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ここまで進んでいた欧州のスマート家電、日本企業はどうする?(3/3 ページ)

» 2017年09月15日 13時50分 公開
[山本敦ITmedia]
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“声”だけでいいのか

 スマートスピーカーのデモンストレーションを見て、もう1つ気になることがあった。筆者はスマホやタブレットのある生活に慣れてしまったので、家電機器を操作した後の反応が音声だけでなく、視覚的にも伝わってこないと不安に感じてしまったのだ。

 例えばボッシュのブースでスマート機能を搭載するオーブンのデモを体験してみると、スマートスピーカーを使って音声で「オーブンの電源を入れて200度で温めて」とコマンドを送ると、オーブンはその通りに反応してくれるのだが、実際にこれをわが家でできるとしても、リビングでコマンドを送った直後にキッチンまで移動して火加減を確かめに行ってしまうだろう。

レノボのタブレットに合体するスマートスピーカー「tab4 Home Assistant Pack」。音声操作の反応が画面でも確認できる

 音声と視覚によるインタフェースをハイブリッドで上手に活用した面白い製品があった。レノボのAndroidタブレットと合体するドック型のAmazon Alexa搭載スマートスピーカー「tab4 Home Assistant Pack」だ。アマゾンとレノボが共同でインタフェースを作り込んだという本機は、合体時にはタブレットからHome Assistantアプリを起動して、スピーカーから音声コマンドを入力すると、例えば天気予報やニュースを調べた結果が音声によるフィードバックのほかにタブレットの画面にも表示される。スマート家電のコマンドを送って、操作の実行状態や履歴をビジュアルでも確認できれば一層、安心感が高まると思う。

家からクルマにも広がるコネクティビティー

 IFAで発表された各社の製品を見る限り、冷蔵庫に洗濯機など大きな白物家電から、LED照明、コーヒーマシンといったスモールアプライアンス、さらには一般家庭用のセキュリティカメラ、煙探知機にドアの開閉センサーなどIoTデバイスまで、これから色んなスマート家電が商品として発売されることになりそうだ。現状スマート家電は日本よりもヨーロッパの方が進んでいるとみて間違いないと思う。日本の家電メーカーにもぜひ奮起してもらいたい。

 これからは家庭の中だけでなく、さらにクルマの中にもAIアシスタントが普及していきそうだ。残念ながらIFAには自動車メーカーの出展がほとんどないので、ホームからカーまで一気通貫したソリューションを見つけることは難しかったが、AmazonのEcho Dotスピーカーと連携する音声コントロールに対応する車載エンターテインメント、サービスは2月にバルセロナで開催されたモバイルの展示会「MWC2017」でもいくつかの自動車メーカーがコンセプトを展示していた。ハンドルを握る手を容易に離せない車中でこそ、音声コマンドによるオペレーションが生きてくる。来年のIFAでは家の中からクルマまでをつなぐコネクティビティーが1つの大きなテーマになるかもしれない。

今年のMWCでは自動車メーカーのプジョーがAlexaによるホームネットワークと車載通信をつなぐデモを紹介。インテルも5G時代のコネクテッドカーの技術開発を進めている

トライ&エラーの積み重ねが理想のスマート家電を生む

 AIアシスタントと高い親和性を持つデバイスはスピーカーに限らない。IFAでは本体に音声による応答のため必要十分なスペックのスピーカーを乗せて、本領はスマートLED照明として発揮する製品も発表された。ベルリンのスタートアップSenicが作った「COVI」だ。同じドイツのスタートアップで完全ワイヤレスイヤフォンをルーツとするBRAGIも、新しいAlexa対応のイヤフォン「Bragi Dash Pro」をヨーロッパで発売する。

ベルリンのスタートアップ発のAlexa対応スマートLED「COVI」

 ソニーのブースでは、スマートスピーカーの隣でAndroid TVを搭載する米国市場向けの“BRAVIA”が、年内に予定するGoogle Assistant対応のアップデートをデモンストレーションしていた。音声コントロールでVODサービスから見たいコンテンツを検索・再生したり、室内にあるスマートLEDの明るさ調節などがテレビから簡単にできるようになるらしい。スマートスピーカーは家の中の色んな場所に置けるポータビリティーの高さが魅力だが、リビングの中心にあるテレビがスマート家電のコントロールセンターになれば、これもまた非常に便利だといえる。

ソニーは年末に北米モデルの“BRAVIA”がアップデートでの対応を予定するGoogle Assitantによるホームコントロールのデモも紹介していた。スマートスピーカーよりもリビングではこちらのほうがしっくりときそうだ

 ヨーロッパの家電メーカーはもうスマート家電をビジネスの柱にするために本格的な取り組みを始めている。乗り越えなければならない課題も顕在化しつつあるようだが、1つずつつぶしていくこと、スマート家電に本来あるべき機能が明確になり、インタフェースの完成度にも磨きがかかる。

 白物家電はその地域に暮らす人々の文化や生活習慣と深く結びついているので、「インターネットにつながる」「音声でコントロールする」ことで便利に感じられるポイントには地域差が生まれてきて当然だと思う。だからこそ、海外で流行っている製品やサービスがそのまま日本に持ち込んでも成功するとは限らない。日本のメーカーもスマートスピーカーやAIアシスタントにつながるさまざまなサービスを、とにかく手当たり次第チャレンジしてみることが成功への近道なのかもしれない。

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