2013年は、MNP好調の先を見据える――KDDI 田中孝司社長に聞く新春インタビュー(1/3 ページ)

» 2013年01月03日 09時00分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 2012年はKDDIにとって躍進の年だった。

Photo KDDI 代表取締役社長の田中孝司氏

 前年から準備してきたマルチデバイス・マルチネットワーク・コンテンツマルチユースの「3M戦略」は着実に実を結び、新製品・新サービスを投入。2012年9月にAppleの「iPhone 5」を発売して以降はMNP(番号ポータビリティ)制度を利用した契約者の伸びが爆発的に増え、NTTドコモをはじめ他キャリアのユーザーを獲得する勝ち戦が続いている。さらにはJ.D. パワー・アジア・パシフィックの2012年日本携帯電話サービス顧客満足度調査や、MMD研究所などの各種満足度調査でもNo.1の座を奪取し、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだ。

 2013年、KDDIは今の好調をどのように維持するのか。そして、次のフェーズで何を狙うのか。KDDI 代表取締役社長の田中孝司氏に聞く。

2012年の点数が、70〜80点の理由

――(聞き手 : 神尾寿) 2012年は、KDDIの3M戦略が推進された年になったわけですが、ここを振り返っての感想はいかかでしょうか。

田中孝司氏(以下田中氏) 昨年は中期的な取り組みをずっと行ってきたわけですが、その中でも3M戦略は「ファミリー層を取り込む」ことと「スマートフォンを中心に据えていく」ことが目的でした。これは概ねうまくいったと考えています。マルチデバイス、マルチネットワーク、コンテンツマルチユースのそれぞれで、2012年はきちんと成果を上げることができましたので、3M戦略を構築するエレメントはそろったと思っています。

――  MNPでの好調は、それらの成果の1つである、ということでしょうか。

田中氏 MNPに対する見方はそれぞれですが、(携帯電話市場は)寡占市場ですからね。MNPでの好調によって、KDDIの新規契約者は増えました。私としては、当初想定していたところから見れば70〜80点くらいの成果は上げられたかな、と思っているのですよ。

――  昨年のKDDIは順風満帆に見えましたが、それでも100点満点ではないのですね。

田中氏 ええ。では、何ができていないのか。プロダクトドリブンの世界観では成功したのですけれど、お客様目線で考えた時に「気持ちよく使えるところまでいったのか」というと、こちらはまだできていません。そこまで完成させてこそ、「新しい自由 au」のコンセプトが実現できると考えています。

――  選択肢が増えるだけではダメである、と。

田中氏 新しい自由 auがめざすところは、「お客様側に立つこと」と「革新」に重きを置いています。お客様が“次に求めるものがある”という世界観を作っていくところにポイントがあります。昨年の時点でそこまで到達できたかというと、そうではありませんでした。これは素直に反省しなければなりません。そして2013年は、そういうことをしっかりやっていかなければなりません。

――  お客様目線といっても、さまざまな価値観がありますね。

田中氏 そうですね。昔はお客様の購買行動で重要視されていたのが「端末を選ぶ」という部分でした。しかし今では、料金を重視する人もいらっしゃいますし、ネットワーク品質を重視する人もいらっしゃる。ユースケースに重きを置くお客様もいらっしゃいます。昔は商戦期ごとに新機種を発表し、それがどれだけお客様に認められるかが重要でした。とてもプロダクトドリブンだったと言えます。しかし今では、端末が占める重要性は少しずつ小さくなっていますよね。

――  ユーザーのニーズが「スマートフォンが欲しい」から「スマートフォンで何かがやりたい」に移ってきているのは感じます。

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田中氏 そうですね。その「スマートフォンで何がやりたいか」「何を重視するのか」という部分で、いろいろなニーズがミックスしているような状況です。ですから2013年は、(ユーザー層の)グループごとにスマートフォンのニーズが明確に分かれてくるのだろうなと思っているのですよ。

 KDDIとしては、そういったさまざまなグループごとのニーズに選択肢を用意して、きちんと提案していく体制にならないといけません。法人市場では(お客様のニーズに即した)提案というのはあたりまえのものなのですが、それがコンシューマー市場でも重要になっていくでしょう。

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