スマートモビリティアジア2013@福岡で、ナビタイムジャパン代表取締役社長の大西啓介氏と、糸島市役所経済振興部シティセールス課課長の溝口和也氏が講演し、糸島市のレンタサイクルサービスに、ナビタイムジャパンの自転車NAVITIMEを組み合わせる実証実験を行うことを明らかにした。
糸島市は、福岡県の西側にある糸島半島に位置する、人口約10万人の自治体で、福岡市のベッドタウンという側面も持つエリアだ。JR筑肥線の筑前前原駅や、西九州自動車道前原インターチェンジは、福岡市の中心部にある博多や天神からおよそ30分程度の時間距離で、博多駅や福岡空港にもアクセスしやすいという特徴がある。美しい海岸や豊富な農林水産物などがウリで、例えば内行花文鏡という日本最大(直径46.5センチ)の銅鏡が出土した場所であったり、ファーマーズマーケットJA糸島「伊都菜彩」が人気だったりと観光資源も多いため、昨今は雑誌などにも多く取り上げられている。
また水素エネルギーに関する日本初の製品研究試験センターや世界最先端の半導体研究施設を持つ九州大学伊都キャンパスも、福岡市と糸島市にまたがる位置にある。伊都キャンパスは日本の大学の単一キャンパスとしては最大の規模で、多くの学生が集まっていることもあり、同市を訪れる人も増加傾向にあるという。
ただ、市内の観光資源は多くの地域に点在していて回遊性が悪く、観光客は1カ所に訪れてそのまま帰ることが多いのが課題だ。そこで糸島市では、いとしま周遊バス、観光タクシー、超小型モビリティのレンタル、レンタバイク、レンタサイクルなどを用意して、周遊観光の推進を図っている。
レンタサイクルは、JR筑前前原駅北口の糸島市観光協会で実施しており、電動アシスト付きの自転車が9時から17時まで借りられる。利用料金は2時間で500円、半日(4時間)で800円、1日(8時間)で1200円。延長は1時間ごとに200円となっている。
このレンタサイクルについて、糸島市では借りた人の年代や性別、利用時間は把握できているモノの、どこを走っているのかが分からないため、今回の実証実験を通して、個人が特定できない形でログを集め、具体的な走行コースや移動ルートをもとにして、貸出場所の再考や新しい移動ルートの提案、観光資源のブラッシュアップなどに活用する計画だ。
実証実験では、現在あるレンタサイクルにAndroidスマートフォン(AQUOS PHONE ZETA SH-06E)を取り付け、ユーザー向けに「自転車NAVITIME」によるナビサービスを提供しつつ、ログを取る。返却後はどんな情報が欲しかったか、といったユーザーアンケートを取るほか、ログの分析を通してモデルコースの見直しなども検討していく。
ナビタイムジャパンは、こういった交通ビッグデータを活用したコンサルティングはすでに手がけており、同社のノウハウを分析に生かす。
すでに、ナビタイムジャパンが提供する「NAVITIME」「ドライブサポーター」「乗換NAVITIME」「バスNAVITIME」「自転車NAVITIME」「こみれぽ」「Kolecty」といったアプリを通して、ユーザーの検索履歴データなどを蓄積しており、そのデータはさまざまな形で活用されている。
例えば道路の走行実績をプローブ交通情報として活用し、VICS情報が配信されていない道路の渋滞予測をしたり、カーナビの移動ログを活用して、道路交通上の問題点を検出したりしている。新設したインターチェンジの効果測定や、有料道路の利用状況調査なども実施可能だ。
また、NAVITIMEは移動前にルートの検索を行うので、経路検索の実績データを元にして、いつ、どこに人が集まるのかをリアルタイムに把握することもできるという。イベントなど人が集まる場所には、検索が集中するからだ。到着時間の検索結果から、人が多く訪れる時間帯なども予想でき、それに基づいて混雑対策をしたり、あるいは飲食店で仕入れの量を変えたり、といったことも可能になる。
ビッグデータを活用した地域活性化の実験がどういった実を結ぶのかは、3月に開催予定のスマートモビリティアジア2013@東京で明らかにされる。
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