オープンしたものの、最初は一切広告を出さず静かに営業していた。宣伝をしなければ、歌舞伎町の奥に深夜に営業している薬局があるとは、なかなか気付いてもらえないはずだ。宣伝をしなかった理由を、中沢氏はこう明かす。
「深夜営業の薬局を開店することで、近所のドラッグストアや大手のチェーンがどのような動きをするのか分からなかったので、しれっと始めた感じです。だから、最初はお客さんが全然いませんでした」
オープンの際にはトラブルも起きた。卸会社と話ができていたはずの薬の調達が、卸会社の上司の判断でオープン直前に断られてしまったのだ。
それでも予定通りにオープンするために、保険収入を卸会社にいったん入れて、差額分を戻してもらう債権譲渡の形にすることで取引を認めてもらった。「屈辱的でしたが、他に方法がなかったので仕方がなかったですね」。多難な船出だった。
少しずつお客さんが来るようになったのは、オープンから3カ月が過ぎてから。ネット広告をグーグルに出したほか、ネットで「深夜」「薬局」と検索された際に、自社のWebサイトが上位に表示されるようにSEO対策をしたことで、効果が出始めた。
すると、訪れた客から、徐々に口コミが広がるようになる。その多くは女性だった。実際に処方箋を持ってきて薬を買い求める客は、8割以上を女性が占める。深夜に開いていて、買い求めやすく、話も聞いてくれる。その評判が新聞に取り上げられたことで、テレビからの取材も相次いだ。
「最初に新聞に掲載されたのが、オープンした年の10月です。それからテレビの取材が次々と入りました。ニュース番組が多かったですね。テレビには今でも年に何回かは取り上げていただいています。自分がこんなにテレビに出るようになるとは思っていませんでした。
新聞に掲載されたことをきっかけに、大手チェーンの動きも気にならなくなりました。同業者の中には『よくやった』と応援してくれる方もいます。マスコミでの露出と、口コミが広がったことで、オープンから1年経(た)った頃に経営的には軌道に乗りました」
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