携帯業界が激変期をむかえる中で開催された「ワイヤレスジャパン2008」は、ジャーナリストの神尾氏が指摘するように、ボーダレス時代の幕開けを感じさせるものとなった。
WiMAXや3.9G、WILLCOM COREといった次世代高速通信のロードマップが明らかになる中、キャリアやメーカーがこぞって基地局やコンセプトモデルを展示。ドコモは屋外実験で利用した車両を会場に持ち込み、スーパー3Gの通信デモを実施した。2009年2月にモバイルWiMAXの試験サービスを開始するUQコミュニケーションズも、具体的なサービスの方向性やビジョンを明らかにしている。
基調講演には各キャリアのキーパーソンが登場し、それぞれの立場から今後の取り組みを説明。ドコモとKDDIはエージェント機能を強化するとし、ソフトバンクモバイルは、ジョイント・イノベーション・ラボの第1弾プロジェクトとしてWidget Engineを開発する計画であると発表。ウィルコムはマイクロセルの強みをアピールし、WILLCOM COREの基地局を生かした新たなビジネスモデルの構築を目指して「BWAユビキタスネットワーク研究会」を立ち上げたことを明らかにした。
端末開発を手がけるシャープとNECは、国内市場が厳しさを増す中、どのような取り組みで現状を打開するかに言及。シャープは2台目需要の掘り起こしと社内外との積極的なコンバージェンス、海外進出を打開策として挙げ、NECはiPhoneと同様のサーバ/クライアントモデルをベースとした“総合力”で勝負するとした。NECはまた、基調講演の中で、同社の持つ無線通信技術、インフラ、サーバ、サービスプラットフォームを生かした次世代端末のコンセプトモデルを披露。iPhoneと同じサーバ/クライアントモデルでも、多彩な端末を提供できる点がAppleとは異なるとアピールした。なお同社は、2台目需要も積極的に狙っていく考え。ただし海外進出については「市場を注意深く見て判断する」と慎重な姿勢を見せた。
KDDIが7月22日、2009年3月期第1四半期決算を発表。連結決算は売上高が8705億円で、前年同月比で3.1%増を記録したものの、営業利益は1244億円にとどまり、前年同月比では11.7%減。経常利益は前年同月比12.5%減の1248億円を記録し、増収減益となった。
同社の業績を牽引するモバイル通信事業は、売上高が微増したものの、営業利益は減価償却費や固定資産除却費、販売手数料の増加などが影響し、前年同月比で8%減となった。
決算会見で小野寺正社長は買い方セレクトの状況や春商戦を終えた反省点、次世代高速通信の導入などに言及。買い方セレクトについては、シンプルコースを拡充した6月10日から6月30日までの動向を紹介し、シンプルコースの選択率が62%となり、高機能端末でシンプルコースの選択率がさらに高くなる傾向があると説明した。なお、シンプルコースを選択した人のうち、92%が分割払いを選んでいるという。
春商戦については、「一部はいい端末もあったが、出した端末が必ずしもお客様にとって魅力のある端末ではなかった」と振り返り、KCP+導入の遅れが全体的な端末出荷の遅れにつながったことが影響したという見方を示した。「秋冬でそこはリカバーできるだろうと思っている」(小野寺氏)
次世代高速通信ネットワークの導入計画については、「実態として、LTE以外の選択肢はないだろうということはすでに話している。その状況については変わっていない」と改めて話し、「どの時点でLTEの採用を正式に表明するかについては検討を進めているが、あわててやる必要性はないと思っている。今の時点では実質的にLTEだと思っていただいて結構」(小野寺氏)と明言した。
7月25日、KDDIがau design projectの最新コンセプトモデルをKDDIデザイニングスタジオで披露した。
新たなコンセプトモデルは、カドケシで知られるデザイナーの神原秀夫氏とコラボレートした「PLY」と、ヤマハデザイン研究所とのコラボ端末「ガッキ ト ケータイ」。展示初日には、楽器ケータイを手がけたヤマハデザイン研究所の田中聡一郎氏が実際に楽器ケータイを演奏して見せた。
同氏は、ケータイの中に楽器のエッセンスを封じ込めるという取り組みを通じて、“楽器をもっと身近な存在にできるのではないか”と思ったと話す。開発時には「“ケータイに愛着を持ちたい”とか“使って気持ちいい”ということを実現するには、ひょっとしたらタッチスクリーンを使わない別のソリューションのほうがいいんじゃないか」と考えたとし、楽器の持つアナログなインタラクションを通じて、それを表現したという。
7月23日、ネイキッドテクノロジーが、ケータイに特化したRIAプラットフォーム「Colors」のドコモ向けクライアントアプリのα版を公開した。
RIAとはHTML表記のWebサイトに比べて、リッチな表現や柔軟な操作が可能なWebアプリケーションの総称で、PC向けにはAdobeが「AIR」を、Microsoftが「Silverlight」を開発している。ネイキッドテクノロジーは、モバイルに特化することで競合との差別化を図る考えだ。公開されたα版ではTwitterクライアントの「twittie」と、Flickr閲覧用クライアント「flickkie」を利用でき、それぞれのサービスに最適化した見せ方やUIを試すことができる。
サイトごとに最適な見せ方やUIを適用できるのが特徴で、広告についてもこれまでのテキストやバナーとは異なる、行動履歴やソーシャルグラフを生かした仕組みのモデルを自社で開発しているという。
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