―― Firefox OS搭載機でキャリアサービスの推進をどう図るおつもりですか。
石川氏 キャリアサービスもっと使っていただきたい――という思いはありますが、それだけのためにFirefox OSを選んだわけではありません。他社がTizenに何を求めているのか分からないのですが、例えばiOSはキャリアサービスがほとんど乗らなくてもユーザーは満足してますよね。さらにiOSと違ったものを求めるユーザーもいるので、そうした層にはアピールできると思います。
―― 「スマートパスポート」で提供しているサービスは、Firefox OS向けにも提供されるのでしょうか。またFirefoxのMarket Placeを、auのマーケットとして作り込んでいく予定はありますか。
石川氏 基本的にはスマートパスポートを含む3M戦略にのっとった製品を発売する方針です。ただ、はっきりとしたFirefox OSについての戦略はまだ決まっていません。どこのベンダーと組んでどういった体制で臨むのかはこれからの話です。アプリマーケットについても何も決まっていません。
―― スマホのプラットフォームは3つではなくて4つ(Android、iOS、Windows Phone、Firefox OS)に増えるということですね。
石川氏 そうなる可能性が高いですね。デバイスで見ると、フィーチャーフォンにスマートフォン、タブレットとあり、それぞれの得意分野がある。プラットフォームも得意分野ごとに増えていくと思います。
―― Google(Android)とApple(iOS)にプレッシャーをかける形になりますね。
石川氏 そう受け止められるとは思いますが、そうした意図はまったくありません。純粋に、新しいもの面白そうなものにいち早くチャレンジしたいということだけです。
―― Windows PhoneとFirefox OSの関係はどうなりますか。例えば販売比率の目標などです。
石川氏 Windows Phoneはちょっと早すぎたという印象です。ちなみにほかのプラットフォームを含めて、扱いの序列を固定しているわけではありません。
Windows Phoneもこれから面白くなると思いますよ。こう言うと『KDDIっていい加減な会社だなぁ』と思われるかもしれないですが(笑)。ただプラットフォームの選択権はキャリアではなくてユーザーにあると思います。
―― Tizenを採用する可能性もあるのでしょうか。
石川氏 今の段階では考えていません。
―― ドコモは日本メーカーに対して積極的にTizenを推奨しているようですが、KDDIも同様にFirefox OSをメーカーに推奨するおつもりですか。
石川氏 メーカーに、『(Firefox OS搭載機の開発を)面白そうだから一緒にトライしよう』と打診することはあると思います。ただ最終的な判断はメーカー次第で、無理にお願いすることはできません。完成度が高くなってきた段階で、Firefox OSの採用を求めるケースは考えられます。現在でどこまでFirefox OSの利用をお勧めできるかというと、分からない。今は決めようがないですね。
―― 日本で売られるAndroidスマートフォンには、キャリアサービスにフル対応した国内メーカーのものと、グローバルモデルをローカライズしたものに分けられます。Firefox OS搭載機のバランスはどうなりますか。
石川氏 どちらもあると思います。KDDIだけで決められないし、良いアイデアも出てこない。メーカーやパートナーからの提案を受けて、3M戦略に当てはまるものがあれば採用したいですね。
―― 他キャリアがFirefox OS搭載機を発売した場合、どのように対抗するのでしょうか。
石川氏 他社も出そうと思えばすぐ出せるでしょう。ただ、KDDIとして先行している部分があるので、その知見があります。またユーザーに安心して使ってもらうためのセキュリティ面などで、オープンソースコミュニティに貢献していくつもりです。他社よりも先に取り組んでいるので、その経験は生かせると思います。これは、独自仕様で他を排除する目的のものでは決してありません。
―― ソフトバンク-Sprint連合はTizenとFirefox OSのどちらにも参加していますが。
石川氏 今の段階で他社の動きを気にするより、完成度の高い、自由なOSの特色を生かした端末の開発が先だろうと思います。気にならないと言えばにうそになりますが。
―― 今回発表された2機種のFirefox OS搭載機について感想を教えて下さい。
石川氏 結構良く動いているなぁと思います(笑)。
会場ではこのほかに、KDDIの担当者からアプリについての説明も行われた。Firefox OSアプリの開発現場はHTML5を使ったWebベースで行われるため、Javaプログラミングの素養が必要なAndroidアプリよりも開発者の母数が一気に増えると見込まれている。またWebのデザイナーやクリエイターがアプリ開発に参入することで、これまでにないテイストのアプリが提供されるという。
KDDIがFirefox OS開発に貢献している内容として、auスマートパスやauマーケットの運用で蓄積したスクリーニングのノウハウ、ペアレンタルロックなどのセキュリティ技術、ネットワークへの負荷分散処理などが挙げられた。一部は実際にコードを書いてオープンソースコミュニティに提供しているという。NFCについても対応しており、これはドイツテレコムが担当している。
また開発者の参入を促すには、どのようなアプリビジネスの場を提供できるのかにも左右される。KDDIはその点についてはまだ何も決まっていないとしているが、キャリア決済や独自マーケットの展開といったオプション展開は自由に行えるという。
CPにとってプラットフォームが乱立することはコスト上昇の要因となるが、石川氏は「最終的にはHTML5に集約されていくのではないでしょうか。その流れは確実だと思います」との考えを示した。
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