―― IP電話の音声定額サービス開始を表明されていましたが、これについて詳しく教えていただけないでしょうか。
佐々木氏 MVNOを検討している中で、音声通話が従量課金ということで考えてしまう(思いとどまってしまう)方がいます。この課題を解決したいというのが狙いです。弊社にもカケホーダイプランがあればということで、今検討を進めています。
―― 料金はいくらぐらいになるのでしょう。
佐々木氏 他社(MNO)の半額ぐらいですね。
―― 電話番号は050で始まるものになるということでしょうか。
佐々木氏 そこも含めて検討中です。カケホーダイサービスはMVNOで初めてになるので、インパクトを与えていきたいと思います。固定電話と携帯電話に発信でき、ネイティブの電話帳に近い感覚で使えて、着信履歴なども同期するアプリを今開発しているところです。
丸山氏 電話し放題は3つの「放題」のうちの1つで、ここに「印刷し放題」と「食べ放題」が続きます。
―― その2つはあまり通信と関係がないような気もします(笑)。
丸山氏 印刷し放題は、写真を撮る方がどんどん増えていて、昔はフィルムで撮ってアルバムに入れていたものが、今はスマホの中にたまっています。そんなスマホに最適なサービスということで、印刷し放題があります。写真を撮ると、クラウドに自動的に上がり、写真が届く。あまり操作を意識しなくても使えるものになっています。
食べ放題は、今やっているバリュープログラムを拡張したものです。例えばリアルな店舗で焼肉を食べ、アンケートに答えてバリュープログラムに登録すると、そのうちのいくらかが戻ってくる仕組みです。リアルな店舗でやったことがネット上に還元され、値引きにつながるのが新しいところですね。
―― そのバリュープログラム自体は好評なのでしょうか。利用状況を教えてください。
佐々木氏 1人あたり、平均で637円の割引になることが見えています。データ3Gバイトで900円なので、支払いは300円を下回ります。これはかなりお得なサービスを提供できたかなと思っています。中には、バリュープログラムで稼ぎすぎて、毎月の料金の支払いがない方もいます。
当初はAndroid向けにしかアプリがありませんでしたが、4月20日にはiOS向けのアプリもリリースしました。ニフティとしての売り上げは減りますが、お客様にとっては使いやすいと思います。
―― あまり売り上げが減ってしまうと、もうからないのではないでしょうか。
佐々木氏 裏側の仕組みには、リワードやアフィリエイトと呼ばれるものを入れていて、それをニフティからお客様にお返しする形になっています。
丸山氏 ちなみに、社内で作っていたときのプロジェクトネームは「タダスマホ」でしたが、絶対タダになるわけではなく、怒られてしまうので今の名前になりました(笑)。
―― 契約者数はどの程度になりましたか。
丸山氏 数は公表できませんが、少なくともどんどん伸びていることは確かです。1日に数百件の規模で入ってきています。あとは、日数を掛けて計算していただければ(笑)。
―― サービス開始からまだそこまで日がたっていませんが、どのようなルートでユーザーを開拓しているのでしょうか。
丸山氏 もともとISPをやっていたチャネルで、インバウンドの電話がベースとしてあります。ここは今までのノウハウを生かしてやっています。ほかにも、ヨドバシさんなどの家電量販店が一部、Amazon、楽天、Yahoo!あたりのECサイトもあり、バランスよくやっています。
―― ISPのサービスやコンテンツとの連携が、まだ弱いような印象を受けますが、今後、どのような形で固定とモバイルをつなげていく予定でしょうか。
丸山氏 もともとWebサービスをやっていて、そのノウハウがバリュープログラムで生きています。そういう意味では、コンテンツやメディアのノウハウは、スマホの上でも生きています。
また、固定の方には(家庭内の家電をセキュアに遠隔操作する)L2VPNのサービスがあり、これをMVNOと組み合わせてもいいと思っています。IoTはネットワークにつながったデバイスとサービスの郡ですが、その間をつなぐ存在としてのMVNOというストーリーもあります。例えば、高齢者の家にインターネットがないとき、そこにNifMoのSIMが指すとつながる機器があってもいいのではないでしょうか。ただ、まだ実態はそんなになく、下地を一生懸命作っている段階です。
他のISPに比べるとMVNOとしての印象が薄かったニフティだが、「NifMo」の開始によって、存在感を少しずつ高めている。沢尻エリカさんを起用したCMも、ユーザーにインパクトを与えたはずだ。単純な価格勝負に出ず、アフィリエイトを組み合わせてお得感を打ち出す戦略も面白い。
今後始めるサービスでは、やはり音声定額サービスがどのように受け入れられるのか気になるところだ。現状のMVNOは、MNOの音声定額プランが高すぎると感じる層の受け皿にもなっているが、逆に定額サービスをIP電話で安価に出すことで、これまでとは異なるユーザーを開拓できる可能性もある。6月には詳細を発表できそうとのことなので、今から楽しみにしておきたい。
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