イー・アクセスに聞く、月額3880円で使えるLTEスマホ「STREAM X」投入の狙いソフトバンクとのシナジー効果も(2/3 ページ)

» 2013年03月12日 10時00分 公開
[田中聡,ITmedia]

従来のデータ通信と同じ「トータルで3880円」を目指した

ITmedia 端末代もそうですが、パケット定額サービスの「データ定額5」が月額3880円なのもインパクトがありますね。(フラット型の)LTEのパケット定額サービスが、他社だと月額5460円や5895円であることを考えると、強みがあると思います。なぜここまで安くしたのでしょうか。

中村氏 いろいろ消費者調査を繰り返しながら、このあたりの価格帯であれば、MNPでも移っていただけると考えました。

ITmedia 他社のLTEユーザーからSTREAM Xに乗り替えてもらう期待もあるのでしょうか。

中村氏 各キャリアさんが実施されている施策を考えると、LTEスマートフォンをお持ちの方が、直近でここ数カ月以内にイー・モバイルに移っていただくことは、ハードルが高いと思っています。LTEスマートフォンは、ちょうど去年の夏商戦から(スマートフォン全体における)比率が一気に上がっています。LTEスマートフォンは、まだ半年、進んだ方でも1年くらいしか使っていないので、そういった方々から移っていただくのは、現状は難しいと思っています。一方で、既存の3Gを使っていた人には、移っていただきたいと思っています。

ITmedia 確かに、3000円台は、他社が提供している3Gの料金プランと比べても安いですよね。そのあたりも踏まえての価格設定だったのでしょうか。

中村氏 他社さんの場合、基本料金で980円、ISP料金で315円かかるので、トータルでは5000数百円になるんですよ。我々は、トータルで3880円という料金を実現しています。

ITmedia LTEスマホ割で980円の割り引き、月額割引で端末代は実質0円、ISP料金は発生しないので、確かに3880円で済んでしまいます。

中村氏 3880円という数字は、データ通信サービスと同じ価格なんです。データ通信サービスとは異なり、STREAM Xのデータ通信容量は月間5Gバイトですが、ライトユーザーならこの料金で使えると思います。

ITmedia STREAM Xではさらに通話ができるにもかかわらず、ですよね。

中村氏 ええ。月々のランニングコストがまったく変わらずに、いざというときは通話もできますし、(テザリングで)ちょっとした調べ物もできます。

ITmedia これで採算が合うのでしょうか。

中村氏 だいぶ頑張らせていただいています。一方で、他社さんがやっているような、大きな広告宣伝は現時点では抑えています。モバイルデータ通信に強いイー・アクセスが最先端のスマートフォンを提供し、それがマーケットの皆さんにどう認めてもらえるのかを、きっちり見極めていきたいと思っています。

ITmedia 逆にLTEスマートフォンの投入を始める今こそ、宣伝するタイミングだとも思うのですが。

中村氏 広告よりも先に、まずは世の中の先行層の方たちに、どうご評価いただけるかを見たいと思っています。もちろんまったく広告展開しないわけではありません。先行層の方が、適切な情報を拾いやすいように発信していくつもりです。

ITmedia STREAM Xでは、通信量が5Gバイトを超えると追加で2625円を支払えれば、128Kbpsの速度制限を解除できます。他社だと2Gバイトごとに買い増す必要がありますが、イー・モバイルでは2625円を1回支払えば、基本的に無制限で使えます。これもお得ですね。

中村氏 ここもさんざん議論しました。決め手は、今のモバイルWi-Fiルーターが、2014年までは無制限で通信できることです(EMOBILE LTEでは、14年5月以降は月間10Gバイトを超えると、データ通信とスマートフォンともに、月末まで通信速度が制限される)。そこに合わせました。

※初出時に、「スマートフォンは速度制限の対象にならない」旨の記述がありましたが、イー・アクセスから、EMOBILE LTEではスマートフォンも速度制限の対象になるとの訂正が入ったので、該当箇所を削除しました(3/15 11:12)。

ITmedia STREAM Xを発表してから、お客さんからはどんな声が挙がっていますか?

中村氏 想定以上に予約が取れていますね。

ITmedia どんなところが評価されたと思いますか?

中村氏 やはり料金が大きいと思います。クアッドコアを搭載してCategory 4のLTEに対応した最先端の端末が、あり得ない料金で使えます。決して「安かろう悪かろう」ではないものが実現できたと思っています。

スマートフォンとルーターの二刀流で攻める

ITmedia STREAM Xのターゲットは、これまでPocket WiFiなどイー・モバイルの端末を使っていた方なのでしょうか。それともまったく新しいユーザーを想定しているのでしょうか。

中村氏 どちらかというと、今までイー・モバイルのモバイルブロードバンドを使っていただいた方が第一のターゲットだと考えています。なので他社では通常あまりやりませんが、STREAM Xは機種変更でも新規と同じ価格にしています。これはイー・モバイル使っていたお客様への感謝の気持ちです。イー・モバイルでは最先端の尖ったユーザーさんが多いので、まずはその方たちに認めていただきたいという想いが強くあります。

ITmedia イー・アクセスさんとしては、「今Pocket WiFiを使っている人も、スマホに乗り替えるとお得になりますよ」というアピールをされるのですか?

中村氏 我々は「どちらを選びますか?」としています。総合カタログでも「スマホとルーターどちらを使いますか?」といった内容にしています。

ITmedia でも、逆にSTREAM Xのようなスマホが出てくると、モバイルWi-Fiルーターは不要になるのではとも思います。ルーターの強みは何でしょう。

中村氏 やはり、バッテリーの持ち時間が圧倒的に長いことですね。新しいモバイルWi-Fiルーター(GL05PとGL06P)は、連続使用時間が12時間です。ビジネスでお使いの方には最大のメリットだと思っています。

photophoto Pocket WiFi LTEシリーズでは最軽量の約108グラムを実現した「GL05P」(写真=左)。3560mAhの大容量バッテリーを搭載した「GL06P」(写真=右)

ITmedia ライトユーザーならスマートフォン1台で十分だと。

中村氏 スマートフォンで大きな安心感を持っていただけると思っています。いざとなったら電話もできますしね。あと、Android OSの出来もだいぶ良くなってきていると思います。すでにiPhoneをお使いで、安く買えるという理由で(前モデルの)「GS03」を一緒に持っていただいた方も多くいらっしゃいます。

ITmedia 今後は、スマートフォンとデータ通信、どちらに軸足を置いていくのでしょうか。

中村氏 そこは経営戦略上いろいろと検討すべき部分だとは認識していますが、データ通信が強いことは、最大のアイデンティティとして大事にしていきたいと思っています。

ITmedia 「強い」という言葉が出ましたが、イー・アクセスの強みとはどのあたりにあるとお考えでしょうか?

中村氏 「イー・モバイルはデータ通信に強いよね」と市場で評価いただいている理由は、このデータ通信市場で、常に新しいものを提案しながら作ってきたことを認められたからだと思っています。例えば、モバイルWi-Fiルーターの先駆けであるPocket WiFiやデュアルセル型(DC-HSDPA)の42Mbpsサービスなど、データ通信においては、我々が先駆者としてマーケットを広げてきたという自負を持っています。今回のSTREAM Xも、その考え方から外れるものではなく、今までのチャンレンジ精神にのっとって提供しているものです。

ITmedia ただ、LTEの製品は後手に回ってしまいました。LTEスマートフォンの投入が遅れてしまった理由は?

中村氏 データ通信のリーディングカンパニーとして、ハイエンド製品を満を持して提供するためです。結果的にLTE Category 4の対応製品を、市場に一番早く投入することができました。まだまだモバイルブロードバンドルーターのマーケットは、それなりの規模があります。特に昨年秋に7インチタブレットが発売されてから、2段ロケットのようにデータ通信の需要が上がる予兆もあるので、市場を見極めていきたいと思っています。

 LTEスマートフォンの分野に本格参入するには、テザリングがどうマーケットに影響を及ぼすのかを見極める必要もあります。直近では現行機種の約9割でテザリングができる状況になっています。ある調査によると、iPhone 5が発売された昨年9月はテザリングの認知が30%くらいだったものが、発売後には50%に上がり、今は約60%の方が認知しているというデータもあります。

ITmedia 今後はデータ通信のみだと厳しいですよね。テザリングの普及で端末戦略が変わった部分もあるのでしょうか。

中村氏 そのあたりは市場を冷静に見極めないといけません。ただ、弊社は中長期的には、スマートフォンのメインストリームキャリアになることを目指してきましたし、その考え方は変わっていません。

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