これぞモバイルブロードバンドの未来像!? イー・モバイル「Pocket WiFi」の可能性神尾寿のMobile+Views(2/2 ページ)

» 2009年12月21日 12時00分 公開
[神尾寿,ITmedia]
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自由に使えるWi-Fiはスマートで便利、不満はバッテリー

Photo イー・モバイルの「Pocket Wi-Fi」と、筆者が普段持ち歩いている「MacBook Air」「PSP go」など。これらがすべてWi-Fiでつながるのはとても便利だ。特にMacBookのようにデザイン性の高いノートPCを使っていると、不格好なUSB接続のモデムを指さなくていいだけでうれしいところ

 イー・モバイルではPocket WiFiを、PSPやニンテンドーDSなどノンPCでもモバイル通信できる新コンセプト商品として訴求している。家電量販店ではこれらポータブルゲーム機やiPod touchを安価で買えるセット商品が大々的に売り出されている。

 筆者もPSP goのユーザーなので、Pocket WiFiと組み合わせて使ってみたが、確かに外出先で「PLAYSTATION Store」に接続できるなど、Wi-Fi内蔵のポータブルゲーム機との相性はよい。だが、筆者は通信対戦ゲームをそれほどプレイしないこともあり、ゲーム機以上に便利だと感じたのは、ノートPCやiPhoneでのインターネット接続である。

 ノートPCでの接続は、PC内蔵のWi-Fiを使うのでとにかくスマート。USBモデムのように余計な出っ張りもなく、(USBモデムモードで使わなければ)ドライバのインストールもいらない。

 特に後者のドライバが不要な点は予想以上に便利で、外出先で友達や家族、同僚と気軽にインターネット接続をシェアすることができる。筆者の利用中にもUSBデータ通信端末を忘れてきた仕事相手にPocket Wi-Fiの回線を“貸した”ケースが数回あるが、その場合もWi-Fiで簡単に接続でき、とても感謝された。個人で使うケースはもちろんだが、法人でも部署ごとにPocket Wi-Fiを何台か用意しておくと、外出先や出張先でのノートPC利用が便利かつ効率的になり、生産性が上がりそうだ。

 もう1つ、意外なほど便利だったのが、Pocket WiFiでのiPhone 3GSの利用だ。iPhone 3GSも下り最大7.2MbpsのHSDPAに対応しており、理論的にはPocket WiFiと対応通信速度の差はない。だが、場所によってはイー・モバイルの回線を使うPocket WiFi経由でiPhoneを使う方が、体感速度が速く感じるケースが多々あった。また、Wi-Fi経由でiPhoneを使うと、(iPhoneの)3G回線だと利用できないiTunes StoreやSkypeなど一部アプリの利用も可能であり、使い勝手がすこぶるよくなる。もし、すでにiPhoneユーザーで、さらにノートPCも日常的に利用しているならば、Pocket WiFiの導入は積極的に検討する価値があるだろう。

 しかしその一方で、Pocket WiFiへの不満もある。それはバッテリー持続時間が短いことだ。同機の連続通信時間は約4時間となっているが、実際は通信量が増えるとかなり短くなる。1台のPCからメールやWebを利用するくらいであれば4時間弱の利用が可能だが、例えば2〜3人でミーティングをしながらインターネットを使うといった使い方だと実質2時間程度しかバッテリーが持たなかった。むろん、内蔵バッテリーがなくなってもPocket WiFiをUSB接続モードで使うことはできる。だが、一度Wi-Fiによるスマートな接続に慣れてしまうと、不格好なUSB接続はできればしたくない、というのが偽らざるところだ。

 Pocket WiFiが小型・軽量をめざして現在のバッテリー容量にしたことは十分に理解できるが、それならばオプションで「大容量バッテリー」を用意してほしい。バッテリー持続時間の不安がもう少し緩和すれば、Pocket WiFiの用途や市場はさらに拡大する。イー・モバイルには是非、大容量バッテリーの投入を検討してもらいたい。

3G一体型Wi-Fiルーターで「つながる」の裾野が広がる

 バッテリーの部分に不満は述べたものの、筆者はPocket WiFiのサービスと使い勝手のよさにとても満足しており、仕事に欠かせないツールになっている。

 そして、Pocket WiFiのような3G一体型モバイルWi-Fiルータの登場は「3Gのデータ通信サービス」と「小型デジタル機器」の両方の可能性を広げる、という点でも高く評価したい。ポータブルゲーム機やポータブルメディアプレーヤー、デジタルカメラなどは以前からモバイル通信と組み合わせると新たな付加価値を生むと考えられていたが、価格や販売モデル・ビジネスモデルの違いによって3G通信モジュールの内蔵は難しかった。それがこの分野における、新サービスの開発や革新のハードルになっていたのだ。

 しかし、Pocket WiFiのような3G一体型モバイルWi-Fiルータが普及し、Wi-Fi経由でモバイル通信が安価に利用できるようになれば、3Gモジュールの内蔵が難しいデジタル機器も“インターネット連携”の新たなサービスやビジネスが開発できるようになる。これは今後のモバイルビジネスにとって重要なことだ。

 イー・モバイルがPocket WiFiを「安価な端末価格・利用料金」と「分かりやすいコンセプト」で市場投入し、店頭で積極的に訴求していることを高く評価したい。

 Pocket WiFiのような3G一体型モバイルWi-Fiルータは、今後のモバイルブロードバンド市場において大きく伸びる可能性が高い。WiMAXやLTE時代を見越しても、重要な商品/サービスになるだろう。モバイルWi-Fiルータと、そこにつながるWi-Fi内蔵のさまざまなデジタル機器。その上でどのようなサービスやビジネスが登場するのか、期待をもって見守りたいと思う。

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