「これは売れる」――営業のプロが選んだ、5つのスマートデバイスソリューション

» 2011年07月28日 10時15分 公開
[後藤祥子,ITmedia]

 スマートデバイスは今や、企業の生産性を高めるためのツールとして欠かせない存在になりつつある。iPhoneやiPadが開拓した新たな市場にAndroidが進出し始め、業務に役立つさまざまなソリューションが登場。業務活用の幅も広がり、さらなる普及が見込まれている。

 スマートフォン向けソリューションへの取り組みでさきがけたのが、ソフトバンクモバイルだ。スマートデバイスブームの火付け役となったiPhoneやiPadを早い時期から法人向けに提案し、営業スタッフが自ら業務に活用することで提案力を強化。こうした取り組みが功を奏し、今や法人案件のほとんどがスマートデバイスの導入に関わるものになったという。

 この2月には、より幅広い業務や用途に対して的確な提案を行えるようにすべく、スマートデバイス向けソリューションの開発ベンダーを支援するパートナープログラム「SoftBank Solution Provider PREMIUM」を開始。4月には同プログラムの一環として、業務に役立つスマートデバイス向けソリューションを幅広く募集するコンテストを開始した。

 審査基準は(1)顧客企業の業務改革に貢献できるか(2)商談のきっかけを作りやすいか(3)導入しやすいか(4)商材としての質が高いか の4点。コンテストには100件を超える商材が寄せられ、これを全国のソフトバンクグループの営業スタッフが審査し、上位12件に絞り込んだ。この12の商材を40人の敏腕営業スタッフが審査し、5つの商材を最優秀賞に選出した。

最優秀賞
企業名 商材名 概要
アビームコンサルティング 営業力強化ソリューション 基幹システムと連携した電子カタログを実現
リコー RICOH TAMAGO Presenter 導入しやすいペーパーレス会議システム
コノル Drawon オフィスと現場の共同作業を支援
アイオン モバイル契約申込書システム 申し込み業務をペーパーレス化
NEC スマートフォン完全内線化ソリューション iPhoneが企業の内線電話に

 選ばれた商材は、審査基準をバランスよく満たしているというよりは、「何かの基準が突出しているものがほとんど」(コンテストを担当したソフトバンクモバイル プロダクト・マーケティング本部 法人プロダクトサービス統括部 サービス企画部パートナー企画課 課長の西澤久雄氏)という個性派ぞろい。西澤氏は、いずれの商材も導入企業の業務を新たな高みに導くものだと胸を張る。

 営業の現場スタッフのお墨付きをもらった5つのソリューションはどんなものなのか。コンテストを担当した西澤氏に聞いた。

電子カタログで在庫確認から発注まで、トレンド予測やレコメンドも

 アビームコンサルティングが提案する「営業力強化ソリューション」は、“基幹システムと連携した多機能電子カタログ”を実現するソリューションだ。

 iPadは電子カタログの閲覧用端末として注目を集めているが、同社の取り組みは、このiPad向け電子カタログにSAPの小売店向け基幹システムを連携させて在庫確認や発注処理、顧客へのレコメンド機能までを持たせてしまおうというもの。SAPの基幹システムには、トレンドや口コミの分析機能、顧客の購入履歴参照機能、店舗内の顧客動線を記録する機能などといった小売店向けのさまざまな機能が用意されている。こうしたデータをカタログと連携させることで、つねに最新情報を手元で確認できるようになり、それが接客の質の向上につながるというわけだ。

 「在庫状況の把握だけでなく、顧客と一緒に試着リストで服のきせかえを試したり、CRMシステムで購入履歴を参照しながら似合う色やコーディネートを提案したりと、商談の質を高められる」(西澤氏)。このシステムを導入することで小売店は、店員のスキルやセンス、知識だけに依存しない、最新の実データに基づいた接客が可能になるという。

Photo アビームコンサルティングの「営業力強化ソリューション」

iPad 2で契約申込書をデジタル化

 契約書は手書きのサインや各種証明書の写しが必要なことから、なかなかデジタル化が進んでいない。これをiPad 2を使ってデジタル化しようというのが、アイオンの「モバイル契約申込書システム」だ。

 紙の契約書をPDF化し、システムに読み込ませることで申込書のデジタル化が可能。任意のエリアを指定してテキスト入力や手書き入力に対応させられるほか、iPad 2のカメラで撮った証明書の写真や、ボイスレコーダーで録音した本人確認用の音声も契約書に添付できる。

 紙の契約書は現状、手書きのデータを入力し直すための手間やコストがかかっており、それらを効率化できるのがこのシステムの魅力だと西澤氏。ソフトバンクモバイルの契約書をiPadから入力するようになる日も、そう遠くないかもしれない。

Photo 入力の二度手間を省き、コスト削減にも貢献する「モバイル契約申込書システム」

ペーパーレス会議をもっと身近に

 リコーの「RICOH TAMAGO Presenter」は、最大10人まで無料で利用できるペーパーレス会議アプリ。親機として設定した1台のiPadがローカルクラウドのような役割を果たし、親機に入れた会議資料は、他のiPadが接続設定すると無線LAN経由で配信される。会議終了後にデータがiPadに残らないのも便利な点だ。

 会議のペーパーレス化は、iPadを導入した企業が高い関心を持ちながらも、必要なソリューションがそろえられず導入に至っていないケースも多いという。しかしRICOH TAMAGO Presenterを利用すれば、最大10人までという制限はあるものの、ファイルサーバや配信システムなどを用意することなく、無線LANに接続したiPadだけでペーパーレス会議を始められる。この導入ハードルの低さが審査員の間でも好評だったそうだ。

Photo 最大10人までのペーパーレス会議ができる無料アプリ「RICOH TAMAGO Presenter」。“紙を出す”コピー機で知られるリコーがペーパーレス化に取り組んだというユニークな事例

オフィスと現場の共同作業を支援

 現場とオフィスの共同作業を支援するのがコノルの「Drawon」。コノルは世界で累計150万ダウンロードを記録したiPadアプリ「黒板」を開発した企業。このアプリは、複数のユーザーが同じ黒板の上に絵や文字を書き込めるのが特徴で、この機能をビジネス向けに拡張したのがDrawonだ。

 サーバにアップロードした1つのデータ上に、複数人が同時に情報を書き込めるサービスで、同じ写真や図面を見ながら指示を出したり修正を加えたりするのに適している。

 遠隔から修理の方法を指示するような業務にも役立つと西澤氏。「Pad 2で現場の写真を撮ってオフィスのスタッフと共有すれば、オフィス側は現場の写真に書き込みを加えながら“このネジはここ”といった指示を出せる」(西澤氏)

Photo 同じ図版や写真に複数人が同時に情報を書き込める「Drawon」

iPhoneを企業の内線電話に

 iPhoneを企業の内線電話として利用可能にする無料のVoIPアプリ「UNIVERGE Smartphone clienT ST450」で受賞したのがNEC。このアプリをインストールし、簡単な設定を施すだけで、同社のSIPサーバ「UNIVERGE SV8500」の配下にあるiPhoneを内線電話として利用できるようになる。

 社内のWi-Fiのエリアで内線電話として利用でき、保留や転送にも対応。プレゼンスの確認機能やグループウェアとの連係機能は、今後実装する予定としている。

 同社の企業向けネットワーク製品は国内でトップシェアを獲得しているといい、広く普及しているネットワーク製品にiPhoneを対応させることで、業務の効率化を支援する。

Photo SIPサーバ「UNIVERGE SV8500」の配下にあるiPhoneを内線電話として使えるアプリを開発した

 西澤氏は、コンテストに寄せられたソリューションの数々から、スマートデバイスの法人活用が新たなフェーズに進みつつあることを実感したという。「“PCに変わるデバイスとして使う”というレベルから、“いかにビジネスの武器として使うか”を考えるレベルに変わってきた。寄せられた商材も、業種特化型の店舗向けソリューションや医療カルテなど、そのまま使って企業の競争力を高められるものが多かった」(西澤氏)

 同社では、コンテストを通じて得た100社超の企業とのコネクションを生かしていく考え。入賞には至らなかったものの、高品質なソリューションはほかにもたくさんあったといい、ソフトバンクグループで順次、商談を進めていく計画だ。

photo RICOH TAMAGO Presenter
photo 黒板
photo UNIVERGE Smartphone clienT ST450

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