米国時間の6月8日、これからはアップルが参加する唯一の恒例行事となる「Worldwide Developers Conference 2009」(以下、WWDC 2009)が開幕する。
会場となるMoscone Center Westには、おなじみとなった大きな白いリンゴマークが張り出され、大きく「WWDC 09」と書かれている。しかし2009年の今年、いつもと少し違うのは、この巨大なガラス張りの建物の1階の窓を埋め尽くしているのがアップル製品のアイコンではなく、他社製品のアイコンであること。そう、これは世界中の開発者が作ったiPhone用アプリケーションのアイコンなのだ。開発者が主役であるWWDCには、まさにうってつけのディスプレイである。
今日、iPhoneのアプリケーション開発は、世界中のソフトウェアエンジニアが、一攫千金をめざして集まり「21世紀のゴールドラッシュ」と呼ばれている。クリスマスイブとクリスマスの2日間で4万ドル(400万円)を売り上げたアプリもある。こうして世界中の開発者がしのぎを削る中で、新しいライフスタイルや新しいアプリケーションの広げ方、定着のさせ方といったイノベーションが毎日のように起きており、その革新の積み重ねによってiPhoneとそれ以外の携帯電話では、まさに隔世の感を生み出している。
その中でも、大勢の人々の暮らしぶりに影響を与えたのは、iPhone上で利用するTwitterだろう。実は、米国では誰にもおなじみの超有名雑誌「TIME」の最新号の表紙が、まさにこのiPhone上で動くTwitterとなっており、実際にこの組み合わせを使っている人の多くは、ここ日本でも「暮らしぶりが大きく変わった」と語っている。
WWDC会場に飾られた横断幕には「One year later. Light-years ahead.」(1年後。数光年先)と書かれている。そう、iPhoneが日本を含む世界81カ国で発売されたのも、iPhone向けのアプリケーションをアップル以外の開発者が提供できるようになったのも、実はまだ1年弱しか過ぎていない。しかし、この1年で、iPhoneのアプリケーション開発は、とても1年とは思えないような革新を世の中にもたらしてきた。
WWDC会場内、本日は1階の登録受付しか開放されていなかったが、他社のiPhoneアプリのアイコン以外では、「iPhone 3.0」と「Mac OS X “Snow Leopard”」の横断幕が飾られていた。つまりアップルは今年、iPhoneのOSとMacのOSを同時にメジャーアップグレードすることになる。どちらもすでにある程度の概要は明かされているOSであり、今回のWWDCのメインテーマであることは明白なので、あえて隠すまでもなかった、ということだろう。
となると、やはり期待が高まるのが、これらのOSがいよいよリリースされるのか、という点だ。これについてiPhone 3.0は、すぐにでもリリースされる可能性が高いが、一方でMac OS X “Snow Leopard”については、リリースまでもうしばらくかかりそうという予測が多い。
それではiPhoneとMacの新型ハードウェアはどうだろう。iPhoneについては、今月中にも新機種が登場することは間違いなさそうだ。ただし、それが明日になるのか、もう少し先になるのかは、WWDCが始まってみるまで分からない。
ただ、万が一、新機種が出たとしても、新iPhoneとiPhone 3Gでは、ハードウェアの差はそれほど大きくないのではないか、というのが一般の予想だ。おそらくAndroid端末と比べて見劣りがしないように電子コンパスなどの機能が加わり、フラッシュメモリの容量は増えるだろうが、それ以外でハードウェア的には目立った進化はないかもしれない。
しかし、そうだとしても新しいiPhoneは劇的に変わったように見えるはずだ。なぜなら搭載される新OS、iPhone 3.0がこれまでのiPhone用OSと比べて、劇的に進化をしているからだ。
では、Macの新機種のほうはどうだろう。これまではMACWORLD EXPOというコンシューマー向けのイベントがあり、コンシューマー向けの目玉製品はそちらで紹介されることが多く、WWDCではMac Proなどのフラグシップマシンが発表される傾向が強かった。
しかし、最新のMac Proは3月に発表されたばかりで、WWDC 2009で新発表があるとは考えにくい。では、現行の製品の中で、次に最もアップデートされそうな製品はどれかというと、アルミ筐体のノートPCの中で、唯一トラックパッドのボタンが残っているMacBook Airかもしれない。
一方で、これまでのラインアップにない新しいMac、iPhoneを大型化したような新タイプの製品が出るというウワサもあり、実際、インターネットにはそのための部材が、アップルに納品されているという情報もあがっている。しかし、そうしたことはこれまでにもあった。可能性はあるかもしれないが、こればかりは明日になってみないと分からないところだ。
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