ソフトバンクは9日に、PayPalとの提携を発表、10億円ずつ出資して合弁会社を設立する。ソフトバンクの代表取締役社長兼CEO、孫正義氏によると「日本の決済市場を変える、そういう目的のために作る会社」とのこと。iPhoneやAndroidスマートフォンにアタッチメントを取りつけてクレジットカードを読み取る「PayPal Here」も日本に導入する。

ソフトバンクとPayPalがジョイントベンチャーを設立する。左から、新たにできる合弁会社、PayPal Japan CEOの喜多埜裕明氏、イーベイ 社長 兼 CEOのジョン・ドナホー氏、ソフトバンク 代表取締役社長の孫正義氏、PayPal代表のデイヴィット・マーカス氏(写真=左)。新たに設立される「PayPal Japan」の概要(写真=右)PayPal Hereとは、アタッチメントとアプリが一体となったソリューションのこと。従来のようにクレジットカード専用の読み取り機器が不要となり、「スマートフォンを持ってさえいえれば、アタッチメントをイヤフォンジャックにプチュっと挿すだけでクレジットカードリーダーになる」(孫氏)という手軽さが特徴だ。サインやカード利用控えの発行も、すべてスマートフォン上で行う。アタッチメントはソフトバンクの法人営業が「徹底的に配りまくる」(孫氏)ほか、ショップでも1200円で販売される。手数料は5%。一般的なクレジットカード会社は取引先の業態や職種によって手数料を変えているため一概には比較できないが、平均すると同程度かより安くなるように設定されているようだ。孫氏が「100万、200万店舗まで増やしていく」と意気込むように、今までクレジットカード決済の導入をためらっていた中小店舗にまでPayPal Hereを広げていく構えだ。
さらに、“顔パス”で決済を行う「チェックイン」機能も提供する。ユーザー側のスマートフォンには位置情報に基づき、近隣のPayPal対応店舗を表示。アプリでチェックインすることで、店舗側のスマートフォンのリストにそのユーザーが表示される。後は、店員があらかじめ入力しておいたメニューを選び、支払いを完了させるという仕組みだ。ユーザーの照合は、顔写真の目視で行う。金額を確認してから明示的に支払う流れでないため少々不安は残るが、「不正な取引があった場合、返金処理で対応していく」(会場の説明員)とのこと。返金があるとはいえ、認証の仕組み上、初めて訪れた店舗や大規模店では使いづらい。「麻薬や銃など、明らかに違法なものを販売する店舗には、そもそもアカウントを発行しない」(同)という措置も取られる。
なじみの店での支払いなどがスムーズになりそうだが、現金やクレジットカードを提示するという従来の方法から大きく“所作”が変わるソリューションのため、PayPal側としてもあくまでまずアタッチメントありきと考えているようだ。まず、アタッチメントを普及させ、PayPalによるクレジットカード支払いを普及させる。その次に、チェックイン機能によるオンライン上での支払いを実現させるという戦略があるようだ。
一方で、日本ではおサイフケータイの利用環境も広がっており、対応するリーダー/ライターをすでに設置している店舗も少なくない。特にドコモが推進するiDは、タクシーや自動販売機など、従来の店舗の概念にとどまらない幅広いシーンで利用できる。こうしたおサイフケータイとの競合関係について問われた孫氏は、「おサイフケータイは、そもそも使う金額が大変少額で、お金を追加するのが非常に面倒。しかも端末を乗り換えると、残金が非常に移しにくいなどの問題点があり、現実にはあまり使われていないのではないか」とコメント。その上で「ガラパゴス的に発生したおサイフケータイは一時的なビジネスモデルだったと、5年後、10年後に言われるようになる」とした。
これに対して、PayPal Hereはあくまで決済端末の代わりになるもので、電子マネーやクーポンの役割を担うおサイフケータイと直接競合するものではないというのが筆者の見解だ。また、確かに孫氏が指摘するような機種変更の問題などはあるが、ケータイをかざして決済を行うおサイフケータイのアイディアはNFCとして世界に広がっており、米国でもすでにGoogleが類似サービスを開始している。発想自体は決して“ガラパゴス”ではないということをつけ加えておきたい。事実、会場の説明員もPayPal Hereのアタッチメントが将来的にNFCに対応する可能性は十分ありえると話していた。アタッチメントにスマートフォンをかざせば支払いが完了するというのは、ユーザーにとっても店舗にとっても、時間の節約や手間の軽減、管理の効率化といったメリットの多い方式だと思う。ソフトバンクモバイルがおサイフケータイ対応スマートフォンを販売していることもあり、ソフトバンクにはこのような将来の青写真まで描いてほしかった。
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