『起業の天才! 江副浩正 8兆円企業をつくった男』著者が見たリクルート成長の秘密リクルート創業者の肖像【後編】(2/4 ページ)

» 2021年08月13日 05時00分 公開
[田中圭太郎ITmedia]

創業時からダイバーシティーを実践

 大西氏は、多くの関係者からの取材を通して、リクルートが次々と新規事業を生み出す以外にも、他の企業とは異彩を放っていた点を指摘する。それは個人を尊重する徹底した実力主義だ。1960年に創業してから急成長していく過程では、大卒の社員をなかなか採用できないことを逆手にとって、高卒の社員や女子社員を積極的に採用した。

 しかも、採用するだけではなく、大卒社員と横一線で競わせた。高卒でも、女性でも関係なく、結果を出せば誰でも登用する。マイノリティーで就職に苦労していた在日コリアンも、リクルートでは活躍できた。ダイバーシティーを当時から実践した企業だった。

 男女雇用機会均等法が施行されたのは1986年。それ以前にこれほど女性が登用された企業は、国内では他にないのではないだろうか。大西氏は本書の中で、法施行以前のリクルートの社内の雰囲気が分かる、あるエピソードを披露している。

 「リクルートはオフィスが足りなくなったある時期に、東京・大手町のNKK(日本鋼管、現JFEスチール)ビルのフロアを間借りしていました。

 日本鋼管の女性社員は制服です。一方、リクルートで働く女性はみんな好きな服を着て、廊下で煙草を吸っている。その姿を日本鋼管のおじさんたちが眉を顰(ひそ)めて見ていたそうです。でも、実はリクルートの女性の方が、日本鋼管のおじさんたちよりも高い給料をもらって、猛烈に働いていたのです。

 この雰囲気は創業当時からありました。男女雇用機会均等法も、総合職もない時代から、全ての社員を平等に扱って、女性のポテンシャルを生かし切っていたのがリクルートです。新しい情報誌を次々と生み出して急成長していた時代には、日本で一番女性が輝いていた会社だったと思います。こういう会社があることを、ぜひ多くの女性に知ってもらいたいですね」

アルバイトの女性たちと。中段右から2番目が江副氏(『起業の天才!』より)

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