ソニーは9月3日(欧州時間)、独ベルリンで9月5日より開催される「IFA 2014」に先立ち、報道関係者を集めた製品発表会を開催した。PC部門である「VAIO」切り離しやテレビ事業の分社化など、ここ最近はエレクトロニクス分野でやや暗い印象のある話題の続いたソニーだが、今回のIFAでは「どこ吹く風」とばかりにユニークなラインアップが多数お披露目され、往年のソニーをほうふつとさせる不思議な期待感を抱かせるのに十分な内容だった。
IFAのプレスカンファレンスに登壇したソニー社長兼CEOの平井一夫氏は、去年のIFAをはじめここ最近頻繁に用いている「KANDO(感動)」というキーワードを持ち出し、人々に「おぉ」という体験を技術でどこまで提供していけるかという同社の哲学を引き続きアピールした。確かにビジネス面だけを追いかけると没個性的な商品ラインアップへと陥りがちだが、ここにちょっとした独自のアイデアや思いなどを加えることで、人々に感銘を与える製品へと生まれ変わるのかもしれない。
ユニークさという意味では、スマートフォンとの連携を重視して登場した「レンズカメラ」は、こうした方向性を志向するソニーらしい商品だといえるかもしれない。1年前のIFAで「DSC-QX10」「DSC-QX100」の2製品が発表された際、その興味をひく外観と実際の使い勝手のバランスで賛否両論あったわけだが、今回のIFAでソニーは再び第2世代にあたる製品をリリースし、この路線を維持していく方針をアピールした。
今度の新モデル「DSC-QX30」ではQX10で10倍ズームだった機能を30倍ズームまで拡大している。さらに「ILCE-QX1」は、NEXやα7で使われているEマウントの交換レンズを取り付け可能で、交換レンズそのものをスマートフォン用カメラとして利用できる、ある意味で究極の製品だ。
さらに従来製品のQX10にはカラーバリエーションが追加され、さらにラインアップが拡充されている。コンパクトデジタルカメラ市場が年々縮小していくなか、スマートフォン連携に活路を見出したこのユニークな製品群が第2世代へと進化し、どこまでユーザーに受け入れられるのか、非常に楽しみだ。
また競合製品に押されがちではあるが、さらに小型になったアクションカメラの「ActionCam Mini」、ハイレゾ対応したWalkmanの普及モデル「NWZ-A15」も登場し、従来のソニーの主力製品は機能性での差別化をプッシュし始めている。根強い固定ファンもおり、レンズカメラとともに1年後の動向が楽しみだといえる。さらにソニーは隠し球として「ポータブル超短焦点プロジェクター」のプロトタイプをIFAで発表しており、「何か」を期待させるのに十分な可能性を今回の同社は秘めていたと筆者は感じている。
ソニーのIFAプレスカンファレンス後半は、スマートデバイスの話題だ。近年、「ウェアラブル」と呼ばれる「身に付けて活用する」タイプのデバイスが一種のブームとなっているが、日々の生活情報をこのウェアラブルデバイスを用いて収集し、健康管理や行動計画に役立てる「ライフロギング」が同社におけるスマートデバイス戦略の中核の1つとなっている。
ウェアラブルデバイスとしては、腕時計型端末の「SmartWatch」を他社に先駆けて発表したソニーだが、今回の「SmartWatch 3」はその3世代目にあたる。従来の独自路線から、最新モデルではAndroid Wearに対応し、デバイス連携やアプリ活用をさらに重視した点が特徴だ。
またライフロギング用に「SmartBand Talk」が発表されているが、こちらは防水対応の電子ペーパーディスプレイを備えた非常にシンプルな外観となっている。スマートフォンとの連携が可能で、本体内蔵のマイク/スピーカーを通して音声通話やボイスコマンドによる操作が可能だ。このほか、ソニーからはスマートグラスが発表されている。詳細については追ってIFAのリポートの中で紹介していきたい。
スマートフォンについては、Z1以降半年間隔のリリースとなったフラッグシップの最新版「Xperia Z3」が発表されている。厚さ7.3ミリとさらに薄型になったほか、ディスプレイサイズはZ2と同等の5.2型ながらフレーム部分がさらに細くなり、より大画面になったような印象を受ける。バッテリー駆動は最大2日間、防水/防塵(じん)に対応する。本体色は従来のブラックからホワイトがメインとなり、さらに独自の新色として「カッパー」「シルバーグリーン」が追加されている。ハードウェア的に大きく進化したのがカメラ部分で、レンズとセンサーの改良により、さらに広角での撮影が可能になったほか、ISO12800の高感度撮影対応により暗所でも安定した撮影が行えるなど、さらに使い勝手が向上している。独自アプリのさらなる追加や本格的なハイレゾ対応なども特徴だ。
Z3シリーズのバリエーションとしては、Z2時代にはなかった小型モデルの「Xperia Z3 Compact」が今回の世代で追加され、さらにタブレットは8型サイズの「Xperia Z3 Tablet Compact」が用意されている。主にミッドレンジ以下を狙った「Xperia E3」もラインアップされており、今回はウェアラブルを含めてスマートデバイス6製品がZ3世代として登場することになった。またZ3世代のデバイスの特徴としてPlaystation 4連携が打ち出されており、PS4のコントローラーであるデュアルショックと組み合わせることで、テレビのない場所でもZ3のディスプレイをゲーム画面として利用するリモートプレイが可能になっている。リビングから離れた場所でPS4を遊べるというわけだ。
Z3世代での変更点は少ないようにも思えるが、従来まで不満だった点を着実に解消して進化を続けており、製品として非常にこなれてきている。半年という比較的短いサイクルでの製品リリースとなっているが、これもユーザーのニーズを確実にくみ取り、最新技術をキャッチアップするための手段だと考える。ソニーの原点に立ち返ってユニークな体験を推し進める一方で、こうした着実な進化を遂げる主力デバイス。この対比の中で将来のソニーを担う新商材が生まれてくるのかもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.