新しい体験と美しさ――「Xperia Z」の“ガラスの1枚板”に込めたメッセージ開発陣に聞く「Xperia Z SO-02E」(前編)(2/2 ページ)

» 2013年04月08日 17時37分 公開
[田中聡ITmedia]
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従来から大きくデザインが進化した卓上ホルダ

 Xperia Zでは卓上ホルダのデザインにもこだわった。今回の卓上ホルダは日比氏が「前の機種(Xperia AX/VL)との進化感を比べると一目瞭然」と言うほどの自信作だ。まず、Xperia AX/VLの卓上ホルダは、端末全体を覆うような形状で大柄なものだった。これは「倒れても抜け落ちない、置いたのに充電できてない不具合を絶対に起こさないような構造にしたたため」(日比氏)だ。しかし卓上ホルダに置くと端末の大部分が隠れてしまうので、デザイン性はいまひとつだった。

 「5インチフルHDディスプレイを備えるXperia Zでは、充電したまま何かを見るシチュエーションが格段に増えるので、たたずまいにもこだわりたい」と考えた。そこで“倒れても抜けない、充電の不具合を起こさない部分”は継承しながら、今までの卓上ホルダから構造を変えた。Xperia Zの卓上ホルダは包み込みタイプではなく、窪んでいる部分に本体を差し込むだけでセットできる。これなら端末の外観もほとんど隠れずに済む。

photophoto
photophoto 上下の写真とも、左がXperia Z、右がXperia AXの卓上ホルダ。端末を包み込ませるタイプのXperia AXに対し、Xperia Zの卓上ホルダは窪みに端末を入れるだけでよい。デザイン性もXperia Z用卓上ホルダの方が洗練されている

 さらに、ボディカラーごとに卓上ホルダの色まで変えるという凝りよう。携帯電話のカラーバリエーションが多い日本市場でも、卓上ホルダで複数のカラーを用意するのは異例だろう。「格好いいスタンドができたので、どうせなら色もそろえようよ」(日比氏)という流れになり、卓上ホルダも3色を用意した。「Xperia Zの世界観を持ち上げる、強くしてくれるようなスタンドができました」と日比氏は手応えを話す。カラーはシンプルに白・黒・紫を表現した。カラー&マテリアル担当の金田氏「携帯本体ではなく空間に属するものなので、スッと空間になじむような色にしました」と話す。

photophoto 本体色に合わせ、卓上ホルダも3色で展開する

ガラスのポテンシャルを引き出すカラーの手法

photo カラー&マテリアル担当の金田氏

 背面にガラスを採用したことで、薄さに加えて外観の美しさにも貢献している。Xperia Zの3色とも、光の当たり方によって色彩が微妙に変化し、“見る楽しみ”を与えてくれる。そんな本体色はどのようなコンセプトで決まったのか。

 金田氏は「カラーでも、1枚板を作りたいという(Xperia Zの)コンセプトを引き継いでいます。Xperiaでは初めてガラス素材を背面に使っていますが、ガラス素材自体は新しいものではないので、強化ガスをそのまま使うのではなく、一歩先の表現……新しい美しさをもう少し追求したいと考えて取り組みました」と説明する。

 ボディカラーのBlackとWhiteはスマートフォンの定番色ではあるが、従来のBlack・Whiteとは趣が大きく異なる。これは単にガラスパネルを採用したからではなく、技術的な工夫を施しているからだ。「BlackとWhiteには『偏光蒸着』という技術を使っていて、七色に光るように見えます」と金田氏は説明する。偏光蒸着では薄い金属膜をコーティングすることで、反射する光や透過する色をコントロールできる。

 深さや奥行き感、透明感を感じられる“漆黒”をイメージしたというBlackは、この手法のお陰で「深い青っぽさを含めた黒さを表現できました」と金田氏。Whiteは奥行き感や透明感に加えて“冷たさ”をキーワードに表現したという。「青っぽいけど、反射色は黄色を帯びていて、湖に光が反射する感じ。雪が降った翌朝の太陽と雪の関係性をイメージしました」(金田氏)

photophoto Black(写真=左)とWhite(写真=右)

 そしてXperiaでは初めて採用したPurpleも印象的なカラーだ。スマートフォンでもあまり見ることの少ない色だが、どのような経緯で採用されたのか。「Purpleは、たくさんの色を検討して、トライアルを繰り返しました。BlackとWhiteが上品な感じに仕上がってきたので、並んでもおかしくない色にしたかったんです。単に売れる色を並べるだけだと、BlackとWhiteの世界観が崩れてしまう恐れがあったので、そこは気を付けました」と金田氏は説明する。

 Purpleには偏光蒸着は使わず、偏光のパールを使うことで、光の当たり方で色彩を変えているという。金田氏は「青紫から赤紫に色が変わる」と説明する。確かに、Purpleを間近で見ると、細かい粒子が目に入る。この粒子が奥行き感を表現しており、「マジックアワーのような、表情豊かな紫」(金田氏)が完成した。

photophotophoto 角度によってはブラックにもブルーにも見えるPurple

 こうした表現は、ガラスだから実現できた部分もあるそうだ。

 「ガラスの良さやポテンシャルを引き出せるのが偏光蒸着だと思っています。プラスチックでも同じような表現はできますが、(偏光蒸着は)ガラスのソリッド感がより強調できる技術ですね。ガラスは平滑なので、反射する光が強くなったり色が変わったりするので、硬さや冷たさを持った色を見せられます。プラスチックは完全な平滑ではないので、透過する光も曲がってしまうんです」(金田氏)

photo 背面色とは色を変え、4隅には球体状の丸みを帯びさせたフレーム

 Xperia Zはフレームにディスプレイ面、背面、上下左右側面の計6つのパネルを貼り付けているが、このフレームの質感や色を6面とは違うものにすることで、メリハリを与えている。また3色とも、マットでソフトな印象を与えるようこだわった。6面とも光沢感がある中で、このフレームはマットな質感にしている。“球体”をイメージした4隅の丸みも含め、このフレームが持ちやすさに貢献している。

 フレームの色はBlackがマットブラック、Whiteがホワイトシルバーで同系色だが、Purpleはブラウンを使っている。Purpleのフレームはいろいろな色を検討したそうで、中でも「品があって先進的」という理由でブラウンを採用した。ブラウンとはいえ見た目はパープルに近く、「パープリッシュブラウン」ともいえる色に仕上がった。全体的に美しくも冷たい印象の大きいXperia Zのデザインの中で、このフレームからは温かさが感じられる。持ちやすさも含め、このフレームが果たす役割は大きいといえる。

(続く……後編では機構設計とソフトウェアの話をお届けします)

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