スマートパイプで“脱、土管”へ――Ericssonが示す、次世代モバイルネットワークの形Ericsson Innovation Forum 2011

» 2011年05月19日 17時16分 公開
[末岡洋子,ITmedia]
Photo Ericsson CTOのハカン・エリクソン氏

 モバイル通信機器最大手のEricssonが、米サンノゼでプレス向けのイベント「Ericsson Innovation Forum 2011」を開催した。

 モバイル通信の高速化が進み、通信機能を備えたデバイスが急増する中、Ericssonが今回のテーマに据えたのは「ネットワーク社会」。EricssonのCTOを務めるハカン・エリクソン(Hakan Eriksson)氏は、ネットワーク社会の実現に向けたEricssonの取り組みについて説明した。

 これまでモバイル通信は、“人が使う携帯電話”という形で普及してきたが、モジュールの普及に伴ってモノへの搭載が急増している。Ericssonは「2020年に500億台の機器がインターネットにつながる」と予想しており、携帯電話やPC、テレビ、ゲーム機から、家電製品、自動車まで、さまざまな“モノ”がネットにつながる社会を「ネットワーク社会」と定義している。

 さまざまなモノに通信機能が搭載されるネットワーク社会は、企業にもメリットをもたらすとエリクソン氏。タブレットを導入することで営業スタッフのフットワークが軽くなり、管理職もリアルタイムで必要なデータを得られるようになる――というのもその一例だ。これに、端末同士が通信するM2M(Machine to Machine)が加われば、「生産性の向上や業務効率の改善は計り知れない」という。

 Ericssonは、このネットワーク社会の基盤となるネットワークとその先にあるクラウドに注力していく方針。同社の主力事業であるネットワークでは、「スマートで拡張性が高く、高性能な“新世代のIPモビリティ”が重要になる」(エリクソン氏)とした。

 新世代のモバイルインフラが重要視される背景にあるのは、急激なトラフィックの増加だ。2010年、スマートフォンの出荷台数は約2億台に達し、データトラフィックは前年の3倍に急増している。データトラフィックは2010年末に音声を逆転しており、2016年には音声の約13倍になる見込みだという。

Photo データトラフィックの推移予測

 トラフィックの増加に対する対応策としては、よりキャパシティが大きく、周波数帯の利用効率が高い3Gや3.9Gへの移行が挙げられるが、全世界的に見ると次世代インフラへの移行は進んでいないのが現状だ。人口カバー率は2Gが85%で、3Gはいまだ35%にとどまる。3.9G(LTE)に至っては3%に過ぎない(2011年第1四半期時点)。

 このようにインフラ企業には、データトラフィックの爆発的な増加への対応が求められているわけだが、エリクソン氏は「1000倍のキャパシティ増への対応が求められたとしても、われわれは解決できる」と胸を張る。

 例えばHSPAとLTEは、W-CDMAに比べて10倍のキャパシティを実現できる。これに加え、周波数帯の利用効率の改善やピコ基地局の利用などによって解決できると見る。「必要なのは、マクロ基地局、ピコ基地局、Wi-Fiなど、異なるレイヤーを組み合わせる“ヘットネット”つまりヘテロジニアスネットワーク(Heterogeneous Network)だ」(エリクソン氏)

インテリジェントな「スマートパイプ」で“脱、土管”へ

 Ericssonが、これからのモバイルネットワークのあり方として提案するのが、ネットワークに付加価値をつけて提供する「スマートパイプ」だ。“単なる土管(パイプ)”とは一線を画すもので、ポリシー管理やセキュリティ、サービス管理などの「制御」、パーソナライゼーションや位置情報/プレゼンスなどの「体験」、コンテンツの最適化やモバイル広告などのビジネスモデルや用途に最適化する「効率と機能」という3つの要素をネットワークに持たせるというものだ。

 こうしたニーズに対応する製品としてEricssonは、ルーターの新製品「SSR」(Smart Services Router)を発表している。SSRはルーター機能だけでなく、アプリケーションプラットフォームの機能も備えており、Ericssonやサードパーティが開発したポリシーサーバーなどの機能を付加できる。コンテンツの最適化には、さきに提供を発表した米Akamai Technologiesとの連携が強みになるという。Akamaiが世界に持つコンテンツ配信技術を利用することで、ユーザーは動画などのコンテンツをストレスなく閲覧できるようになるからだ。

 クラウド分野では、サービスの提供やクラウドの構築、クラウド同士の接続に取り組んでおり、Ericssonと通信事業者で、スマートパイプを経由してエンドユーザーがクラウドサービスを利用できるようにしていく計画だ。

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