年で約2.5倍増えている。ケータイの小さな画面でも、日本のユーザーは積極的に利用している」(重野氏)
「Run&Walk」をはじめとするau Smart Sportsのアプリも好調で、2008年初期のスタートから利用者は伸び続け、100万ユーザーを突破。他社に先駆けて開始した「EZナビウォーク」や「EZ助手席ナビ」などのナビゲーションアプリも、現在は300万ユーザーを突破しており、重野氏は好調ぶりをアピールした。
重野氏はスマートフォン市場の動向についても言及。日本市場ではスマートフォンの販売数が少なく、一般の音声端末を1台目、スマートフォンは仕事用に2台目として使っているユーザーが多いというのがこれまでの傾向といえるが、同氏は「iPhoneの登場でその状況が変化しつつある」と見ている。「多くのユーザーがiPhoneを2台目に使っているが、アプリ市場は拡大している」(重野氏)
KDDIがこれまでに発売したスマートフォンは「E30HT」のみ(2009年2月23日時点)で、法人を中心に提供してきた。だが、Android端末とWindows phoneを2010年6月以降に投入することを発表したとおり、今後は個人ユーザー向けにスマートフォンを発売する。
ではコンシューマーに受け入れられるスマートフォンとは何か。端末については「使いやすいユーザーインタフェースとデザインが重要。またグローバルな端末に日本独自の機能をミックスさせる必要もある」と重野氏は考える。
コンテンツについては、Android向けのアプリマーケットを開設する。「EZwebで10年間蓄積したノウハウを生かし、CP(コンテンツプロバイダー)にもメリットが生まれるよう、アプリを上手に勧める仕組みを作りたい」と重野氏は意気込む。実際、同社はスマートフォン向けの料金回収代行サービスや、CP向けのセキュリティチェック機能を8月以降に導入する予定だ。また、Androidマーケットには無数のアプリが存在するが、KDDIのマーケットで取り上げるアプリを絞る意向はなく、「海外のアプリも採り入れる」構えだ。
NTTドコモが2010年4月に開設予定のスマートフォン向けのポータルサイト「ドコモマーケット」では、AndroidだけでなくWindows phone向けのアプリも扱う予定。一方、KDDIのアプリマーケットで扱うのは当面はAndroidアプリのみで、「現時点でWindows phone向けアプリの紹介は考えていない」(重野氏)とのこと。端末をカスタマイズしやすいことから、個人ユーザー向けにはAndroid端末を訴求し、「FeliCaやワンセグの搭載も視野に入れている」という。
スマートフォンで遅れを取ったと言われているKDDIだが、「端末」と「アプリマーケット」でどこまで巻き返しを図れるか。次の一手に注目したい。
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