他社が真似しても2年かかる――“透明に見せる”技術をデザインに融合させた「Xperia NX」開発陣に聞く「Xperia NX SO-02D」(1/3 ページ)

» 2012年04月05日 18時32分 公開
[田中聡,ITmedia]

 フルタッチ型が主流のスマートフォンは、フィーチャーフォンに比べてデザイン面で工夫する余地が少ないため、見た目が似通ってしまいがちだが、そこに一石を投じたのがソニーモバイルコミュニケーションズだ。2011年に発売した「Xperia arc」では弓のように反り返ったボディが話題を集め、海外では後継機の「Xperia arc S」も発売されるなど多くの支持を得た。そして2012年、ソニー・エリクソンからソニーモバイルに生まれ変わった同社が送り出した第1弾モデルが「Xperia S」で、日本ではドコモから「Xperia NX SO-02D」として発売された。4.3インチのHD液晶や1.5GHzのデュアルコアCPUなどの高いスペックはもちろんだが、透明素材「Floating Prism」が大きなインパクトを放っている。Xperia NXの開発意図は? Floating Prismはどのような経緯と技術で生まれたのか? ソニーモバイルの開発陣に話を聞いた。

photophoto ドコモから発売中のソニーモバイルコミュニケーションズ製「Xperia NX SO-02D」。ボディカラーはWhiteとBlack
photo 左からソニーモバイルの日比氏、金田氏、内田氏

透明ではなくアンテナとフレキが“透明に見える”

photo 内田氏

 日本では同時期にFeliCa、赤外線通信、ワンセグ、防水性能を備えた「Xperia acro HD SO-03D」が発売されたが、グローバルモデルがベースのXperia NXを発売する意図はどこにあったのか。商品企画担当の内田氏は「ワンセグやおサイフケータイの需要が高いことは理解していますが、必ずしもすべての方に必要というわけではありません。NXはそういう機能のないミニマムなスマートフォンとして仕上げました。NXとacro HDはデザインも違い、アイコニックなFloating Prismを全面的に打ち出しています」と説明する。2011年にXperia arc/acroを発売したように、2012年もグローバルの最新端末/日本向け機能やサービスを取り込んだ端末の2軸で展開していく構えだ。昨年のarc/acroについても「先進的なデザインと日本機能を求める人、両方のニーズを満たせた」(内田氏)と手応えを感じている。

 Xperia NXを手にしてまず目に飛び込んでくるのが、ディスプレイ下に設けられた透明素材 Floating Prismではないだろうか。表からも裏からもキーのアイコンが透けて見えるほか、センサーキーを押した直後や着信時などにはLEDが美しく点灯する。まさにXperia NXの顔とも言えるパーツだ。このFloating Prismはどのような狙いで採用したのか。デザイナーの日比氏は「Xperia NXは(Xperia X10から数えて)第3世代のXperiaです。スマートフォンの市場が成熟してきたこともあり、新たなジャンプアップが必要だと考えました」と話す。1世代前のXperia arcの形状も大きなインパクトを与えたが、「arcの反り返った形状は、設計上の効率を考えた構造」だったという。Xperia NXではデザインや設計の手法をゼロに戻し、新しい形を創造するよう試みた。しかし「形状だけで他社と差別化することが難しいのではないか」という結論が出た。他社が真似できないソニーモバイル独自の技術をデザインに落とし込めないかと検討したところ、アンテナの一部を透明に見せる技術を先行開発していたことに着想を得たという。

photophoto 透明なので当然、後ろのものが透けて見える(写真=左)。メッシュ状の部分にフレキとアンテナがある(写真=右)

 「透明素材をなくせばもっと小さくなるのでは? とよく言われますが、それは違います」と日比氏が話すように、Floating Prismは単に透明というわけではない。Floating Prismをよく見るとメッシュ(網)状の素材が確認できるが、この網の3分の1ほどがアンテナと基板をつなぐフレキシブルプリント基板、3分の2ほどが3G通信用のアンテナとなっている。メッシュが見えるので厳密には「透明」ではなく「透明に見える」と言った方がいいだろう。フレキとアンテナは当初は見た目が違っていたが、同じように見えるよう工夫した。このFloating Prismはデザインのインパクトだけを狙ったものではなく、ソニーモバイルの技術があってこそ採用された。「単なるファッションとしての透明素材なら採用していません。技術を一体化させたところに強さがあります」と日比氏は胸を張る。さらに、透明素材の周りにはフレキ以外の部品を配置していないので電波干渉が少なく、アンテナ感度が高くなる利点もある。日比氏によると、アンテナエンジニアからは当初、上端部に透明素材を置くよう提案されたが、透明でも(フレキシブルプリント基板で)電気信号を渡せるなら、端ではなく真ん中よりに置けないか――と話し合い、実際の位置に落ち着いたという。

 「アンテナエンジニアいわく、他社がまったく同じことをやろうとしたら、2年かかるとのことです」という日比氏の言葉から、アンテナを透明に見せる技術が一朝一夕に生み出せるものではないことが分かる。「2年後の我々はもっと先を行っている」――という自信もあり、Xperia NXへの採用が決まった。この技術には新しいデザインを作る意図が当初からあったわけではなく、新しいアンテナを開発する一環として生まれたものだという。また、Floating Prismを採用したモデル(Xperia Sなど)は主に海外で発売されているが、この透明に見せる技術は日本で開発されたものだ。

Floating Prismの接着方法は?――強度の確保にも苦労

photo 日比氏

 この透明素材、実は強度の面でも苦労している。「透明素材に強度を持たせながら、他のパーツと一体にすることは、想像がつきませんでした。接着するか、中に潜り込ませないと強度を保てません。潜り込ませると、側面から窪みが見えるので、ここを平滑に見せながら強度を保つのがものすごく大変でした」と日比氏は振り返る。いろいろな構造を試行錯誤した結果、透明素材は上下のパーツに潜り込ませる形で取り付けている。上下から透明素材にフタをしているイメージで、断面を単に接着したわけではない。実際の製品に触れても、透明素材の上下にはほとんど凹凸がなく、違和感なくまとまっている。「LEDも入れてフレキが通りながら平滑面を作れた……エンジニアには拍手したいですね」と日比氏は賛辞を贈る。「『これ(透明素材)取れちゃうんじゃないの?』と言われると、個人的には『よっしゃ』と思いますね」と日比氏は笑う。

photophoto スリープ時から復帰したり着信したりすると、LEDが点灯してキーアイコンが浮かび上がる(写真=左)。透明素材と上下のパーツには凹凸がほとんどない(写真=右)
photophoto LEDは上に3カ所あしらわれている。何度も反射することで、下からも光っているように見える(下にはLEDはない)
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