キャリアアグリゲーションを先行導入するKDDIに対し、ドコモは夏モデルを「VoLTE」に対応させる。VoLTEとは、LTEのデータトラフィックに音声通話を乗せる技術。既存のIP電話と仕組みは似ているが、無線部分まで制御が可能なため、通話の品質を確保しやすいのが特徴となる。「090」「080」「070」などの電話番号も従来の回線交換方式の電話と同様に利用でき、警察や消防への緊急通話も行える。IP電話方式のクリアな音声と、回線交換方式の安定性のいいところ取りをした方式といえるだろう。
キャリアアグリゲーションと同様、VoLTEも基地局だけでなく、端末の対応が必要となる。ドコモは近く発表されるとみられる夏モデルをVoLTEに対応させる予定だ。ドコモ 代表取締役社長 加藤薫氏は「音もきれいで遅延が少なく、これはお客様にとって非常に(大きな)メリット」だとして、クリアな音声を売りにしていく方針を語った。
料金については、「検討中だが、今回の新料金プランの中に組み込めたら」(同)と述べている。この言葉から、VoLTEの利用によって追加の料金が必要となることはなさそうだ。ただし、新料金プランへの変更が必須となる可能性は残されている。
VoLTEを他社に先駆けて導入するドコモはさらに、2014年度内に下り最大225Mbpsのキャリアアグリゲーションを導入する。4月25日に開催された決算会見で、加藤氏がその方針を語った。キャリアアグリゲーションは、「年度末、早めに入れたい」(同)という。KDDIのように、夏から10MHz幅を2つの周波数帯で始めるのではなく、30MHz幅、225Mbpsが実現できるのを待つことになる。
KDDIよりキャリアアグリゲーションの導入時期が遅くなるのは、すでに1.7GHz帯で20MHz幅、下り最大150Mbpsのサービスを実現できており、メリットが薄いと判断したからだと思われる。ドコモはこの周波数帯のLTEを都市部にも展開しているため、20MHz幅にとどまるならキャリアアグリゲーションを急いで導入する必要はないというわけだ。加藤氏は次のように語っている。
「KDDIさんがなされているのは、今ある周波数で150Mbpsを実現している。すでにお使いの方がいるため、150Mbpsを享受できる方はちょっと少ないかなと思っている。私どもはまったく新しい道(周波数帯、1.7GHz帯のこと)を作っていて、冬モデルから端末は対応しているので、たくさんの方が速度を体感できる。スピード的には、もう少し上を狙っていきたい」
今期はLTEの基地局も大幅に拡充し、2014年度末で9万5300局を目指す。加藤氏が「スピードは出ているので、さらにそれを広げるとともに、トラフィックに対する体力をつけたい」と述べているように、キャリアアグリゲーションより単一周波数での高速化を先に行っていく。そして「100Mbps以上の基地局は今年度で4万(13年度末で3500局)に達する。前倒しで達成したい」と加藤氏が話すように、KDDIのキャリアアグリゲーション対応基地局を数の上で大きく上回る方針だ。
つまり、キャリアアグリゲーションへの対応状況は、保有する周波数帯を現在どのように活用しているかでも異なってくる。KDDIが速度だけでなく、通信の安定性やリソースの有効活用をアピールしたのには、100Mbps以上の速度に対応した基地局を急速に拡大するドコモへの対抗という意味合いもある。一方で、KDDIはVoLTEについては「検討中」(内田氏)としており、導入時期を明かしていない。先に発表された新プランのインパクトも含めて考えると、音声通話についてはドコモが一歩リードしそうだ。
キャリアアグリゲーションとVoLTE――LTEに関連した2つの技術は、この夏の重要なキーワードとして注目しておきたい。
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