インタビュー
» 2013年09月20日 15時00分 公開

“iPhone戦線”でドコモはどう戦うか――NTTドコモ加藤社長 単独インタビュー神尾寿のMobile+Views(1/2 ページ)

「ドコモからiPhone」の発表から1週間あまり。いよいよドコモから「iPhone 5s」「iPhone 5c」が発売された。ドコモはどのような姿勢で“iPhone戦線”に望むのか。加藤薫社長にインタビューした。

[神尾寿,ITmedia]

 NTTドコモからiPhone発売。あの電撃的な発表から1週間あまり。最後発にして最大手のNTTドコモによるiPhone取り扱い開始は、世間の耳目を集め、メディアではドコモ版iPhone絡みのニュースが絶え間なくあふれた。

 そして9月20日、いよいよドコモをはじめとする大手キャリア3社でiPhone 5sとiPhone 5cが発売された。ここから先は各キャリアの熾烈な競争が始まるわけだが、その中で、ドコモはどのような姿勢で“iPhone戦線”に臨むのか。

 今回のMobile+Viewsでは、NTTドコモ代表取締役社長の加藤薫氏に単独インタビュー。iPhone取り扱い開始についての意気込みやドコモの競争優位性などについて話を聞いた。

ドコモの強みは「ネットワーク」と「サービス」

photo NTTドコモ 代表取締役社長 加藤薫氏

――(聞き手:神尾寿) いよいよドコモから「iPhone発売」という形になりました。まずは率直な意気込みをお聞かせください。

加藤氏 以前からドコモのラインアップとして、iPhoneを取り扱いたいと考えていました。それが実現できて、まずは素直に嬉しいですね。お客様からは「ドコモのネットワークでiPhoneが使いたい」という声を多くいただいていました。ようやくそれに(ユーザーの要望に)応えられるようになることが一番よろこばしいことですね。

―― 長年のドコモユーザーの声に応えられた、と。

加藤氏 ええ。iPhoneそのものはとても素晴らしい、アメージングなスマートフォンです。ドコモは安定して快適なナンバー1のネットワークを用意し、お客様にiPhoneの世界を存分に楽しんでいただきたいですね。

―― iPhone 5s/5cの発売に先立って行われた一部の市場調査では、「ドコモ版iPhoneを使いたい」という声が全体の5割を超えました。“ドコモのiPhone”に期待するユーザーは多い。そのことについて、どのように思われますか。

加藤氏 めちゃくちゃ嬉しいですね(笑)。本当に嬉しいです。むろん、ドコモのiPhoneに期待するお客様をずいぶんお待たせしてしまったのは申し訳なかったという反省はあります。しかし前を向いて、しっかりと期待には応えていきたい。

 我々ドコモは今回初めてiPhoneを扱います。準備期間が短いのは確かなので完ぺきに、とはいかないかもしれません。しかし、iPhone対応に向けた準備は、最速で、急ピッチに進めていきます。ですから、販売開始当初に準備不足な部分はありますが、そこは少しお待ちいただければと思います。(ドコモ側のiPhone対応に)最大限の努力をしていきます。

―― iPhoneはKDDIやソフトバンクモバイルも取り扱っています。そうした競争環境の中で、ドコモの優位性となるのはどのような点でしょうか。

加藤氏 まずは「ネットワークの強さ」です。これは単純に数字を誇るようなものではなく、お客様に実際に使っていただいて、きちんとつながる、安定していて快適なネットワークを目指している。実効通信速度という点ではドコモに優位性があると自負していますし、(顧客満足度などで)外部の調査機関でもそのような結果が現れています。

 そして、もうひとつは「サービス」です。我々は(先行して導入しているAndroidスマートフォン向けに)dマーケットを展開しており、dビデオやdアニメなど独自のサービスを構築しています。これらの契約者数は順調に増えていまして、お客様の満足度も高い。ドコモとしては、これらドコモのサービスをiPhoneでも利用できるようにしていきます。

 そして今回、端末ラインアップにiPhoneが加わったことで、ドコモの強みが大きく増したと考えています。

―― ドコモではスマートフォン初心者向けのサポート体制の構築も熱心に行ってきていました。まだ準備期間が短い中ではありますが、今後はiPhone向けのサポート体制も構築されるのでしょうか。

加藤氏 もちろんです。今後はiPhoneもしっかりサポートできるように、アフターサービスの部分にも全力で取り組んでいきます。購入後のサポートだけでなく、購入前の部分でも、「さすがドコモショップだね」と言われるような体制を(iPhoneでも)これから構築していきます。

ドコモのネットワークの強みは、変化への対応力の高さ

photo

―― ネットワークの優位性についてですが、KDDIが800MHz帯のLTEをベースにすることで他キャリアに圧勝できる、と主張しています。この点について、いかが思われますか。

加藤氏 我々のネットワーク構成はKDDIさんと異なります。LTEは2GHz帯をベースに大容量なものを作っており、800MHz帯は“強力な3Gネットワーク”として広いエリアを実現するために使っています。この2つに加えて、iPhoneでは最大100Mbpsの通信が可能となる1.7GHz帯のネットワークも構築している。(2GHz帯および1.7GHz帯のLTEで)トラフィックの高い地域での“ネットワークの厚み”を作り、地方郊外や山間部などの“ネットワークの広がり”でも(800MHz帯3G)で他社に負けないものを作っている。総合力で見て、他社に引けを取るとはまったく考えていません。

 しかし、これは矛盾するようですが、その時々・個々の部分でネットワークの強さを誇ったところで意味のないことだとも思っています。なぜならネットワークは生き物で、お客様の利用状況や周辺環境の変化によって実効通信速度はすぐに変わってしまいます。重要なのは、そういった変化に迅速に対応し、適切な最適化をすかさず行うこと。変化への対応力の高さであり、ドコモはここに自信があります。よりよいネットワーク環境を構築するというのは、立ち止まってはできないことなのです。

―― LTEという観点では、ドコモのXiは日本で最も早く商用化されました。そして収容しているユーザー数の規模も、他社よりも大きい。そういったノウハウの蓄積による優位性はあるのでしょうか。

加藤氏 ええ。ドコモにはたくさんのLTEユーザーがいます。その数は、他社よりも多いわけです。ですから、多くのLTEユーザーがネットワークの資源をどのように使うのか、それに対応するにはどういったチューニングが必要なのか、急なトラフィック変動にどう対処するのか。そういったネットワーク設計や運用のノウハウを数多く持っています。それが周波数の使い方や制御のしかたにおいて駆使されています。

―― 今回、私はドコモ版iPhone 5sを用いてレビューを行ったのですが、特にドコモの強みと感じたのが、屋内でLTEが入りやすいという点でした。屋内への取り組みは注力されているのでしょうか。

加藤氏 もちろんです。都市部では基地局のアンテナ向きやチルトのかけ方など、綿密な計算に基づいて屋内でもLTEが利用しやすいように調整をしています。また、基本的なこととして基地局の密度もしっかり高めていく。

 都市部では2次元ではなく3次元で電波を染み渡らせて、トラフィックの偏在に対応できるように電波出力の強弱にもきめ細かな調整を施しています。こういった地道な取り組みが、「屋内でもLTEが入りやすい」という結果につながったのでしょう。

―― 都市部でドコモのLTEが快適なのには、最適化の努力を惜しまない、という部分に理由がありそうですね。他方で、ドコモのユーザーは地方にも多くいらっしゃいます。地方でのLTE展開についてはどのような姿勢で臨むのでしょうか。地方でもドコモ版iPhoneは使いやすいものになりますか。

加藤氏 地方といえども地方都市と郊外部で戦略は変わってきますが、基本姿勢は「基地局を増やしていく」というものです。地方の都市部では2GHz帯のLTE基地局を使ってネットワークを強化し、郊外では800MHz帯を活用していくのが基本方針ですね。

―― 今回のiPhone発売が、ネットワーク構築の戦略に何か影響するということはあるのでしょうか。

photo

加藤氏 iPhoneによってフィーチャーホンからスマートフォンの乗り換えが加速するでしょうから、全体的なトラフィックは増加するでしょう。その上で、これまでのAndroidスマートフォンとはトラフィックの出方や偏在のし方に違いがあるかもしれません。しかし先ほどお話ししたとおり、ドコモではトラフィックの変化に柔軟に対応できる体制を整えていますから、きちんと状況をモニタリングし、きめ細かく最適化していくことで、(iPhone発売後も)快適なネットワーク環境をご提供できると考えています。

―― KDDIから「LTE競争はダントツで勝てるのでは」という発言も飛び出しましたが。

加藤氏 なかなかそう簡単にはいかないのではないでしょうか(笑)。むろん、800MHz帯をLTEで運用するのはひとつの戦略ですし、それによってLTE競争でキャッチアップはされるのでしょうが。

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