9月2日(現地時間)、ソニーはドイツ・ベルリンで開催されたIFAに合わせ、Xperiaの新ラインアップを発表した。フラッグシップモデルはハイレゾ音源の再生に対応し、デザインをリニューアルした「Xperia Z3」。そのコンパクト版の「Xperia Z3 Compact」や、世界最薄・最軽量の8インチタブレット「Xperia Z3 Tablet Compact」も披露された。
これら3機種は「ソニーの力を結集したもの」(ソニーモバイル 代表取締役社長 鈴木国正氏)というように、音楽やカメラに同社の持つ技術をふんだんに盛り込んでいる。ネットワークごしにPlayStation 4のゲームを遊べる「リモートプレイ」に対応するなど、ソニーグループとの連携も一段進められた。
一方で、ソニーは7月31日の決算会見において、一部地域での販売不振を受け、販売台数見込みの下方修正や戦略の見直しを発表している(→ドコモとKDDIの決算会見で見えたもの/Xperiaの戦略を見直すソニー)。詳細な方針はまだ策定中だが、今後は同社の得意とするプレミアムラインに注力していくことになる。
こうした状況の中、ソニーはXperiaの新たなラインナップをどう位置づけているのか。また、同時に発表された「SmartWatch 3」や「SmartBand Talk」といったウェアラブル端末郡「スマートウェア」は、どのような戦略に基づいて発表されたのか。その答えの一端は、IFA会期中にグループインタビューに応えたソニーの代表執行役社長兼CEO 平井一夫氏の発言から見えてくる。ここでは、その模様をお届けしよう。
―― フラッグシップモデルとしてXperia Z3を発表した。競合がいる中での強みを教えてほしい。また、カメラを強化する中で、コンパクトデジカメ市場に与える影響はあるのか。
平井氏 PlayStation 4のリモートプレイは、鈴木(国正氏)がプレスカンファレンスで説明したとおり、Xperiaで当面エクスクルーシブ(限定的)にやっていきます。Xperiaのみで楽しんでいただけるということですね。欧米市場、特に米国でいろいろなキャリアとお話する中で、これがXperiaを採用する1つの材料になっています。
もちろん、それだけで市場を取っていくのは難しいのですが、ソニーらしさをキャリアにアピールする、そしてキャリアさんを通じてお客様にアピールする際のポイントは高い。その上で、スマートフォンとしての基本性能が大事になっていきます。
コンパクトデジカメとのカニバリ(食い合い)という点で言うと、世界的なトレンドとして、スマートフォンがカジュアルな撮影のマーケットを奪っているのは事実としてあります。そのトレンドに逆らっても、意味はありません。
私が社長になってから、ありとあらゆる技術をどんどんスマートフォンに積極的に入れていこうと言っています。自身を持ってお客様に届けられるよう、撮影の機能をピカイチにする。サイバーショットはもしかたら買っていただけないかもしれないが、その方々があえてXperiaにシフトすれば、ソニーファミリーとしてお客様をキープできたことになります。こうした他社にない強みを、徹底的にアドバンテージとして使っていきます。
―― 今回の発表で、安いWalkmanやXperiaがハイレゾに対応した。ハイレゾは高付加価値と位置づけるのか、全商品のものにしていくのか。
平井氏 これからの普及の仕方次第だと思いますが、最終的には普及価格帯の商品への展開をしていきたい。そういう日も来ると思います。
ただ、ソニーもそうですし、業界としても注意しなければいけないのが、価格が下がっていく中で、スペック的にハイレゾだから安かろう悪かろうでいいとなってしまうことです。「ハイレゾって何?」ということになってしまいますからね。お客様の体験軸で、ハイレゾは素晴らしいビジネスの種になっているので、大事に育てていくことが必要です。
例えば、ハイレゾのロゴもあり、これも各社バラバラでやっています。ソニーのハイレゾのロゴもありますが、これを無償でラインセンスして、よろしければ使いませんかとやって、採用していただいているところもあります。統一感など、そういったところを演出するのも、大事に育てることの一環です。
―― 日本ではMVNO市場が盛り上がっているが、ソニーとしてSIMロックフリーの端末を出すつもりはあるのか。
平井氏 いろいろな議論はしていますが、実際に市場に出すかどうかは、ニーズを見ながらです。絶対にそういうことをしないというのはありません。
―― スマートフォンを含め、Androidのような汎用OSを中心に作ると、差別化が難しくなる。スマートウォッチもAndroid Wearになったが、どう差別化していくのか。
平井氏 商品軸で言えば、同じAndroidでも、画質や音質、4K対応の有無、ホームファクター、バッテリーライフなど、OSに依存しない差異化はまだまだできます。
OSが共通になり、共通部分が多くなればどこで差別化するのか。ソニーで言えば、コンテンツでの勝負になります。スマートフォンやタブレットが普及すると、いろいろな形でコンテンツを楽しむ機会が増えます。AndroidでもiOSでも、それが広がってもらえれば、コンテンツの価値はどんどん上がっていき、ソニーグループとしての新しい収入源になります。
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