インタビュー
» 2012年04月05日 18時32分 公開

開発陣に聞く「Xperia NX SO-02D」:他社が真似しても2年かかる――“透明に見せる”技術をデザインに融合させた「Xperia NX」 (2/3)

[田中聡,ITmedia]

シンプルなデザインの中にも価値を

 Floating Prismを引き立たせるため、他の部分は極力シンプルにまとめた。(Androidの)初代XperiaやXperia arcのように金属調のラインを入れるとFloating Prismが埋没してしまうと考え、NXの外周にはラインは入れていない。ただ、「シンプルな中に価値を入れる」(日比氏)ことも考え、サイドキーや電源キーには金属素材を採用した。イヤフォンジャックの穴は、金型で作った成型材のパネルをそのまま使うのではなく、「ガリッと削ったら出てきたような金属感」を出すために、ドリルで抜くといった後加工をしてシャープに仕上げた。「シンプルにするのはすごく難しい。デザインと設計の努力があってこそです」と日比氏は苦労を話す。

photophoto サイドキーや電源キーには金属素材を使っている。イヤフォンジャックの削り方にもこだわった

 Xperia S/NXの透明素材は発表後には大いに話題を集めたが、ともすれば突飛とも言えるこのデザインは、社内では賛否両論あったという。「デザイン言語を生んでまとめていくところに時間を掛けました。メカエンジニアには『今までの作り方の概念を捨ててくれ』とお願いしたので、ものすごく苦労したと思います。今までの経験値だと、僕の考えているシンプルなデザインは美しくまとまらないだろうという恐怖感すらありました」と日比氏は話す。最終的には「思いっきり賛同してくれた」ので、日比氏の目指す美しくもシンプルなデザインが完成した。

 ソニーモバイルのスマートフォンといえば、2011年のヒューマンカーバチャー(人間的曲線)をテーマにした丸みを帯びた形状も特徴の1つだが、このデザイン哲学はXperia NXにも継承されている。裏面は左右にかけてカーブを描いており、手にフィットする。「手のひらに対してのフィット感もありますが、デバイスをどう構成するかでラインを引いています。無駄なく、空気をなくしながら、レイアウトを美しくするというせめぎ合いですね」と日比氏は話す。「小ネタですが使い勝手が広がる」と日比氏が紹介してくれたのが、Xperia NX本体が縦と横に立つ(固定できる)こと。「YouTubeを見ながら何かをしたり、(スピーカーフォンの)音声通話やSkypeを使ったりするときに便利です」

photophoto 裏面は丸みを帯びている(写真=左)が、角はXperia arcに比べるとあまり削がれておらず(写真=左)、少し手に当たるのが気になった

白/黒ボディで「光と影をデザインする」

 Xperia NXのボディカラーはBlackとWhiteというシンプルな2色。4色展開しているXperia acro HD(SO-03D)とは対照的だ。デザイン担当の金田氏は「加色というと、どんな色を付けてゴージャスに見せるかという方向に走りがちですが、今回は原点に立ち返って、NXの形をベストに見せる方法が何かを考えました」と話す。Xperia NXのデザインでは「光と影をデザインすること」をコンセプトとしているので、WhiteとBlackがベストだと判断した。「色やラメ感など、今までは足し算でデザインをしていましたが、今回は引き算のデザインをしています。カラーも引き算できないかを考えました」と金田氏。そんな同氏が参考にしたのが、ガウディの建築物の写真だ。「ほとんど色がない中で建築の美を表現しています。光と影だけで何かを見せられないかと考えました」(金田氏)。「Xperia NXが発表されてから、いろいろな意見をいただきましたが、青が欲しかったといった意見は不思議と聞かないんですよね」(日比氏)。当初から白黒を前提に開発を進めてきたというのもうなずけるほど、白黒以外のXperia NXはどうも想像しにくい。内田氏によると、海外でもこれら2色の評判は良いようだ。

挑戦だった白のマット――塗料+塗装の技術で実現

 カラーのほかにこだわったのが質感だ。BlackとWhiteともにマットな質感にしたのは、Floating Prismの透明感が生きると考えたため。「光沢のあるグロスにすると、光が反射して一体感が出てしまい、Floating Prismが目に入らなくなります。今までのモデルはプラスティッキーな感じでツルッとしていましたが、心に寄り添うような質感を目指しました。ほのかに反射する、穏やかな光で美しさを醸し出すためにマットを選びました」と金田氏は説明する。これまでもXperiaシリーズでもマットな質感が多かったが、いずれもブラック系の色で、ホワイトのマットは挑戦だったという。「汚れにくい塗料を探して、どういった質感が心地よいかのスタディを繰り返しました」

 白系のマットは一歩間違えると安っぽくなりがちだが、Xperia NXは彫刻のような美しいたたずまいを見せている。これは、従来にはなかった汚れの付きにくい塗料と、美しく見せられる塗装を用いたため。前者の塗料は技術が向上したことが大きい。「私たちのオーダーと塗料屋さんの技術をマージさせながら、一緒に作り上げました」と金田氏は話す。塗装については、彫刻を美しく見せる手法にこだわった。「塗装のあらゆるパラメーターを変えながら、ベストの表現を目指してトライアルを繰り返しました」(金田氏)。このように塗料と塗装の技術が融合した結果、Xperia NXの質感が出来上がった。「エンジニアが血と汗と涙を流して作ったので、気に入っていただけると嬉しいですね」(金田氏)

photophoto これまでとはひと味違うマットな質感を得られる(写真=左)。カメラリングのパーツも輝度が出るようこだわった(写真=右)

 日比氏も話していたとおり、Xperia NXのボディは金属フレームがなくシンプルにまとめられているが、細かいところで価値が出るよう工夫している。例えば先述した金属素材のキーが挙げられる。ここにはアルマイト処理を2回施したという。カメラリングの金属についても、一番高い輝度がどうやって出るかを調整した。さらに、「Xperiaを彫刻にしてより建築的に見せる」(金田氏)ことも考え、電源、USB、HDMI、カメラのアイコンとXPERIAロゴは本体に刻印されている。「印刷は加えることになる」ので、ここでも引き算のデザインを具現化した。

photo 各種ロゴはプリントではなく刻印されている

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