夏商戦を読み解くキーワードは、「通信」になりそうだ。
KDDIは4月21日に、夏モデルの発売を皮切りにLTE-Advancedの要素の1つである「キャリアアグリゲーション」を導入すると発表。2GHz帯と800MHz帯のLTEを掛け合わせ、下り最大150Mbpsの通信速度を実現する。
これに対してドコモは、2014年度内にLTE-Advancedを導入する予定だ。同社はすでに150Mbpsのサービスを1.7GHz帯で行っていることから、キャリアアグリゲーションは夏商戦には導入しない見通し。代わりに、音声通話をLTE網の上に乗せる「VoLTE」を他社に先駆けて開始する。
今回の連載では、夏商戦の焦点になるとみられるキャリアアグリゲーションとVoLTEを、あらためて解説。両社がそれぞれの技術を開始する狙いを解き明かしていきたい。
2つの異なる周波数帯を同時に利用し、通信速度を上げる「キャリアアグリゲーション」を国内で初めて導入するのがKDDIだ。同社は4月21日に、キャリアアグリゲーションを夏モデルに合わせて開始すると発表。当初は10MHz幅、下り最大75Mbpsでサービスを行っている2GHz帯と800MHz帯を合わせて利用し、下り最大150Mbpsの速度を実現する。3.9世代に属するLTEの“次”の規格が、第4世代のLTE-Advanced。
キャリアアグリゲーションはこのLTE-Advancedを構成する技術の1つで、異なる周波数帯を掛け合わせて利用し帯域を広げることができる。帯域が広がるのは、速度が上がるのとイコールだ。
KDDI 技術統括本部 執行役員常務 内田義昭氏によると、「LTE-Advancedで目指すのは、広帯域化、小セル化、多アンテナ化」の3つ。キャリアアグリゲーションは、1番目の「広帯域化」に相当する。内田氏によると、単に速度が上がる以外のメリットもあるという。その1つが通信の安定化だ。
内田氏が「無線なので環境によって変わるところもあるが、800MHz帯だけでスピードが出ないと、どうしようもなくなる。キャリアアグリゲーションであれば、もう一方の電波で補完することができる」と述べているように、片方の電波が弱くなっても快適な通信を継続できるのは大きなメリットだ。これに加えて、どちらか片方の周波数帯に通信が偏らないことも特徴となり、全体としてリソースを有効活用できるようになる。
KDDIではすでに2GHz帯を20MHz幅利用し、下り最大150Mbpsのサービスを行っているが、連続してこれだけの周波数帯を使えるエリアはあまり多くない。3Gとの兼ね合いもあり都市部では主に10MHz幅、下り最大75Mbpsにとどまっていた。こうした事情もあって、「20MHz化した基地局は700ぐらい」(内田氏)と、高速エリアを十分に広げられていない。これに対してキャリアアグリゲーションを導入すると、既存の2GHz帯と800MHz帯の基地局を活用できるため、「当初は2500カ所ぐらい」(同)まで一気に150Mbps対応エリアを広げられる。2014年度内には「2万局まで持っていきたい」といい、キャリアアグリゲーションを本格活用する構えだ。
国内ではキャリアアグリゲーションのトップバッターとなるKDDIだが、他社に先駆けて導入できたのは、「工事の際、計画の際に必ずデュアルバンドでエリアを作るようにしてきた」(技術統括部 モバイル技術企画部長 吉田智將氏)という背景がある。2つの異なる周波数帯を持つ基地局の連携は「ケーブル接続。最近の無線機はソフトウェアで動くので、信号が流れるケーブルで両方の無線機の間につないで連携させる。今のところは同じベンダーで連携するように作っている」という。
ただし、キャリアアグリゲーションを利用するには、対応するチップセットを搭載した端末が必要なる。KDDIは、この対応モデルを夏モデルとして取りそろえていく方針だ。端末は「機種数は申し上げられないが、スマートフォンへの搭載を考えている。1機種ではない」(内田氏)とことで、複数モデルが登場する見込みだ。すでに「インフラレディ」とのことで、対応端末が発売されればすぐに利用可能になるという。
KDDIは1.5GHz帯でもLTEを展開しているが、こことほかの周波数帯とのキャリアアグリゲーションはまだ開始しない。ピコセルなどの小型基地局を範囲の広い基地局に重ねて、容量を上げる「HetNet」も、この時点では導入されない。HetNetにおいて基地局間の干渉を減らす技術「eICIC」は年内に試験が終わるそうで、LTE-Advancedの全要素を網羅するのはもう少し先になりそうだ。
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