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» 2013年09月13日 09時28分 公開

山根康宏の中国携帯最新事情:「iPhone 5sも5cも怖くない」──XiaomiがAppleを超える理由 (2/2)

[山根康宏,ITmedia]
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中国ユーザーが好むのは「契約フリー」「SIMロックフリー」

 2013年9月10日にAppleが発表したiPhone新機種のうち、「iPhone 5c」では99ドルという低価格を設定した。だが、これは2年間継続の契約を結んだ価格で、端末にはSIMロックもかかるはずだ。Appleは新製品発表で毎回米国における継続契約価格をアピールすることで、あたかも本体価格が安い印象を与えている。一方で、長期の継続契約が一般的ではなく、しかもSIMロックフリー端末が基本の中国では、このような「契約込み・SIMロック付き」製品の価格に割安感を感じるユーザーは少ない。

 「Xiaomi M1」は、SIMロックフリーで継続契約も一切不要なのに、本体価格1999元を実現した。これは、海外メーカーのハイエンド製品を購入できなかったユーザーでも十分購入できる価格帯だ。Xiaomiは、スマートフォンを「あこがれの高級品」ではなく「高スペック、高品質、しかも安い」という条件で、限られた富裕層以外でにもスマートフォン市場を拡大することに成功したといえる。

 加えて「Xiaomi M1」は販売方法も斬新だった。製品の取り扱いはオンラインショップに限り、リアル店舗では販売を行わなかった。オンラインショップでは限定台数を予約で受け付け(それでも10万台)、それが完売すると、次も限定台数で再び予約を受け付ける。この繰り返しで流通や小売店での販売コストを抑えるとともに、売れ残りによる不良在庫リスクの削減を目指した。

 この販売手法は、新しい製品に飛びつくアーリーアダプタ層がこぞって注文したことから「即日完売」のニュースが中国全土に流れ、そのニュースを読んだ一般のユーザーが「Xiaomiの製品はすごいらしい」と評価するようになる。この“連鎖”でXiaomiの知名度は高まっていくことになった。

 「Xiaomi M1」が発売されたころ、中国はマイクロブログの利用が急速に進んだ時期でもある。以前であればオンライン販売のみで製品の認知度を上げるのは限界があっただろう。だがマイクロブログブームに乗ったことで、Xiaomiの製品情報や評価はクチコミで広大な中国全土でも“拡散”することが可能になった。

 このように、Xiaomiは事業者を通じて契約や割引販売を行わずとも、製品の品質を高めることとオンライン販売に特化することで、新興メーカーでも成功することを証明した。現在、Xiaomiのスマートフォンは、中国の各移動体通信事業者たちが正規に取り扱うようになり、その直営店舗でも購入できる。中国らしいといえばらしいのだが、Xiaomiが成功したことで、中国のメーカーの中には、同じようにオンライン予約販売に徹するところや、「小XX」「XX米」など名前をもじったメーカーや製品が多数登場している。

ほかのメーカーを大きく引き離す最新モデルの完成度

 Xiaomiを創業したCEOの雷軍氏が目指しているのは会社の規模拡大や全世界への展開、さらには「世界を変えよう」といったものではない。無理な投資を行い会社を巨大にすることを目指すのではなく、自分たちのコントロールできる範囲で製品の開発や今後の利益目標を立てている。中国には、AlibabaやTencentなど巨大なネット企業が生まれているが、雷軍氏はそれをうらやましいとは考えず、自分の会社は小さいままでいいという。だが、会社規模に対するその考えは本心でなく、あくまでも会社経営の最終目標は規模の拡大ではない、ということだろう。

 2013年9月5日に発表した「Xiaomi M3」は、これまで以上に高品質なモデルとなった。プロセッサーはSnaprdagon 800シリーズ(W-CDMA版、CDMA2000版)、または、Tegra 4(TD-SCDMA版)で、ディスプレイはサイズ5インチで解像度1080×1920ピクセル、メインカメラは有効1300万画素で、本体にはNFCを内蔵する。アルミニウムマグネシウム合金を採用したボディーは、プラスチックボディーを採用してきたこれまでのXiaomiシリーズよりはるかに高級な印象だ。そして、価格は16Gバイト版が2000元を切る1999元、64Gバイト版が2499元と、歴代のXioamiシリーズと同等に抑えている。また、中国で主な3つの移動体通信事業者向けの製品を同時に発表したのも今回が初めてだ。

 中国の同等スペックの製品は実売価格で3000元以上がほどんとなので、Xiaomi M3の価格は驚異的な安さだ。ちなみに、中国で販売するiPhone 5sの販売予定価格は16Gバイトモデルで5288元、iPhone 5c 16Gバイトモデルで4488元となる見込みだ。iPhone 5sでは、中国人が好みそうな“金色”バージョンも投入する予定だが、半額以下のXiaomi M3の存在は大きな脅威となるだろう。

またもや1999元で登場したハイスペックなXiaomi M3(写真=左)。アルミニウムマグネシウム合金を、Xiaomiシリーズで初めて採用した(写真=右)

 繰り返すが、Xiaomiの新製品は、いつも「この価格でこのスペックはありえない」という驚きを中国のユーザーに与えてきた。雷軍氏の狙いはまさにそこにある。「ほかのメーカーには絶対にまねのできない、低価格とハイスペックを両立した製品を出すことで世の中を驚かす」という動機がXiaomiにおける製品開発の原動力になっており、その結果が利益を生むと雷軍氏は考えている。

 Xiaomiは、AppleやSamsungをライバルとは考えていない。目を向けているのはユーザーで、そのユーザーから高い評価を得るために最高の製品の開発を行っている。

 Xiaomiのスマートフォン販売台数は、四半期ごとに前期を上回っている。2012年の総販売台数は719万台で、2013年は1000万台を越えることが確実といわれている。調査会社のABI Researchによると、2013年第2四半期における世界の携帯電話販売台数で、Xiaomiは380万台の13位にランクインした。11位がBlackBerryの680万台、12位はHTCの660万台となっている。Xiaomiは、HTCの約半分ではあるものの、わずか数機種、しかも、ほぼ中国だけでこの数を売り上げている。

 なお、調査会社のCanalysのデータによれば、中国だけをみると携帯電話総販売台数でXiaomiは12位だが、スマートフォンだけで集計すると、1位がLenovo、2位はCoolpad、3位はHuawei、4位がZTEとなっており、Xiaomiが5位と続く。Appleは低価格モデルがないことが響いて6位止まりと、Xiaomiに販売数で抜かれている。

 こうなると海外展開にも期待したいところだが、現時点では香港と台湾のみで、いずれもオンライン販売だけとなっている。どちらの国も同じ中華圏であることからビジネス展開も行いやすかったのだろう。ほかの中国メーカー各社は東南アジアや欧州に販路を広げつつあるが、Xiaomiは背伸びをしない経営で少しずつ手の届くところから参入を図っていくようだ。また、Appleのように移動体通信事業者を介した販売手法を取っていないことから、しばらくは海外展開が急激に進むことも考えにくい。

 とはいえ、高品質で低価格なXiaomiの製品はいずれ海外の移動体通信事業者や端末販売業者、そして、ユーザーから自国での販売を期待する声があがるだろう。8月末にはGoogleのAndroid担当幹部、ヒューゴ・バラ氏がXiaomiの副社長に就任すると自ら明らかにしている。これは、XiaomiのスマートフォンがGoogleからいわばお墨付きをもらったようなものだ。世界が認めだしたXiaomiの今後に注目したい。

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