ファーウェイ・ジャパンは5月21日、事業戦略説明会を開催した。説明会では、2月に代表取締役社長に就任した王剣峰(ジェフ・ワン)氏が登壇し、ファーウェイグループの現況と、ファーウェイ・ジャパンの沿革と今後の事業戦略を説明した。
ファーウェイグループの2014年度の業績は、前年度比で売上高が20.6%、純利益が32.7%、営業活動によるキャッシュフローが85.1%、それぞれ増加した。事業別、地域別の業績を見ても、マイナスとなった部分はなく、まさしく順調な成長を遂げているところだ。
ブランド認知度もそれに伴い向上しており、インターブランドが集計した「2014 BEST GLOBAL BRANDS」において、初のトップ100入り(94位)を果たした。
順調な成長とブランド認知度向上の原動力のひとつが、研究開発(R&D)活動に対する積極的な投資と、それによる技術革新(イノベーション)だ。「毎年、売上高の10%以上に相当する金額を研究開発につぎ込んでいる。2014年度は、売上の約14%に相当する約7800億円を投資した」と、ワン社長はその積極性をアピールする。
ファーウェイのR&D活動への積極性は2014年度の国際特許出願数において世界一を達成したことからもうかがえる。また、活動に対する国際的な評価も高まっている。トムソン・ロイターの「Top 100 Global Innovators 2014」と、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の「The Most Innovative Companies 2014」に、それぞれ選出されたことがその例として挙げられた。
ファーウェイグループでは、事業を「通信事業者向けネットワーク」「法人向けICTソリューション」「コンシューマー向け端末」の3つに分類している。通信事業者向けネットワークでは、モバイル(移動体)通信、固定通信、IP(インターネット)通信いずれの分野でも世界のトップ3ベンダーとなった。法人向けICTソリューションでは、金融、エネルギー、交通など、公共性の高い分野を中心に事業を展開している。コンシューマー向け端末事業では、スマホの出荷台数が約7500万台となり、世界第3位に付けた。
これらの事業で、共通しているのは、さまざまな分野でトップとなっている企業や、業界団体と協力して事業を展開していく「共存共栄」の姿勢だ。例えば、研究開発は通信事業者や、ICTソリューションプロバイダーなどと協力して取り組んでおり、規格の標準化団体にも積極的に参加している。
2015年度も、その姿勢を継続し、通信事業者向けネットワークでは業界のリーダーに、法人向けICTソリューションではパートナーとの協業によるエコシステム構築を、コンシューマー向け端末では、研究開発を加速し、革新的な信頼性のより高い製品を作っていくことを目標に据える。
2005年に日本法人として設立されたファーウェイ・ジャパン。この10年間で従業員は20人から721人に増え、4つの事業所と1つの研究開発センターを擁する規模感のある企業となった。
ワン氏は、この10年間の歩みの中で、2011年に日本経済団体連合会(経団連)に加盟したことと、2013年に研究開発センターを横浜に移設したことをマイルストーンとして挙げた。その上で、ファーウェイ・ジャパンは日本の状況に合わせた「現地化」「協業」「革新」を経営戦略として掲げ、2015年度もその動きを加速することを説明した。
現地化では、先述の経団連加盟はもとより、経営の現地化、人材の現地化、を進め、日本の業界団体にも積極的に加入する方針だ。日本でのCSR(企業の社会的貢献)活動も推進する。端末やサービスについても、ドコモの「ドコッチ 01」を始めとして、日本市場に特化した端末を投入する一方、楽天との協業による「honor6 Plus」の販売など、日本でも盛り上がりつつあるSIMロックフリー端末市場にも積極的に注力していく姿勢を示した。
協業では、イー・モバイル(現在のソフトバンクモバイル)のネットワーク構築を手始めに、ソフトバンク系列のWireless City PlanningのAXGP(TDD-LTE)ネットワークの構築、そしてドコモとの第5世代移動体通信(5G)における実証実験への合意など、これまでの成果を挙げつつ、「(ネットワークやICTの)川上から川下まで」(ワン氏)、パートナーと協力して事業展開していく方針を示した。
革新では、2011年に設立され、2013年に横浜に移設した端末の研究開発センターが重要な役割を果たす。グループ全体にある16の研究開発センターのひとつとして、日本の最先端のICT技術と、高品質な製品を求める市場環境を生かした製品開発をすると同時に、日本のメーカーの優れた部材を世界に送り出すための拠点ともなっている。日本の部材を積極的にネットワーク機器や端末に使うことによって、ファーウェイの世界全体における競争力を高める狙いもある。
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