ソニー平井一夫社長がモバイル事業で「他社との提携」を明言 ━━相手になるのは中国メーカーか、それとも日本メーカーか石川温のスマホ業界新聞

» 2015年02月27日 12時00分 公開
[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 2月18日、ソニーが経営方針説明会を行った。そのなかでエレキ分野においては、今後、分社化を進めていくとした。平井社長は「それぞれで自立した経営をしていく。厳しい環境のなかどうやって会社を伸ばしていくか。本社に頼ることなく、責任をもって経営していく。各事業にとって、より強くなっていく」と語っていた。ただ、これまで平井社長は「ソニーにとってエレキの復活が重要」と力説していたにもかかわらず、ここにきて「エレキの分社化」を発表するとは、かなり迷走している感が否めない。なんだか、社長が責任を分社化する会社に押しつけている気もする。

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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2015年2月21日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額525円)の申し込みはこちらから。


 モバイル・コミュニケーション分野においては、ソニー・エリクソンからソニーが出資比率を上げ、完全子会社化したことで、ソニー本体との距離が縮まったというメリットがあった。現状、Xperiaはソニーが持つサイバーショットやハイレゾ技術が搭載されていることで、プレミアム路線を何とか保てている状況だ。これが、他の部門が分社化されてしまっては、それぞれの会社にまた大きな溝ができるだろうし、Xperiaにソニーの技術が惜しげもなく投入する関係が壊れてしまうのではないか。ウォークマンを手がける会社とすれば、いままで以上にXperiaはライバルに位置づけられてしまうし、それでは足の引っ張り合いにしかならないように思える。それよりも両部門が仲良くして、ソニー・モバイルコミュニケーションズの知見を生かし「SIMカードスロット内蔵ウォークマン」を作った方が、よっぽど良いように思える。

 また、平井一夫社長はモバイル・コミュニケーション事業を「事業変動リスクコントロール領域」に設定。Xperiaは今後、リスクの低減と収益性を重視する経営にしていくと明らかにした。平井社長は、テレビとモバイル・コミュニケーション事業において「他社との提携も検討する」と明言したのだった。

 「いずれソニーはモバイル・コミュニケーション事業を売却するのではないか」という噂話はあったが、平井社長自身が「他社との提携を検討する」とはっきり言い切ったのには驚いた。表向きは「具体的な話はない」と語っていたが、この段階で語ったということは、いきなり発表して世間を驚かせるよりも、予告しておくことで、衝撃を和らげようとしたのかも知れない。

 ここで気になるのが、もし仮に提携するとなった場合、どんな会社が適任か、という点だ。最初に思いついたのが中国メーカー、Xiaomi(小米、シャオミ)だ。いま、世界でみても最も勢いのあるメーカーであるのは間違いない。中国だけでなく、世界に進出する上でソニーと組めれば好都合だ。しかし、ソニー側とすればブランドや特許などをごっそり持って行かれる可能性もあるため、警戒しなくてはいけない存在だ。

 その点、日本メーカーと組んだ方が、お互い信頼できるパートナーになるだろう。まず、日本メーカーのなかで思い浮かぶのがシャープだ。テレビとモバイル・コミュニケーション事業をまとめて提携すれば、開発面のシナジーが出そうなのはシャープのような気がしてならない。ソニーもシャープもスマホだけでなく、テレビもAndroidで開発しようとしている。開発効率を優先すれば、この2社の相性は悪くないはずだ。ただ、販売面で見ると「BRAVIA」と「AQUOS」でかなりのライバル関係にある。もちろんスマホも「Xperia」と「AQUOS」であり、シナジーと言うよりも食い合う可能性もあり得そうだ。シャープがソニーと提携したがっているかといえば、かなり微妙な気がしている。

 もう一つの可能性としてありそうなのが京セラだ。京セラは、地味に海外展開をしているが、ブランド力が本当に弱い。ようやく「TORQUE」というブランドが立ち上がったが、認知度でいえばかなり低い。その点、ブランド力はある「Xperia」との補完関係は期待できそうだ。また京セラは安価に製造できる強みがある。プレミアムブランドで高価格帯を狙うXperiaと京セラでは食い合うことが少ない。Xperiaをブランド力で売りつつ、京セラで安価に作れれば、経営的にプラスに働く。また、京セラはアメリカの4キャリアに納入しているが、一方でソニーはアメリカで成功を収めていない。逆にソニーは欧州に強いが、京セラの欧州進出はこのあいだ始まったばかりだ。

 そう考えると、この2社は製造開発面、販売面で、補完関係ができているような気がしてならない。ソニー経営方針説明会の翌日、京セラの幹部に会う機会があったので「ソニーと提携しないのですか」とストレートに聞いてみたら「相手は規模が大きすぎる」という答えが返ってきた。確かにソニーはモバイルコミュニケーション分野で2017年度でも1兆円前後の売上高を見込んでいる。一方の京セラは通信機器関連事業で1800億円程度しかない。そう考えると京セラが提携先になることは考えにくいが、一方でソニーの規模が小さくなれば可能性はゼロではないという見方もできそうだ。

 いずれにしても、ソニーモバイルは、手堅く失敗できない状況に追い込まれている。もし、計画を達成できないようだと「提携」もしくは「売却」という次のステップに向かうことになりそうだ。

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