大手キャリアのKDDI(au)とNTTドコモから、なぜか「クマのぬいぐるみ」が相次いで登場しました。
KDDIのau未来研究所は3月29日、“抱きしめるだけで、思いが伝わる”ぬいぐるみ「Comi Kuma」(コミクマ)の開発を表明しました。Comi Kumaには12個のセンサーとBluetoothモジュールが内蔵されており、ぬいぐるみに触ったり、動かしたりするとスタンプが表示され、さらにBluetooth接続したスマートフォンにも送信されます。
例えば、Comi Kumaの頭をなでると「おはよう」や「こんにちは」など時間ごとのあいさつ、ぎゅっと抱きしめると「大好き」、あお向けに寝かせると「おやすみ」、キスをすると「チュッ」など、アクションごとにスタンプが決まっていて、さらにあお向け+足裏を触ると「こちょこちょ」などの合わせ技にも対応しています。
通話はできませんが、本物のぬいぐるみを使ってスマホのようにスタンプを送り合えることを目指して開発したとのことです。コンセプトモデルのため市販は未定。発表に先駆けて行われたトライアルでは、Comi Kumaの利用をきっかけに電話などの直接的なコミュニケーションの機会が増え、祖父母と孫にとって有効なコミュニケーション手段であることが分かったそうです。
一方、ドコモら4社は3月30日、“離れて暮らす家族をつなぐ”という「コミュニケーションパートナー ここくま」を発表しました。こちらはボイスメッセージ機能を備えたぬいぐるみで、足にあるボタンを握って話すと声を録音します。
録音された音声は離れて暮らす家族のスマホに送ることができ、逆にスマホの専用アプリで録音した音声を再生することもできます。ここくまに送ったメッセージを再生したかなどはスマホアプリから確認でき、見守り用途でも役立つとのこと。人が近づくと、天気や季節の話題などを話しかける機能も備えました。LTEモジュールを内蔵し、Wi-Fi環境がなくても通信できるのも特徴です。
ここくまは玩具メーカーのイワヤが製造と販売、ドコモが商品企画を担当。さらに半導体や電子部品を扱うバイテックグローバルエレクトロニクスが開発のマネジメントを行い、台湾のMOOREdoll(ムーアドール)がIoTプラットフォームとボイスメッセージ技術を提供しました。発売は7月で価格は3万4800円(税別)。通信プランの料金などは検討中です。4社は「家族ツナグPROJECT」を立ち上げ、ここくま以外にも離れて暮らす家族のコミュニケーションを楽しくする商品を今後も開発すると表明しています。
どちらもPCやスマホ、タブレットが持つ“ITらしさ”を打ち消しつつ、誰でも手軽にネット経由のコミュニケーションができるよう、「クマのぬいぐるみ」が選ばれたようです。前後して発表されたのはまったくの偶然で、コンセプトが近いものの、機能が似て非なる点はご紹介した通りです。
ちなみに非ITの象徴として「クマのぬいぐるみ」は割と出番が多いようで、過去にはウィルコム(現ソフトバンク)が「くまふぉん」というPHS端末を開発していました。コンセプトモデルとして幾つものバージョンが作られ、イベントなどで度々公開されましたが、結局製品化には至りませんでした。
ただ、手を握って電話をかけたり、抱きしめるように持って通話するなど、ぬいぐるみらしさをフルに生かした使い方は、現在のComi Kumaやここくまに通じるものがあります。となると、ウィルコムを吸収したソフトバンクもなにか出してくるのではないか? などと考えてしまう今日この頃です。
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