ソフトバンクがスプリント買収をついに完了――ユーザーメリットはどこまで実現されるか石川温のスマホ業界新聞

» 2013年07月19日 13時00分 公開
[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 日本時間7月11日(米国東部時間7月10日)、ソフトバンクがスプリント・ネクステル・コーポレーションへの投資を完了。これにより、スプリントが子会社化された。

 すでに7月9日(米国東部時間)、スプリントはクリアワイヤを完全子会社化しており、孫社長は晴れてスプリント、クリアワイヤを手中に収めることができた。

 買収が完了するや否や、スプリントは新しい料金プランを発表した。月額80ドルで通話やSMS、さらにはデータ通信が無制限に使えるというものだ。

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 通話やSMSの無制限サービスはすでに他社だけでなくスプリントでも提供している。しかし、データ通信に関しては、ベライゾンやAT&Tは2GBなどの上限があり、それ以上の利用は追加料金が発生する従量制だ。スプリントはこれまでもデータ通信は無制限であったが、今回は「契約をすればずっと定額制を保証する」(スプリント、ダン・ヘッセCEO)というのが特長となる。アメリカのユーザーからすれば「いまは完全定額制のスプリントでも、いずれベライゾンやAT&Tと同じように従量制に移行するのではないか」とみられており、スプリントの新規顧客獲得の足かせになっていたが「定額制を保証する」と宣言したことで、ユーザーが安心してMNPできるようにしたというわけだ。

 料金設定としても、TーMobileやAT&Tと比べても月額10ドル、ベライゾンとは月額20ドルも安く設定されている。

 買収を完了した翌日に新料金プランを投入するとは、まさにソフトバンクらしいスピード経営が実証されたと言え、アメリカでのインパクトは相当、大きそうだ。

 ところで、ソフトバンクがスプリントとクリアワイヤを完全子会社化したことで、実際のところ、日本のユーザーには何かしらのメリットがあるのだろうか。

 今回の買収は、ひとつには「孫社長の野望を叶える」という側面が大きいが、さらに「基地局や端末の協同調達によるコスト削減」、「1億近いユーザーを抱えることで、技術的な標準化を有利に進めることができる」などどちらかと言えば、ユーザーへの直接的なメリットは限定的のようだ。そんななかでも期待できるのが「アメリカのサービスを日本でも展開する」ということと「端末ラインナップの強化」という点が上げられる。

 例えば、今回の料金プランがアメリカで成功すれば、当然、日本でも展開するという可能性は充分にあるだろう。

 日本のソフトバンクユーザーとしても、7GB制限などは辞めてもらいたいし、孫社長にはぜひ「契約すればずっと定額制を保証する」と宣言してもらいたいものだ。日本ではアクセスチャージの問題もあり、すべての音声通話を定額にするのは難しいが、かつて孫社長は「日本のキャリアは儲けすぎている」といってボーダフォンを買収して、ホワイトプランを投入して日本の通話料金を下げてきた(そうはいっても、月々の支払額は下がっていない気もするが)。

 利益が一兆円を超えそうな勢いで儲かってしょうがないキャリアであるソフトバンクには、是非とも再び、価格破壊に挑戦してもらいたい。

 また、スプリントではサムスン電子「GALAXY S4」やHTC「HTC One」などソフトバンクで取り扱っていない製品も多い。今回、スプリントがソフトバンク傘下に入ることで、このようなラインナップがソフトバンクでも発売される可能性も出てきそうだ。

 ソフトバンクに端末を提供している日本メーカーも、スプリントに進出するチャンスも出てきた。特にシャープはスプリントに向けた取り組みを真剣に検討している模様だ(一方、一部報道のあったパナソニックのスプリント進出は現実的ではないらしい)。

 アメリカ出張する度にベライゾン、AT&T、スプリント、T-Mobileの各ショップをめぐってくるのだが、どのショップのラインナップは似たり寄ったりで、日本のようにキャリアによっての特長は皆無に近い。

 いまスプリントに提供している京セラに加え、他の日本メーカー製スマホも増えれば、それだけでスプリントの差別化に繋がる。

 2つのキャリアにとって、ラインアップが拡充されるというのは大きなメリットになるだろう。

 ただし、1つのモデルを両方のキャリアで展開するというのはまだ技術的な壁がありそうだ。

 iPhone5で見れば、A1429モデルは世界中のキャリアが展開するLTEに1モデルで対応しているが、同じようなことをスプリントとソフトバンクで実現するにはまだ厳しいようなのだ。

 スプリントとソフトバンクの両方のLTEに対応するには、単にFDDのLTEに繋がるだけでなく、当然のことながら、TD-LTEにも対応しなくてはいけない。すでにFDD-LTEとTD-LTEの両方に対応できるチップセットはあるものの、アンテナ部分や干渉問題などが解決できておらず、両方の通信規格に対応し、さらにスプリントとソフトバンクが扱う周波数帯で使えるようにするには、相当、大きな筐体になってしまうというのだ。

 そのため、いまのところはスプリントとソフトバンク向けとは別々の作り込みをしなくてはいけない模様だ。

 当然、このあたりの技術は日進月歩で進化しており、いずれ解決できるだろう。

 つまり、現状はすぐに解決できなくても、技術が進化すればするほど、ソフトバンクとスプリントにとっては有利に働く。

 時間が経過すれば、ソフトバンクとスプリントにおける様々な面で、他社には真似のできないシナジーが出てくるものと思われる。

© DWANGO Co., Ltd.

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