「auの本気度を見てほしい」――Androidスマートフォン「IS03」に賭けるKDDI

» 2010年10月04日 19時43分 公開
[園部修,ITmedia]
Photo KDDI 代表取締役 執行役員 常務の田中孝司氏

 「待ちに待ったKDDIの新しいスマートフォン『IS03』が発表できる。今回はAndroid auというキーワードも掲げ、KDDIがAndroidに対して本気であることを示した。秋冬商戦はこれで頑張って行くぞ、というメッセージ。auの本気度を見てほしい」――。IS03発表会の冒頭であいさつに立ったKDDI 代表取締役執行役員常務の田中孝司氏はIS03によるauの反転攻勢を高らかに宣言した。

 これまでKDDIは、スマートフォン市場の立ち上がりに対して懐疑的な見方を示すことも多く、iPhoneで契約数を伸ばすソフトバンクモバイルやAndroidスマートフォンで追い上げを図るNTTドコモと比べて、スマートフォンへの取り組みは遅れていた。田中氏はこの点について「反省しなくてはならない」と話し、オープン化の波が押し寄せていること、数年後にはスマートフォンの市場シェアがかなり大きくなっていることなどを見据え、“1台目のケータイ”として使えるスマートフォンとしてIS03を開発したことを明らかにした。

 「これまでのスマートフォンには、ケータイの機能を備えたものがない。そして普通のケータイとスマートフォンを2台持っている人が多い。多くのユーザーは、そろそろケータイの2台持ちには我慢できなくなってきているのではないか。だからこそ、ケータイの才能を引き継ぐ革新的なスマートフォンが必要だと考え、おサイフケータイやワンセグ、赤外線通信ポート、デコメ、緊急地震速報など、1台目のスマートフォンを作るには何が必要かを詳細に調査し、搭載する仕様を決定した。IS03で、やっと1台持ちのスマートフォンが出せたと思っている。今後は会社のすべてのリソースを使ってIS03を皆さんに知っていただきたい、という思いでやっていく」(田中氏)

PhotoPhoto ケータイの機能を備えたスマートフォン――。IS03が目指したのは、1台目のケータイとして使えるスマートフォンだ

日本のユーザーにマッチしたスマートフォン

Photo シャープ 執行役員 情報通信事業統轄兼通信システム事業本部長の大畠昌巳氏

 IS03を開発したシャープの執行役員 情報通信事業統轄兼通信システム事業本部長、大畠昌巳氏は、「世界初の液晶電卓を開発して以来、電子手帳やZAURUSなどのモバイルデバイス、そして世界初のカラー液晶搭載ケータイや世界初のカメラ付きケータイ、最近ではAQUOSケータイやソーラーフォンのように、常に革新的な製品を送出してきた。IS03もシャープのモバイル機器に関する物づくりのDNAの粋を集めて開発したモデル。シャープが持つ特徴デバイスを軸に、使い勝手のいい商品ができた」と完成度の高さに自信を見せた。

 シャープとKDDIが口をそろえて強調したのは「日本のユーザーにマッチした製品」であるという点だ。特にFeliCaを搭載し、おサイフケータイに対応した点はAndroidスマートフォンとしては初の取り組みであり、日本のメーカーにしかできない機能といえる。ワンセグや赤外線通信など、日本のケータイユーザーが普段よく使う機能を分析し、ケータイと大きく変わらない使い勝手を整えた。もちろん「@ezweb.ne.jp」のアドレスを使ったEメールや、Cメールの送受信も可能だ。

 「シャープが携帯端末市場で5年連続シェアナンバー1を獲得できたのは、常にお客さまの目線に立ち、ニーズを半歩先取りして先進的な製品を商品化してきたからだと思っている。スマートフォンでも、お客さまのニーズを徹底的に分析し、日本市場にフィットした進化を施していきたいと考えている」(大畠氏)

“1台目のスマートフォン”に必要な機能とサービスを搭載

 KDDIの田中氏は、KDDIがこれからAndroidに真剣に取り組む理由として、米国のスマートフォン市場でAndroid搭載端末の販売台数が順調に伸びていること、米国ではすでにAndroidがiPhoneのシェアを上回るようになったといわれていること、ワールドワイドで見ても、現在Symbianが1位だが、今年中にAndroidが世界のケータイ市場で第2位の勢力になるいわれていることなどを挙げた。

PhotoPhoto 米国および世界で規模の拡大が著しいAndroid端末。そのAndroidで反転攻勢をかける

 おサイフケータイへの対応は「これがないばかりに2台持ちにしないといけなくなってしまう」と田中氏。1台持ち用の端末には不可欠ということで、こだわりを持ち開発を進めた。リリース当初はモバイルWAONと量販店系の一部のポイントカードのみ対応となるが、2010年12月以降にANAやJALの会員証/マイレージカード、マクドナルドの「かざす会員証」などのサービスもスタート予定。2011年1月にはEdyが、3月以降にはQUICPayが、そしてSuicaも2011年上期中に対応を予定している。

 またauケータイで好評のサービスも、IS03向けに積極的に展開する。サービス開始が待たれる音楽サービス「LISMO!」はIS03向けにも専用アプリを提供。今聞いている音楽をIS03用のプレイリストに逐次登録していける「ジュークボックス」機能なども用意する。またau oneナビウォークも、キーボードがない縦画面のIS03に合わせてユーザーインタフェースをリニューアルし、より使いやすいサービスになるよう開発中だ。

Photo au oneナビウォークやLISMO!といった、auケータイで人気のサービスもAndroid上で展開していく

 OSはAndroid 2.1を採用しているが、2.2へのアップデートを予定しているという。

auらしさを出すための備えも

 Androidを搭載したスマートフォンは、OSが共通のものになるため、機能面でどうしても似通ったものになってしまいがちだ。特にグローバルモデルはその傾向が強く、キャリアのサービスには対応しないものも多く出てきている。またOSのアップデートを行うことを前提にすると、固有のアプリケーションを搭載することでアップデートが難しくなるという側面もある。そのような状況の中で、auとしてAndroidスマートフォンにどのような特徴を持たせ、auとしてのこだわりをどう出していくのか、というのは今後の大きな課題になる。

Photo 10月18日にはauケータイとauスマートフォン秋冬モデルの新ラインアップを発表する

 質疑応答でKDDI コンシューマ事業本部 サービス・プロダクト企画本部長の増田和彦氏は「今までのケータイはキャリアごとに個別の端末として開発されたエクスクルーシブなモデルだったが、オープン化の時代のスマートフォンは当然そうではなくなる。具体的にどうやって差別化していくかは、10月18日に予定している秋冬モデルの発表会を待っていただきたいが、auらしさを体感していただける準備をしている」と話した。このあとにもKDDIにはスマートフォンおよびケータイの新ラインアップが控えており、そこで「auらしさ」を改めてアピールする考えだ。18日の発表会では「禁断のアプリケーションも用意している」と田中氏から意味深な発言もあった。

 なおIS01やIS02向けには、2台目需要を喚起するために大胆な割引き策を打っていたKDDIだが、IS03向けの新たな割引き策については改めて発売前に発表するという。

 「今日は気合いを入れてauの本気度を示した。IS03で秋商戦のauの本気度を見てもらいたい」(田中氏)

 発表会中、何度も「本気」という言葉を強調した田中氏。auのAndroidスマートフォンの真打ちとして登場するIS03は、スマートフォン市場攻略の足がかりとしての大きな役割を担って登場する。

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