モバイルコンピューティング推進コンソーシアム(MCPC)は3月19日、「MCPCアワード」のグランプリと総務大臣賞、モバイルテクノロジー賞、モバイルビジネス賞、モバイルコンシューマー賞、モバイル中小企業賞を発表した。
MCPCアワードは、モバイルを取り入れた高度なシステムを構築し、成果を上げている企業や団体を表彰するイベント。8回目を数える今回は、応募数こそ例年より少ない25件にとどまったものの、「その内容は高度なものが多かった」とMCPC会長の安田靖彦氏は話す。寄せられた事例は、「業務効率化」「コスト削減効果」「売上拡大」「ユーザー満足度」「利便性」「モバイル技術活用度」の6項目から分析・評価され、10人の審査員が最終候補となる5つの事例を選定した。
最終候補に選ばれたのは次の事例だ。
5社のうち4社が通信モジュールを活用した事例となるなど、法人市場のトレンドといわれるM2Mビジネスの今後の広がりを予感させる候補が出そろった。
MCPC普及促進委員長でMCPCアワードの審査委員を務める武藤肇氏は、最終候補となった事例について「いずれも派手な技術こそ採用していないものの、モバイルを道具としてソリューションの中に埋め込み、世の中の役に立つような形で活用されていたのが特徴」と説明。「今年ほどもめた年はなかった」(同)という白熱した審査の結果、岡山県警察本部のPITシステムがグランプリと総務大臣賞を獲得した。
官公庁がグランプリを受賞するのはMCPCアワード初となる。システム開発を担当した岡山県警の平田豊氏は「これも治安維持に対する期待だと感じている。今後、警察においてモバイルはなくてはならない存在。しっかりと治安維持に励んでいきたい」と受賞の喜びを語った。
最後まで岡山県警とグランプリを競ったのが、自動車整備事業者 ロータス九州の事例だ。同社が開発した自動車整備用モバイルツール「LOSSO-9/EagleCatch」はKDDIの通信モジュールを搭載しており、整備する自動車から取得したデータをその場でセンターサーバに送信できる。センターサーバではECU情報が解析され、診断結果が整備工場に割り振られたPCやケータイに送られる仕組みだ。
データベースには全国の整備工場から集まった情報が蓄積され、整備工場間での共有が可能。これまでメカニック個人の技能に依存していた部分が共有できるのもメリットの1つだという。データベースには、現在、市場に存在しない車種別の故障傾向リストや走行距離別の故障傾向なども蓄積するとし、それをベースに顧客に予防整備の提案なども行う考えだ。
モバイルビジネス賞は、GPS対応の通信モジュールを貨物列車に搭載し、発車時刻の案内や徐行運転エリアの通知、速度の警告などを行えるようにする「PRANETS」システムを導入した日本貨物鉄道が受賞。モバイルパブリック賞は日本コカ・コーラ、モバイルテクノロジー賞は富士通が受賞した。
審査委員の武藤氏は講評で、これまでの受賞事例はとがった技術を採用していたり、これまでにない使い方をしていたケースが多かったが、今年の事例は技術的にはそれほど珍しいものを採用していたわけではなかったと振り返った。それは「モバイルが社会のインフラとして根付き始めた証」であり、今後は「現在実現している仕組みのサービスレイヤーの部分に、新しい仕掛けがどんどん入ってくる」と予測する。そうなると今後は、過去に受賞した事例が発展して再登場する可能性も大いにあるとし、新たな法人活用の広がりに期待を寄せた。
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