グーグルが10月23日、HT-03A向けのAndroid OSアップデートに関する説明会を開催した。Android 1.6(開発コード名:Donut)では、ホーム画面の検索機能がより便利になるなど、いくつかの機能強化が図られるほか、後日になるがGoogleマップ(地図)でLatitude機能が利用可能になる予定だ。
また、同時に日本のAndroidマーケットで有料アプリケーションが購入可能になった。こちらはOSをバージョンアップする前でも利用できる。アプリの購入にはGoogle checkoutでクレジットカード情報を登録しておく必要があるが、これまで購入できなかった有償アプリがすでに画面に表示されるようになっている。
HT-03AのOSアップデートは、23日の午前3時から始まったが、負荷分散のため1週間程度の時間をかけて徐々にユーザーに配信していくとのこと。まだアップデートの通知が画面に表示されない人は、気長に待つしかないようだ。
HT-03AのOSがAndroid 1.6になると、まず大きく変わるのが待受画面に表示されている検索ウィジェットの機能。これまでは、単にGoogleを使ったWeb上の検索が簡単にできるツールだったが、Android 1.6にするとここで端末内のデータやアドレス帳情報、アプリケーション、音楽なども、インターネット上のデータとシームレスに検索できるようになる。アプリケーションランチャとしても活用できそうだ。
これまで静止画撮影用と動画撮影用に分かれていたカメラ機能は1つに統合され、画面上のスイッチで手軽に切り替えられるようになったのも特筆すべきポイントだ。撮影した写真をPicasaなどにアップロードしたり、動画をYouTubeに直接アップロードしたりする機能は引き続き提供される。
無線LAN機能も強化され、VPN接続に対応したほか、セキュリティ機能「IEEE 802.1x」が利用可能になった(ただし利用できるのはEPA-EAPのみ)。またユーザーデータのパスワード保護機能なども用意された。
そのほかの細かな改善点としては、電池使用時間の確認画面が用意された点が挙げられる。どのアプリケーションやどの機能がどれくらいのバッテリーを消費したかが視覚的に確認できるユーティリティで、バッテリーがなくなる原因を突き止められる。例えば「あるアプリをインストールして以来、バッテリーの減りが早い気がする」と思った場合にこの機能を実行すれば、本当にそのアプリが悪さをしているのか、あるいはほかに要因があるのかが確認できるわけだ。
またユーザー補助機能として、操作に対するフィードバックをバイブレーションや音で通知する機能を用意したほか、英文テキストのみになるが、音声合成による読み上げ機能も提供している。グーグルでは「翻訳アプリなどで役立つだろう」としている。
またAndroid 1.6の配信開始に合わせ、日本のAndroidマーケットでも有料アプリケーションのダウンロードが可能になった。これまでは、日本の開発者が有料アプリケーションを登録・販売することは可能だったものの、日本のユーザーが有料アプリケーションを購入することができなかった。しかし、23日から、すでに世界中でリリースされているすべての有料アプリケーションが、日本国内でも入手できるようになっている。
アプリの代金の支払いは、前述のとおりGoogle checkoutに登録したクレジットカードを用いる。HT-03A側でも、一度クレジットカード情報を登録しておけば、2回目以降は手入力する必要はないという。
有料アプリケーションの価格は、開発者が登録した通貨で表示され、地域ごとに通貨を変えるといったことは、現時点ではできないという。これはアプリの販売代金の支払いが銀行振り込みで行われることに起因するもので、Androidマーケットを見てみると、ドルやユーロでの価格表記が入り交じっているのが分かる。
なおアプリの売り上げは、3割がグーグルの取り分となり、7割が開発者に支払われる。開発者向けのサイト(パブリッシャーサイト)では、有効なインストール数やレーティング(★の数)なども確認可能。Android 1.6のAndroidマーケットには、アプリのスクリーンショット(画面キャプチャ)も掲載できるようになっており、その画面を確認することもできる。
Androidマーケットでは、アプリケーションの審査などは一切行わないため、内容についての安全性は担保されていない訳だが、その分サイトへの登録と同時に配信がスタートするという特長もある。いち早く不具合の修正などが行われる可能性がある半面、悪意のあるアプリケーションが容易に配信できてしまうという問題もある。
今後、有料アプリケーションが増えてきた場合に、悪意のある有料アプリケーションが配信される可能性もある訳だが、この点については、「有料アプリを購入して、試用してみた結果つまらない、使いづらい、問題が生じる、といった場合、購入から24時間以内であれば返金する仕組みがある。これを活用していただければ、有料アプリでも不正に料金を取られるといったことは回避できるかと思う。また、万が一不正に代金を取られた場合は、クレジットカード会社に返金を要請してもらうことになる」との説明があった。なお24時間以内の返金は、1つのアプリに対して1回しか利用できないため、2回目以降は購入と同時にクレジットカード決済が行われる。
Googleマップに、友人や家族の居場所を表示する「Google Latitude」に対応予定なのも興味深い。HT-03AでLatitudeが使えるようになるのは、「Android 1.6のアップデートがほぼ行き渡ったころ」(テクニカルアカウントマネージャ 岸本豪氏)になるとのこと。Android 1.6のアップデートが1週間程度かかるとされているので、1週間後くらいには使えるようになるのではないかと思われる。
Latitudeは、位置情報を自分が指定した相手と共有できるサービス。Googleマップやリスト表示で、登録された知り合いが今どこにいるのかが簡単に閲覧できる。すでにWindows Mobileや、iPhoneのWebブラウザ(Safari)向けに提供されており、目新しい機能ではないが、海外でのみ使えて日本で使えないサービスが1つ減るのはうれしいポイントと言える。
位置情報を提供を受けるには、まず相手に登録をリクエストし、許可を受ける必要がある。許可をしない限り、位置情報が提供されることはないので、こちらが意図しない相手に見られてしまう心配はない。また、自分の情報もどのレベルまで共有するかは細かく設定できる。時と場合に応じて居場所を非公開にしたり、今いる場所とは違う任意の場所に設定することも可能だ。
Android 1.6の説明会には、NTTドコモ フロンティアサービス部 アプリケーション企画 担当部長の山下哲也氏も登場し、Android普及へのドコモの意気込みを語った。
「Androidは、1つのサービスとしての完成品だ、とは考えていない」と山下氏は指摘。これを使って、デベロッパーやユーザーが新しいアイデアにチャレンジし、新しい利用スタイルを提案してほしいという。
「今回のアップデートは、内容自体は地味に思えるかもしれないが、これからドコモがスマートフォンを熱く推していくための出発点となる出来事。これまで、携帯電話では機能がアップデートされたり、OSが入れ替わるということはほとんどなかった。しかし、(OSがアップデートできる)Androidならユーザー1人1人の、毎日のように変化していく使い方やアイデアにもスピーディーに追従していくことができる。これは携帯電話になかった特長だ」(山下氏)
Android搭載端末の機種数も拡大予定だと山下氏は明言した。「iPhoneは一種の完成品だが、Androidはいろいろなスタイルの変化やイノベーションを生み出すための、自由でオープンなプラットフォーム。この多様性が、いろいろな新しいスタイルを生み出すと思っている。最終的には、この部分がAndroidとiPhoneの大きな違いになっていくと思う」(山下氏)
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